はがきのおくりもの

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卯の花高校PTA講演会(2)

2015年12月05日 | だいこん県教委 2015
 
 続きです。
 
 

2 なぜ、「少なくとも三兎を追え」か?
 まず、演題の「少なくとも三兎を追え」について、お話ししましょう。
 私は卯高の校長になったとき、「少なくとも三兎を追え」と生徒たちに話しました。なぜ、「少なくとも三兎を追え」というメッセージから始めたのか、その理由をお話しします。
 
 実は、私は最悪のタイミングで卯高の校長になりました。前任の前島校長先生の下で教職員が頑張ってすばらしい成果を上げた直後でした。前任の校長が力量のある校長ですと、後任は大変苦労します。前任の校長が何もやらなかったり、あまり成果を上げていないときは、後任は楽です。少し頑張れば、認めてもらえますから。
 
 卯高の校長になったばかりの私は考えました。さらなる成果を求めることは、教職員が疲弊しますから、今は成果を求めるタイミングではありません。では、何もできないのか。当面、何もしないという戦略もあるのですが、そういう戦略を取るにしても、先の見通しがなければ、ただのサボりです。困りました。
 そこで、「私の強みは何か?」と考えてみることにしたのです。強みといってもなかなか思いつきません。しばらく苦しんで、1つだけ思いつきました。それは、私は前島校長より2年長い5年間卯高の校長をやれる、ということでした。これこそが、私の最大の強みでした。そこで、「あせらず、ゆっくりやろう」と決めました。
 そう決心すると、私の役目が見えてきました。新しいことを始めなくてもいいのです。前島校長の下で教職員が創り上げてきた卯高教育を定着させ、文化としていくことならば、教職員は疲弊することはないでしょう。卯高教育のよさを定着させ、文化としていくことを私の役目としようと決めました。そこで、「いいとこ探し」から始めることにしました。
 
 しかし、卯高のいいところを探せても、それを文化として定着させることは容易ではありません。文化として定着させるためには、教職員や生徒たちが共有できる「言葉」が必要です。またまた難題です。困りました。
 その頃、京都市立堀川高校の実践を記した「堀川の奇跡」という本を読んだばかりでした。その中で、荒瀬克己校長は「二兎を追う者は一兎も得ずと言うが、堀川では二兎を追っている」と言っています。それを読んで、卯高は三兎を追っているじゃないかと思いました。堀川に負けてはいられないという思いがあったのかもしれません。そういう気持ちでいたものですから、始業式と入学式で思わず「少なくとも三兎を追え」と言ってしまったのです。
 「少なくとも三兎を追え」という言葉が、皆が共有する言葉になるとまでは想像していませんでした。しかし、「少なくとも三兎を追え」は、多くの卯高関係者が共有する言葉になっていきました。おそらく教職員が広めてくれたのだと思っています。ここまで広まったことに、驚くとともに感謝の気持ちで一杯です。
 
 この「少なくとも三兎を追え」に関しては、「なぜ、卯高本を出版したか?」についても、お話ししたほうがいいでしょう。
 「堀川の奇跡」のように、その高校のことを書いた本がたくさん出版されていますが、だいこん県ではありませんでした。ですから、だいこん県では卯高のことを書いた本を最初に出さなければならないと思っていました。
 そう思いながら、卯高教育について考えて行くと、少なくとも三兎を追っている卯高生のことを書かなければなりません。ところが、勉強、部活動、学校行事の三兎については、全国どの高校でも追っています。卯高はその1校に過ぎません。追い方が少しだけ凄まじいだけです。
 ところで、近年、公立高校も恥ずかしげもなく大学進学実績を追うようになりました。昔は、表向きでは大学進学は生徒の個人の問題でした。学校は裏では支援するものの、積極的に進学実績を吹聴したりしないものでした。私が教員ときの卯高も、受験勉強は自分でやれという雰囲気でした。補習をやろうとすると、「卯高は授業で勝負をしているのだから、補習はまかりならん。授業の中で生徒ができるようなる授業を行え」と言われました。「ええ~っ、先輩たちはそんな大した授業をしてないよなぁ」と思ったものです。
 そんな時代も今は昔。現在は、大学進学実績ばかりを追う風潮になりました。この大学進学実績ばかりを追う風潮のなかで、大事なものを失ってしまうのではないか。どの高校にも、3年間で生徒たちを大きく成長させる仕掛けがあるのに、それをなくしてしまうのではないか。「三兎を追う」学校も少なくなってしまうのではないか。それではいけない。そんな思いから、卯高の実践を紹介する本を出そうと思い立ったのです。
 その結果、生まれた本がこの「少なくとも三兎を追え」です。卯高生や卯高の先生方にたくさん協力していただきました。
 勉強、部活動、学校行事の三兎を追う中で、生徒たちが大きく成長していく姿を知ってほしいと思いました。
 
 以上で、演題と副題についてのお話を終えました。これで、私の話の根っこの部分は話し終えたわけですので、この先、私の話をどこで終えても大丈夫になりました。一安心です。

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