組織に内在する様々な「知」を集合・整理し、それらを有機的に繋ぎ合わせたり攪拌させることで「組織の知性」を高め、「組織の感性」を豊かにする「コーポレートコンシェルジェ」の機能は、これからの知識社会には不可欠です。
「バウンダリースパナー」もコーポレート・コンシェルジェといえます。
「バウンダリースパナー」とは、ネットワークにおいて異なるクラスター間を有機的に結びつける「境界連結者」です。
「コミュニケーション・コンシェルジュ」として、組織知のノード的役割と共に組織内「サイロ」の壁を上手く突き崩してゆく組織知のブレンダー兼コミュニケーション・ファシリテーターです。
組織におけるコミュニティ(部門、グループやチーム)には、ある種の閉鎖性があります。
つまり、人間は、仲間意識を共有している集団の中に、異分子たる他者が入る事を無意識的に「拒絶」する意識が働く傾向があります。「村意識」とも言える感覚です。
組織の中でこのような「クラスター」化したコミュニティが並存している状態を「サイロ化」とか「蛸壺化」と言われ、組織活性化の阻害要因となります。
クラスター化した組織を、風通しの良いコミュニケーション組織に変革してゆくには、コーポレート・コンシェルジュをいかに機能させてゆくかが重要です。
私は、コーポレートコミュニケーション部門や社内広報部門などの組織が、コンシェルジュ機能を担うのが良いと思いますが、こうした機能を担う組織が無い場合は、総務FM部門がイニシアチブをとって推進してゆくべきと考えています。
大規模組織では、情報システムネットワークを活用した「知識情報コンシェルジュ」の仕掛を情報プラットフォームの中に構築してゆく事も重要です。
さて、コーポレート・コンシェルジュといってもオールマイティとはいきません。 役割機能に則した考え方をお伝えしてゆきましょう。
■コーポレート・コンシェルジュの役割
5つのタイプに分類してみました。
1.ウェルネス・コンシェルジュ
「健康経営」の重要性が見直されている時代に於いて、社員の健康意識を高めてWell being を促進させてゆく役割です。
具体的な施策として、定期的に「社員健康白書」をまとめ、社員の健康意識を高めたり(内容は別の機会に紹介します) 、社員食堂のメニューを、シェフ並びに保健師や管理栄養士と連携して、バランスのとれた食を提供してゆく等が考えられます。
また、社員の心のケアやメンタルサポートを行う役割も重要です。人の心に関わるセンシティブな仕事は、専門的知識や経験を有する「ウェルネス・コンシェルジュ」を置く事に意味があると思います。
2.コミュニケーション・コンシェルジュ
経営陣やエグゼクティブ層は、生産性向上に向けた「コミュニケーションの活性化」を望んでいます。
然し乍ら、社内で生産性向上に繋がる社員間の「コミュニケーション活性化」は簡単ではありません。
皆さんも日常を思い起こしてみてください。
例えば、今まで話をした事もない他部門の社員に対して話しかける事は勇気のいる事ではありませんか?
たとえ顔見知りであっても、よほどの話題や用事が無ければスルーするのが普通ですよね。社員は「友達」ではありませんから、仕事に関するコミュニケーションを自然で誘発させてゆくには、社員同士が「同僚」意識を持てる雰囲気を醸成させて、仲間感覚を感じられるようにする周到な準備と仕掛けが必要です。
こうしたコミュニケーション誘発の施策を考え、演出してゆく機能がコミュニケーション・コンシェルジュの役割です。
3.ナレッジアセット・コンシェルジュ
ナレッジアセット・コンシェルジュ業務は「情報資産管理業務」とも言えます。
組織に内在する様々な「知識情報」をライブラリー化し、社員が必要とする情報やデータ、更には成果や実績等のナレッジコンテンツを、全社横断的に構築・運用するのが「ナレッジアセット・コンシェルジュ」の役目です。
どの組織でも「文書管理規程」があり、文書管理業務は総務部門の専管事項の1つです。
単なる紙文書管理ではなく、デジタル情報資産を含めた「ナレッジ・ドキュメンツマネジメント」を高度化させて、必要な情報を素早く検索出来る環境を作る事で生産性を上げることができます。
4.ワークスタイル・コンシェルジュ
ナレッジワーカーやアーティストの創造力を描き立たせ、彼らのクリエイティブワークを総合的にサポートしてゆく事が「ワークスタイル・コンシェルジュ」の役目です。
人間科学の分野、特に心理学の知見を深め、働く人たちの気持ちや心の動きなどを考慮したを「ワークスタイルデザイナー」機能も兼ね備えておくことが必要です。
一般的には、人事総務部門の仕事です。
5.ブランディング・コンシェルジュ
社員一人ひとりを元気にし、組織力を向上させる「インナーブランディング」施策を企画実行するのが「ブランディング・コンシェルジュ」の役目です。
(尚、ここでは、アウターブランディングは含まずに考察してみます)
社員同士の仲間意識を高めたり、社員のエンゲージメントレベルを強くしてゆく諸施策、例えば、ファミリーデーやスポーツイベントの開催や、社内でのワクワクイベントの開催(単なる懇親会を超えた企画!)を推進する事により、社員間の同士意識が醸成され、組織へのエンゲージメントも高まります。
この仕事は、コーポレートコミュニケーション部門や広報部門がイニシアチブを取るのが良いと思いますが、そうした機能を持たない組織の場合は、総務人事FM部門が担うべきと思います。
コーポレート・コンシェルジュとは、コミュニティマネジャーとインナーブランディング・プロデューサーを統合させた機能と役割です。
この職務を担える人材をどのように養成してゆくかも重要な課題ですが、養成手法については別の機会にお話しします。
-続く-