今年も先輩たちの大学合格状況はすばらしいものでした。実績を出し続けている卯高生を誇りに思います。しかし、大学合格という実績が上がってくると心配もあります。大学合格ばかりを追い求め、大事なものを見失ってしまわないかという心配です。
4年前に本校に赴任した時、最初に「少なくとも、勉強、部活動、学校行事の三兎を追え」という話をしました。今日は、もう一度原点に返って「少なくとも三兎を追え」の話をします。
なぜ皆さんに「少なくとも、勉強、部活動、学校行事の三兎を追え」と言うか。無理難題を課すか、わかりますか。皆さんの能力を最大限に引き出したいからです。
「火事場の馬鹿力」という言葉がありますね。人間、いざというときには大変な力を発揮します。その「火事場の馬鹿力」を意識的に発揮できる男になってもらいたいと思っています。おそらく皆さんの「火事場の馬鹿力」はとてつもなく大きいものでしょう。世界を変えるくらいの大きな力ではないかと想像しています。
そこで、卯高では「火事場」に近い環境を用意して、皆さんの潜在能力を引き出そうとしています。その一つが「少なくとも三兎追う」学校風土だと思っています。
皆さんの潜在能力を引き出すことが目的ですから、「三兎を追う」にも追い方があります。追い方を間違える人がいますので、少しお話しします。
第一に、自分から追うことです。やらされて追っていると、追うこと自体が目的になり、苦しくなります。やらされではなく、自分で目的を持って、勉強も部活動も学校行事も追うことです。
第二に、楽しんで追うことです。一人で追うよりも仲間と追うほうが楽しいし、つらい時も励まし合えます。ピンチが来たら、「ピンチの後には必ずチャンスが来る」と思って、ピンチを楽しむことです。
第三に、追うという過程自体に意味があると知ることです。皆さんに「三兎を追え」と言いましたが、「三兎を捕らえよ」とは言っていません。捕らえるという結果が大事なわけではないのです。「三兎を追え」は、「限界に挑め」「想定外に挑め」という意味です。捕らえることができたのなら、限界まで行っていないでしょうし、想定内のことでしょう。
自分の限界に近づくと、精神的にも追い詰められてきますが、そこでどうするかが重要です。限界近くになれば、一般的な正解はありません。個人個人、状況状況によって答えは異なります。アドバイスをするとしたら、「完璧をめざすことはやめよ」「越えられない壁の辺りでウロウロせよ」の二つです。どこまでならばできるかを考え、自分にできることから始めることです。できることが見つからないなら、壁を乗り越えるのはやめて、壁の辺りをウロウロすることです。壁に穴が空いていたとか、壁を避ける道が見つかったなど想定外の方法が見つかるかもしれません。あまり真面目すぎるとすぐに限界に突き当たってしまいます。限界の近くでは、ちょっと不真面目くらいの柔軟さが必要です。
「少なくとも三兎を追え」と言われて「はい、必死に頑張ります」ではなく、「言われなくても追います」「楽しんで追います」「捕らえられなくても追えるだけ追います」くらいの自分流の追い方をしてくれるといいなあと思います。
卯高生活の残り1年間、あるいは2年間を大いに楽しみながら、大きく成長していってください。