かすてら饅頭は大牟田が発祥の地です。今も大牟田名産です。もともとは、熱気や湿気の高い、粉塵もある、暗い地底での炭坑作業が欲する清々しい風や空のように、疲れきった体が欲した食べ物でした。
竪坑櫓は地底に行くためのエレベータで、深さは東京タワーの高さ・長さに匹敵します。見上げるものでなく、のぞき込み、のみ込まれるものでした。鉄道桟敷は坑口から地底にも続いていました。世界の貨物船の燃料になった大量の石炭は地底での過酷な炭鉱作業のたまものです。カステラ饅頭の白あんは黒い石炭を忘れさせる色でもありました。
石炭産業が無くなった今、若い人には「高専だご」が人気です。カステラ饅頭は日本伝統の饅頭餡にカステーラがアレンジされたものだったので、多様なスイーツの素になっています。北原白秋が作ったかすてら饅頭の詩「四季の贐」のように、春夏秋冬折々の中でかすてら饅頭を飲み物と一緒にゆったり頂く~しゃれた詩的雰囲気が、今巡り来たのかもしれません。
(下:「グラフふくおか」秋号 2014年9月20日 福岡県情報広報課発行 P21 より)