はがきのおくりもの

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卯の花高校PTA講演会(4)

2015年12月08日 | だいこん県教委 2015
 
 最後です。
 
 
 
4 大人がすべきことは何か?
 
 最後に、「大人がすべきことは何か?」についてお話ししたいと思います。
 私は卯高を退職してもう3年になりますから、卯高教育についても当時の思いということで、割と好きなようにお話ができます。ですから、卯高の元校長はこんな願いを持っていたのか、そうかあという感じで聞いていただけたらと思います。
 
 卯高生には、新しい社会を生み出す人になってほしいと思っています。この願いには、大人の私たちが受け入れがたいものが潜んでいます。
 新しい社会を生み出す人というのは、今の社会とは異なる社会を生み出す人です。「私たち大人を乗り越えていく人」と言えば、受け入れやすいのですが、「私たち大人とは異なる価値観を持つ人」「私たち大人はと違う別の人」と言うと、受け入れづらいのではないでしょうか。
 子供たちはまだまだ未熟です。しかし、彼らに未来を托すしかありません。先を生きる大人として、私たちは次のような心得を持たなければならないと思っています。
 心得「子供には、自分たちと違う人間になってもらいたいと考える」
 心得「子供には、親のコピーでではなく、新しい社会を創るために別の感じ方や考え方の人になってもらいたいと考える」
 
 この心得を持つことは、二重に無理難題です。
 1つは、子供に自分と違う人間になってもらうということは、自分の否定ですから、人間の自己保存の本能からすると無理難題です。もう1つは、そもそも人は自分とは何か、自分が何をしているかを知らない、知ろうとしない生き物であるという点からして無理難題なのです。
 自分が何をしているかを知らないという例をお話ししましょう。
 卯高の伝統行事に古河強歩大会があります。あるとき、何も背負わずに走る生徒がいました。古河に着いたとき、着替えはどうするのでしょうか。親御さんが古河で待っていて、着替えを渡し、車で息子さんを乗せて帰りました。卯高教育における古河強歩の意味を知ろうとせず、息子さんが成長する機会を奪っています。
 走る息子さんに車で伴走し、飲み物を手渡している保護者もいました。
 どちらの卯高生も自立していません。親の行為を拒絶することができないでいます。その卯高生たちは、親と同じ人間になるでしょう。いや、親にまで辿り着けないかもしれません。
 この親御さんたちは、自分たちが何をしているかを知りません。よかれと思ってしていることが、息子さんの成長を妨げています。
 このように、人間という生き物は自分が何をしているかについてあまり自覚がないのです。
 
 自分が何をしているかについて、もう少しだけ考えてみることにしましょう。自分とは違った人間になっていく子供たちを想像することにしましょう。
 私たち大人は、願っても自分にはできないことややるべきではないことがあり、それらを子供たちはできる可能性を持っていると、自覚することにしましょう。
 
 大人が子供たちの可能性を押し殺して、新しい社会を生み出すことを妨げてはいけません。彼らもまた大人になり、親になり、乗り越えられる人になります。せめて、そうした彼らのお手本になろうとする気概を持ちたいものです。
 
 卯高にとって過去の人が卯高教育を語っても、現在の卯高とずれていると思います。今日のお話は、現在の卯高とずれていたり、私だけの解釈であったりするかもしれません。
 そうではあっても、私の話から皆さんが一つでも「問い」をお持ち帰りになっていただけたら、何かのお役に立つのではないかと思っています。
 
 最後に、現在、私は現職の教育長ですので、PTAの主催であっても講演料をいただくわけにはいきません。講演料については、卯高ラグビー部で怪我をされた方への支援基金のほうへ回していただけないかとお願いしました。皆様のご理解をお願いいたします。
 
 拙い話でしたが、ご清聴ありがとうございました。

1 コメント

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ビジネスも同じです。 (拙宅の愚息もお世話になりました。)
2015-12-10 23:00:52
愚息がお世話になった縁でこちらのブログに辿り着きました。
正に多くの日本企業が、過去の成功モデルから脱却出来ずに国際競争に敗北したこと、社内からの新技術や新商品を自社既存技術や商品のカニバリズムを恐れて上市を遅らせ、他社に先行を許した事例等々を思いながら拝読致しました。
愚息も小生の知識や世界を超えた世界で生きようと、必死にもがいておりますが、望むところでございます。
あの日、妻が「理不尽な高校だって…」と入学の説明を受けて帰宅して、夫婦でそれを期待していたと確認しあったのを、懐かしく思い出しました。
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