2024年7月6日 じないまち薬師堂
富田林じないまちの富筋南会所町にある薬師堂 19時から始まる薬師大祭にお詣りされる方々が集まります。薬師大祭は7月6日と7日の2日にわたって行なわれます。ここはじないまちにある融通念仏宗の浄谷寺の境外地になります。
〈一日目の法要〉19:01 そろそろ供養が始まります。
たくさんのお供えと立派な厨子。
お供えはエリンギ、高野豆腐、とうもろこし。
19:15 浄谷寺のご住職によりおつとめが始まりました。
端正なお顔の薬師如来坐像。江戸期の作品で乾漆像(麻布や和紙を漆で張り重ねた像)といわれています。乾漆像は奈良時代に多く作られましたが、平安時代には木造が多くなり、特に江戸期の乾漆像は作例が少ないのではないでしょうか。
19:21 ご住職と副住職(息子さん)のありがたい読経。
19:31 おつとめが終わり、ためになるご住職の法話。
きょうは浄土(極楽・天国)の六鳥のお話をしてくださいました。
浄土の鳥として、「 白鵠(びゃっこう)・孔雀(くじゃく)・鸚鵡(おうむ)・舎利(しゃり)・迦陵頻伽(かりょうびんが)・共(ぐ)命(みょう)の鳥。」やそうです。
白鵠はコウノトリ。舎利は百舌鳥(もず)。迦陵頻伽・共命鳥は聞きなれない鳥ですね。
ご住職のお話によると、
迦陵頻伽は上半身が人で、下半身が鳥の仏教における想像上の生物。とても美しい声で鳴くそうです。
共命鳥は身体が一つで、頭が二つに分かれている鳥。
前世ではこの二つの頭は大変仲が悪かった。事あるごとに意見が衝突していたそうです。毎日毎日、言い争いをしていたのですが、ある日、それが高じてとうとう片方の頭が相手の頭に毒の実を食べさせました。
ところが身体は一つですから、両方ともに命を落としてしまいました。
命を落とす寸前に、その毒の実を食べさせた頭がとても大切なことに気付きました。
「これまで文句を言いながらも何とか元気で来られたのは、あなたがいてくれたからだった。」「この私の命はあなたの命の上に出来上がっていたのだ。」ということに気付いたそうです。
つまりポイントは「『おたがいさん』という心を持つことが大事」というありがたい教えをいただきました。天国でも現世でもこれを忘れてはいけないということです。
このごろすぐ忘れてしまう私なので今年はしっかりメモして、ブログを見ていただいている方にもお知らせします。
それにしても張りのあるきれいなお顔の薬師さん。
若い男女の恋文を漆で塗り固めて造られたと言われているので別名「恋文薬師」。
確かに江戸期は和紙は貴重でしたから、一度手紙や書物、勘定帳などに使用した和紙を再利用して、襖の下張りや籠に糊で貼り付けて柿渋で仕上げたりしていました。
やわらかい、やさしい、女性のような手です
薬師さんですから薬指を曲げています。
むかし薬やお化粧を水にに溶かす際や塗る際にこの指を使ったことから薬指。
大切な薬壷。
薬壺を持っていても薬師さんは薬剤師ではなく「大医王仏」、つまり人々の病気を治し、延命し、さらに精神的な苦痛も取り除いてくれる大切なお医者さんだそうです。
もし江戸期に新型コロナが流行したら、大切な家族が全滅。さらに村が全滅。はやり病や持病がとてもこわい。そこで現世御利益祈願の薬師さんがもてはやされます。
そして、何でも望みをかなえてくれる観音さんと邪気を追い払って難を逃してくれる地蔵さんが今も町のところどころにいたはります。
〈二日目の法要〉7月7日 18:56
お供えが少し替わりました。しめじ、高野豆腐、ズッキーニ。
19:15 今日は七夕。笹の葉がちょろっと見えます。
ご住職曰く、「きょうここに来られたことが大事。」と。
一般的によく知られている「阿弥陀如来」と「薬師如来」について。阿弥陀如来は「西方極楽浄土の教主」つまり西の端にある極楽浄土の仏様で、死後の極楽浄土を約束してくれる仏様、阿弥陀様です。
一方、薬師如来は「東方瑠璃光浄土の教主」つまりはるか東にある仏の世界で現世での病気平癒、安産祈願をかなえてくれる仏様です。
ご住職曰く、「拝(おが)むということが大事。拝むということは自分自身を大事にすること」やそうです。
19:35 ご住職のありがたい法話。きょう来れた方だけではもったいないので皆さんにもお伝えします。
きょうの法話は「五観の偈(げ)」
「観」とは、心の眼でじっくり観ること。
来年の薬師大祭まで気を付ける5つの教え。
(読み方は「曹洞宗 貞昌院」のHPを引用させていただきました。)
今日いただく食べ物がどれだけ多くの人の手によって作られ、運ばれ、料理されてきたことを忘れてはあきまへん。
ご飯を食べることは、その材料の命を奪うこと。他のものの生命に支えられ、犠牲の上に生かされているので、感謝して、いただきましょう。自分のことだけ考えていたらあかん。常に反省を忘れず、その恵みに値するよう自己精進をしましょう。
食事する時自分の欲を満たすだけではあきまへん。心を正しく保ち、あやまった行いを避けるために、欲深くならないことです。
食べ物は薬と同じ。好き嫌いの心を離れてしっかり食べましょう。
自分の命を長らえるだけではダメ。人様の為に毎日を大切に生きていきましょう。
19:50 2日間の法要を終えて、たくさんのおさがりをいただいて、ご住職、副住職に見送られて帰ります。
医学が未発達の昔は、病気にかかるのは悪霊の仕業であって、お祈り以外に治療方法はないと考えられていました。すがる思いでお祈りされたのでしょうね。
新発見、薬師堂裏の明治時代の煉瓦塀。
イギリス積みで頑丈に作られていて、おそらく明治中期から明治後期の防火壁であると思われます。
イギリス積みにするためには煉瓦の小口×3の幅が必要になります。
モルタル(砂(5mm以下)とセメントと水とを練り混ぜて作る建築材料)で積み上げられています。
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〈リバイバル・アーカイブス〉じないまち薬師堂の薬師大祭 2023.7.12
《リバイバル・アーカイブス》じないまち薬師堂 2016.5.19
撮影:2024年7月6日、7日
2023年7月11日 HN:アブラコウモリH
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