1−4)惨状を横目に見て
「はーい!鑑識の方、ちょっと水が垂れるかも知れないですけど、二階三階は目下全力で水抜きをやっています。写真ぐらいはやれるでしょうから、どうぞ入って下さい」
ハンド・スピーカーを手に、顔もろくに洗っていない消防士が引率する。
「火元の特定は?終わったんですか?」
「それは言わずもがなですよ。それよりも火の回り方とか、石油を掛けた流れを一応確認しています。そちらも鑑識作業しますし、そっちを優先するように上からの命令がありました。まぁ足跡を汚して申し訳ないですが、こっちも命がけで…。」
「ハイハイ、わかっていますよ?ガソリンですか?」
「火の飛び方は、ガソリンですね。でもガソリンは気化させないと燃えませんから、多分ガソリンは着火剤程度で、このフィルムですか?これが燃料となった可能性が高いですね。」
すると
「ポンプ排水終了しました、ウェス拭きを始めます!」
「おーい分かった。じゃぁ鑑識さん、我々は、現場を離れます。」
すると「ウェス拭きはやめてくれ!多少水がある状態でも構わない。それと排水した水はフィルタリングしているか?残留物をとりたい。」
鑑識の古参・松本係長が叫んだ。
「すみません。気が回らず」
「良いですよ。人命・消火優先です。」
足元を見ると、黄色の三角ポールがあり、そこに黒い物体がある。
「あれは?被害者ですか?」
「到着時、既に痙攣状態で目視3度の火傷、全身がです。助かりません。火は消しましたが、その時には呼吸も…、一応現状保存も命令されていましたので…。死亡は、ええっと、11:31分で確認しています。名前は不明で一番て書いています。」
「アメリカではJohnDueって呼ばれるんですよ。不明遺体は…。」
一番の焼死体は、鑑識は見慣れないものではある。体は2回り小さくなっている。性別は外見では分からず、太っているか痩せているか?がかろうじて分かる程度である。
「遺体の配置見聞は急いで!焼死は、組織や色々なものが壊れていくのが早いそうだ!」
警察の入れ込みようは凄まじいもので3次元レーザー計測器まで持込mm単位の位置確認まで行っている。
「おーい一番は搬出でOKですか?」
「良いだろう。早く、こんなトコから出してやれ!」
すると、入り口に見えるのは国家公安委員長である山本順三だった。
「作業中失礼する。」
鋭い目つきで、周囲を見つめる。
「公安のお出ましとは…」
「つまり総理大臣が、そうお認めになったって事だ…、我々の意見や意思は関係ない。」
それは諜報任務に関わる可能性、国家の枠を超えた犯罪と認めたからの下命である。
総理大臣は、公安委員長に下命すると同時に国交省、防衛省に入出国の監視を徹底させた。
一応犯人と主張している奴は捕まえた。だが最近妙なのが多すぎる。いきなりの凶行には何かがある?と感じている。
大抵の場合、完全孤立と言う程の事は無く、然程活発ではない程度である。
警視庁と警察庁の合同会議で、ネットでの接続・洗脳があり得ると判断した。
これはアルカイーダやイスラム国の募集と同じであり、警視庁もインターネット部隊を繰り出しているとの事である。
実はこの時点で政府はNTTとAUに特別協力を要請していた。つまり被疑者と接触のあるIPを教えて欲しいというものである。
これは「公安特別規約」と言うもので、これで殆どの行動経過が把握されている。
つまり携帯端末を持つ全ての行動が把握されるのである。
ただ1つ問題がある。
IPの所有者が誰であるか?と通信内容は「逮捕状」が取れて初めて公開される。
「逮捕状か…」山本委員長が顔をしかめながら呟いた。
「毎度の犯罪者への極端な人権保護ですね。」
山本委員長を始めとした公安一行は、現場を出て、臨時祭壇へ向かい焼香し、手を合わせた。
「糞舐めめ!小汚さだけはアルカイーダやイスラム国並だな!」
日本から糞舐め汚すぎる上に卑怯な嘲賤への宣戦布告だった。
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