はがきのおくりもの

 思い出したくなったら、ここに帰っておいで!!!
 元気を補給したら、顔を上げて、歩いて行くんだよ!

二代目「扉叩き人」

2013年07月13日 | 私家版卯高物語

 平成二十三年十月十四日の放課後、ちょうど吹奏楽部三年生のハガキ表彰式を終えた後であった。文実整備パートの二年生が校長室の扉を叩いた。まっすぐに見つめる眼と穏やかな口調に、じっくりと話を聴こうと決めた。

 文化祭の清掃活動に取り組んだ彼は、授業公開のためにトイレの掃除状況を自主的に点検したは、四階西トイレを除いて清掃が十分でないので、何とかしたいという。この日の朝会で教務主任が全教員へ丁寧な清掃を依頼したばかりであった。さて、困った。

 実はこの五日ほど前に、雑記帳に二学期終業式講話のアイデアを書き留めていた。そのアイデアとは、清掃についての話であった。しかし、説教調になりそうで止めようかと考えていた矢先の「扉叩き人」であった。

 「卯高生は中学時代、真面目に清掃してたよね。今でもやれと強く言われればやるだろう。それでは中学時代と同じ。どうしたらいいだろうか」と、彼に話しかけた。
 「清掃の心を本当には理解していない生徒たちに、客を迎える姿勢やきれいなトイレの気持ちよさを言って聞かせれば頭ではわかるだろうが、果たして清掃の習慣を身につけるだろうか。理解しようとしない人に理解してもらうことはできない。どうすればいいだろうか。難題かな。いや、答えは簡単だよ。理解する気になってもらえばいい。理解する人が一人二人と増え、一定の数まで増えれば、みんな理解したいと思うようになるだろう」と話したところで、彼に聞いた。

 「ところで、君は私に解決してもらうのが望みかい。それって自主自律じゃないね。君はどうする。」厳しい質問だったかもしれない。

 「君が勇気を振り絞って校長室まで来てくれたから、私も行動を起こすことにしよう。終業式には清掃の話をしよう。他にどんな手を打てばよいかも考えよう。」と彼に約束をした。

 守破離の破や離の指導は難しい。自主自律を育てるには熟練を要する。卯高の更なる飛躍を目指し、自主自律や自走を促す教育手法を積み上げる学校文化づくりに着手しなければならない時期であった。このとき、清掃文化の改革にも取りかかろうと決心した。

 当時二年生の彼も吹奏楽部であった。私が知る二人目の音楽家志望であった。彼は現在、ローマにいる。世界へ飛び出していった。


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