Well Beingやウェルネス、そしてヘルスケア...「健康経営」に繋がる言葉が並びます。
私は、人間が心身の健康を保ち、価値創造活動に勤しむ状態を、経営者(雇用者)視点からみた「健康経営」のニュアンスと、社員(被雇用者)が健康的に働ける環境構築に主眼を置いた「健康経営」のニュアンスには違いがあると思っています。
「健康経営」が話題になる社会的背景には、組織社会で働く人たちの「幸福度」レベルが適正水準に達していない現実があります。
企業経営とは、社員一人ひとりの能力や潜在力を最大化させて、それぞれの企業が担う社会的ミッションを果たしてゆく事が、全ての企業に共通した課題です。
そして「健康経営」とは、企業活力の担い手たる社員の「健康度」と「幸福度」を高め、価値創造に向けた意欲や やる気を自立的に発揮してゆける「仕事環境」を経営側が提供してゆく事です。
では、どのように「仕事環境」を整えてゆけば良いのでしょうか。
多くの組織は、「人事部門」が「健康経営」支援を所管されていると思われますが、私は、人事部門と連携しながら、「場」のプロデュースを担う総務FMプロフェッショナルもこの課題に対するソリューションを提供できると考えています。
以下、総務FM視点で考察してみます。
健康で働ける「社員力」の原動力は、ワクワク感を感じられる「喜働」や「幸楽働」にあります。「働き甲斐」や「働く喜び」を感じながら楽しく働く事です。
倫理の教えである「明朗・愛和・喜働」は、人が組織社会で前向きに生きてゆく為の精神基盤の一つです。
自己に厳しく、倫理感を持ち、前向きに明るく生きる覚悟と他者への思いやりを忘れずに楽しんで働く!
そうすれば、自ずと健全な心身を育み、また人間力が高まることで、組織における個の総体力と価値創造性が高まります。
組織社会において「仕事」は厳格であり、誰しもが時として辛く苦しい経験をしていると思います。
「働く」のという事は、本来、社員一人ひとりが"遣り甲斐"を感じ、"楽しい気持ち"、"喜び"や"満足感"がなければ、仕事は「苦役」となってしまいます。
苦役からは創造的な発想はでてきませんし健康へ悪影響を及ぼします。
最悪の場合は、プレゼンティーズムを引き起こし生産性は低下します。
経営者はこれをコストと捉える傾向があります。
社員にとって、「働く事」が苦役ではなくワクワク感を感じ、楽しく喜びを感じられる「喜働」そして「幸福働」となれば、一人ひとりの潜在能力たる「個力」が高まるとともに健全な心身を保つ事ができて、結果、組織のイノベーション力が劇的に向上します。
私は、組織に於いて社員力を高める秘訣には二つのポイントがあると思います。
まず第一に、社員一人ひとりの潜在力を顕現化させる「場」のパワーを再認識する事です。
社員が自発的に、且つ喜んで働ける「場」、働く喜びが自分自身の感動を呼び起こす「場」、その感動が幸福感をもたらす「場」の力が、社員の健康を維持・改善し潜在力を引き出します。
二つ目のポイントは、同じ組織で働く全ての人達が、相互信頼と尊敬の念を忘れず「同志」意識を感じられる「風土」を創りだす事です。
私達は、人生の多くの時間を「仕事」や「働く事」に費やし生活しています。
生活場として過ごす仕事場においても、社員一人ひとりが喜びや幸福感を感じられ、豊かな時間・空間を楽しめる「場」を創りだす事が、組織の価値創造活動を支えてゆきます。
物理「場」としてのオフィス空間に加え、社員の想いを汲んだ人間「場」としてのオフィスは「ワクワクオフィス」と名付けたいと思います。
「ワクワクオフィス」は、社員の働く意識を変え、心身を元気にし、そして、個性を引きだすチャンスを醸成し、常識にとらわれない発想を生みだすパワーを持っています。
私は、「健康経営」とは、社員にエキササイズをさせたり、健康知識を植え付け健康意識を自覚させる事も大切ですが、経営の意識を「場」に向けてもらう事で、「ワクワクオフィス」をプロデュースしてゆくことこそ重要な視点!と確信しています。
こうした確信意識の背景には、経済産業省の「健康寿命延伸産業創出推進事業 」の一環として、
「健康経営に貢献するオフィス環境の調査」からも読み取れる根拠があります。
社員が、快適で居心地の良い働く場に身を置き、やり甲斐のある仕事に幸福感を持って働くことができる「ユーフォリア場」を構築する事が「健康経営」の本質ではないでしようか。
決して「プレゼンティーズム」や「アブセンティズム」のコストを削減し、企業利益を追求する事が「健康経営」ではありません。
「人間に寄った心の経営」が「幸福組織」を創り出し、ワクワク幸福働を実感した社員達が、楽しんで潜在能力を発揮できるようになれば、企業価値は自ずと高まってゆくものです。