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バロックリュートでバッハ

バロックリュート、ギター合奏、旅行などの趣味の記録

「(続)音と演奏の良いCD」 チェロ協奏曲編(1)

2025年04月18日 | CD

ハイドン チェロ協奏曲第1番、第2番

キャメロン・クロズマン(チェロ) ニコラス・エリス(指揮) レ・ヴィオロン・ドゥ・ロワ (1CD)

録音 2023年6月   ステレオ・デジタル録音
録音場所 カナダ、ケベック州、パレ・モンカルム

 上記の曲は通奏低音の無い編成が主流だが、このCDではアーチリュートの音が良く聴こえリュートを弾くものとしてはついつい手が伸びてしまう。ハイドンの活躍した時期に管弦楽の通奏低音が次第に無くなっていったようだ。
 録音時期が最新ということで音はクリアで隅々まで良く聴こえる。15人程度で小編成の室内楽団のハーモニーに独奏チェロの音が溶け込んで自然なバランスを保っている。
 レ・ヴィオロン・ドゥ・ロワという初めて聞く名前の楽団は多くのCDを出しており更に聴いてみたい気になった。キャメロン・クロズマンの独奏チェロも歯切れのよい演奏で魅力的だ。


もう一枚のCD

ハイドン チェロ協奏曲第1番、第2番
ナタリー・クライン(チェロ) ミヒャエル・ホフシュテッター(指揮) グラーツ大管弦楽団 (1CD)

録音 2017年11月   ステレオ録音
録音場所 ライヴシュテファニーザール、グラーツ、オーストリア

 こちらは通奏低音の無い編成でクロズマンのCDとは相当異なるテーストを持っている。
 ナタリー・クラインのチェロは、ガット弦を張った1777年製のグァダニーニだそうだが良い感じと音だ。
 モダンオーケストラの録音でよくあるパターンの独奏楽器を近接マイクで拾い音量も大きめの録音。


「(続)音と演奏の良いCD」 ピアノ協奏曲編(6)

2025年02月15日 | CD
ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集


ハオチェン・チャン(ピアノ) ナタリー・シュトゥッツマン(指揮) フィラデルフィア管弦楽団 (3SACD)

録音 2021年10月   ステレオ・セッション録音
録音場所 フィラデルフィア ベライゾンホール

 初めて聴くハオチェン・チャンは中国、1990年生まれのピアニスト。
ナタリー・シュトゥッツマンはフランス出身の女性指揮者でコントラルト歌手でもあるようだ。
フィラデルフィア管弦楽団は若い頃京都で聴いたが美しい音だった記憶があり懐かしい。
 昔はアメリカのソリスト、オーケストラそして録音でクラシックが聴けるか、という時代だった。
しかしながら現在のグローバル化と技術の進歩により、そのようなことは殆ど無くなったようだ。
 このCDを聴くと、優れた指揮者の要求にオーケストラが十分に答え、その上をピアノが躍るという生き生きとした演奏が展開される。
録音も優秀で音が整っていて大音量の部分でも破綻することはなく豊かな響きだ。


もう1枚魅力に溢れるアルバムが有った。
ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集

アレクサンダー・ロンクヴィヒ(ピアノ・指揮) ミュンヘン室内管弦楽団 (3CD)

録音 2022年1月   ステレオ・デジタル録音
録音場所 ドイツ、ランツフート、Rathausprunksaal(歴史的市庁舎のホール)

 これも初めて聴くドイツ、1960年生まれのピアニスト。ここでは弾き振りを行っている。
 このアルバムでは小編成の室内管弦楽団と弾き振りによる演奏で作曲当時の雰囲気を味わえる。
 専門の指揮者がいる演奏に比べるとオーケストラの自主性に任せる部分が多くなるのだろうがミュンヘン室内管弦楽団は素晴らしい伴奏でロンクヴィヒも楽しんで弾いている様子が伺える。
 録音もピアノは古典的で美しくオーケストラはクリアで各楽器の音が良く聴こえる。
これはハオチェン・チャン版に劣らずついつい手が伸びてしまうCDになっている。








「(続)音と演奏の良いCD」 交響曲編(5)

2024年12月28日 | CD


マーラー交響曲

佐渡 裕(指揮) トーンキュンストラー管弦楽団 
録音 2019~2024年   ステレオ・ライブ録音
録音場所 ウィーン、ムジークフェラインザール、第5番のみハンブルク、エルプフィルハーモニー

現在までに発売されているCD
 交響曲第1番 巨人 録音2023年、交響曲第2番 復活 録音2019年
 交響曲第3番 録音2021年、交響曲第4番 録音2022年
 交響曲第5番 録音2019年、交響曲第6番 悲劇的 録音2024年
 交響曲第7番 夜の歌 録音2023年、交響曲第8番 録音2023年
 
全般的に音が良いのは特筆ものだ。その要素としては色々考えられる。
 第1は、録音場所でムジークフェラインザールでライブ録音されている。シューボックス型のこのホールは最新の技術で音響設計されたホールと比べると色々と指摘される点もあるが、録音する場合は適度に音がこなれて聴きやすい音になると感じる。それはここを本拠とするウィーンフィルの録音を聴いてみても分かる。トーンキュンストラー管弦楽団はこのホールで定期的にコンサートを開催している。
 第2は、録音スタッフの技術と録音機器の進歩。
レーベルはあまり耳にしないAVEX CLASSICS。社長の中島氏は、ワーナーミュージック・ジャパンのクラシック担当を経て、クラシック部門を設立したエイベックスに移籍してクラシック分野で功績をあげている。佐渡裕氏とも色々な仕事をしており、このCDもその一部となろう。注目のレーベルだ。

演奏については
 トーンキュンストラー管弦楽団は日本では知名度が低いものの100年以上の歴史あるオーケストラ。聴くのは初めてだがさすがウィーンに根付いた地の利でウィーンフィルと共通する優美な音色と迫力も併せ持った素晴らしい楽団と感じた。
 2015年から佐渡裕氏が音楽監督を務めているのだが着実に実績を重ねているようだ。このCDでもオーケストラの能力を十分に引き出して細部にわたって魅力的な音とハーモニーが聴ける。2025年にはこの組合せで来日するようだが日程の都合で行けないのは残念。

マーラーは少し曲が長いので今まで敬遠していたが初めて聴く気がする演奏に出会うことが出来た。



「(続)音と演奏の良いCD」 交響曲編(4)

2024年07月19日 | CD


シベリウス交響曲全集

クラウス・マケラ(指揮) オスロ・フィルハーモニー管弦楽団 (4CD)
録音 2021年   ステレオ(デジタル)

シベリウスの交響曲全集には名演奏、優秀録音が多い。
以前、取り上げた「パーヴォ・ヤルヴィ パリ管弦楽団 録音2012年~2016年」、そして「Okko Kamu ラハティ交響楽団 録音2014」、「ロウヴァリ エーテボリ交響楽団 録音2019」等だが、素晴らしいクラウス・マケラの新録音が出てきた。

 クラウス・マケラはフィンランド生まれ現在28歳の天才指揮者。経歴は華やかで、2020年にオスロ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、2021年にパリ管弦楽団の音楽監督に就任。また、2027年にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者に就任予定。

 さすがに自国の指揮者とノルウェイのオーケストラの演奏らしくシベリウスの爽やかな風を感じる音。
マケラの指揮は最近の新鋭指揮者のような新しい解釈が新鮮だ。昔は聴こえてなかったような音が随所で聴こえてくるので興味深い。しかしながら全体的な完成度が高くこれからどこまで行くのだろう、と期待される。今、生演奏を聴いてみたい指揮者の筆頭に躍り出てきた。
 録音も新しく優秀で周波数特性も自然でダイナミックレンジも広く迫力もある。現在のNO.1 CDではないだろうか。

「(続)音と演奏の良いCD」 ピアノ協奏曲編(5)

2024年01月31日 | CD


ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番

反田恭平(ピアノ) アンドレア・バッティストーニ指揮 RAI国立交響楽団
録音:2016年  セッション録音(トリノ) 1SACD

 反田恭平という名前を知ったのは彼が2021年のショパン・コンクールで第2位になったニュース。
その時のライブ録音は音が悪く、ディスコグラフィを探していたらラフマニノフの2番が見つかった。
 これを聴いて驚いた。今までこの曲を色々聴いてみたが良い録音は見つかっていなかった。
本CDは素晴らしいピアノソロとオーケストラ、そしてその演奏を優れた録音がとらえている。
ピアノは明確で爽やかな音、オーケストラは豊かな重低音に支えられ重厚で聴きやすい。
早くショパンの協奏曲を録音してほしいものだ。

「(続)音と演奏の良いCD」 ヴァイオリン協奏曲編(8)

2023年12月16日 | CD


ブラームス ヴァイオリン協奏曲

エマニュエル・チェクナヴォリアン(ヴァイオリン) クリスティアン・マチェラル(指揮) ケルンWDR交響楽団
録音:2020年   1CD

 チェクナヴォリアンはウィーン生まれでアルメニアで育つ。指揮、作曲も行う新進のヴァイオリニスト。
使用楽器はストラディバリウス。

 この録音を聴いてまず感じたのが、ヴァイオリンの音が信じられないほど美しいことと、オーケストラの音の分解能が高いこと。ヴァイオリンが鮮明な音でしかも聴きやすい。オーケストラは総奏でも音が団子にならずに各楽器が明確に聴こえる。ブラームスの協奏曲の録音でこのような音はほとんど聴いたことがない。

 演奏も素晴らしくソロは重厚なオーケストラのサポートを受けて堂々としたブラームスを聴かせてくれる。指揮者のマチェラルも新進の精鋭だがチェクナヴォリアンとともに今後が大いに期待できる。

 ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、Batiashvili (ティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン)の録音がベストと紹介していたが録音が2013年とさすがに音がかすんで聴こえてしまう。近年の録音技術の進歩は凄いと感じる1枚だ。

クラシック以外のBEST10

2023年10月10日 | CD


思い出に残る曲、感動させられた曲を選んでみた。(順不同)

*恋人たちのペイヴメント Alfee
 アルフィーはコンサートにも行ったことがある程好きなグループ。その中でもNo.1の曲。高見沢のハイトーンは美しく感動的。

*Suddenly オリビア・ニュートン・ジョン
 映画ザナドゥの中で歌われるデュエット曲。不思議な雰囲気のミュージカルラブストーリーだが今は無くなったレーザーディスクで見ていた。

*Belle(美女と野獣から) ブロードウェイミュージカル
 ブロードウェイで初めて見たミュージカルで、当時留学中の娘とNYCで落ち合って3人で見た。記憶に残っているのはヒロインの美しく伸びやかなソプラノ、想像以上にコンパクトな劇場内部。その後見たミュージカルは、同時多発テロ直後にまだ異臭の残るマンハッタンで再開されたばかりのマンマミーアでいろんな意味で感動的だった。

*負けないで ZARD
 聴いているとやはり頑張ろうという気にさせてくれる。謎に包まれたところの多かった歌手だがもう少し長く生きて欲しかった。。。

*津軽海峡冬景色 石川さゆり
 コンサートでは舞台装置も迫力があって、圧倒的な歌唱を盛り上げていた。去年、青森港で旧青函連絡船を見学し青函トンネルのない時代に乗船した昔を思い出した。津軽海峡冬景色の歌碑前で写真を撮ったのもいい思い出。

*神田川 かぐや姫
 自分の学生時代を思い出すような曲。下宿していたのは銀閣寺近くの京都北白川だったが昭和の雰囲気は同じ。学生運動の最盛期で京大の時計塔も占拠され卒業式も無し。構内を歩いていたら火炎瓶が飛んできたり、今では考えられない時代だった。

*贈る言葉 海援隊
 デビューして間もないころ神石高原の牧場でたまたま聴いた。舞台も無くて五十人位が聴いていたが牛達も聴き入っていた?

*シクラメンのかほり 布施明
 歌唱力、声量は誰もが認めるところだろう。中でも最高のヒット曲。

*青い瞳のエリス 安全地帯
 「ワインレッドの心」も良いけど一曲を選ぶとするとこの曲。
 
*五番街のマリー 高橋真梨子
 コンサートを聴きに行ったが、大きな舞台装置やバックバンド、踊りがあるわけではなく声だけで聴かせられる実力。



「(続)音と演奏の良いCD」 ヴァイオリン協奏曲編(7)

2023年08月10日 | CD


ドヴォルザーク ヴァイオリン協奏曲

ヒラリー・ハーン オロスコ・エストラーダ(指揮) フランクフルト放送交響楽団
録音:2021年4月 フランクフルト、ヘッセン放送ゼンデザール セッション録音、1CD

 ヒラリー・ハーンは今まで良い録音に巡り会えてない印象がありヴァイオリンの音がきつく聴こえることが多かった。強めのタッチの力強い弾き方や使用している楽器が関係しているのかもしれないが、今回の録音はドイツグラモフォンらしいいぶし銀のおちついた音だ。
(話が逸れるが、「強めのタッチの力強い弾き方」と思われる神尾真由子の録音もきつく聴こえることが多かったが最新録音のバッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ、パルティータでは素晴らしい音だ。最新録音技術の勝利だろう。コンサートでチャイコフスキーの協奏曲を聴いた時の音が聴けた。)
 新進のエストラーダ率いるフランクフルト放送交響楽団の響きも好感が持てる音で聴くことができる。

 この曲では、ムターとベルリンフィルの録音もボヘミア風テーマの表現など感動的な演奏だが録音が少し古くなってしまった。


「(続)音と演奏の良いCD」 管弦楽曲(1)

2023年02月23日 | CD

J.S.バッハ ブランデンブルグ協奏曲

ベルリン古楽アカデミー
録音:2021年3月、5月  ベルリン、イエス・キリスト教会 セッション録音、2CD

 今までは、「フライブルク・バロック・オーケストラ」版と「鈴木雅明 BCJ 2008」版を双璧としていた。
最近更に素晴らしい録音、演奏を聴かせてくれるCDが出現した。

 この録音にはヴァイオリンにイザベル・ファウストが参加している。この組合せではJ.S.バッハのヴァイオリン協奏曲集も出していて気心の知れた仲だろう。ファウストが入ったことでの相乗効果は大きなものだ。ファウストはメイン楽器であるストラディバリウス(スリーピング・ビューティ)ではなくヤコブス・シュタイナーを使用している。ベートーベンの協奏曲などは前者で弾いていて使い分けているようだ。

 録音は有名なベルリンのイエス・キリスト教会で行われているが、ここはカラヤン、ベルリンフィルの録音他、数多くの著名なオケ、演奏家が演奏している。教会は一般的に残響時間が長いのでオーケストラ録音では解像度が落ちたりする場合がある。しかしながら、今回の小編成の録音では素晴らしい解像度と聴きやすい音を捉えている。バッハのヴァイオリン協奏曲集はスタジオ録音だがそれを上回る出来栄えになっている。

 第1番と2番は管楽器が活躍するが私は好みの第3番から聴き始める。時折聴かせるファウストのソロの素晴らしさに加えて中低音弦楽器の絶妙な絡みを最新技術で録音している。周波数帯域の広い録音が爽やかな音場を形成して聴く者を引き付けて離さない。

「(続)音と演奏の良いCD」 交響曲編(3)

2022年05月28日 | CD


ブラームス交響曲

ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮) ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
 録音 第1番~第2番 2019年 ライプツィヒ、ゲヴァントハウス  デジタル/ライヴ
 録音 第3番~第4番 2021年 ライプツィヒ、ゲヴァントハウス  デジタル/セッション

 ブロムシュテット版のブラームス第2番を聴いていたら戸棚のガラス戸がビリビリ鳴った。スーパーウーファーの出す低音に共振したのだ。JBL4343のウーファーは38㎝なのだがそれでも60Hz以下は十分ではない。それを補完するためにスーパーウーファーを付けている。そのレベルはガラス戸等が共振しないレベルにセットしてあるがこのCDは珍しい。

 そこで簡易的なスペクトルアナライザで調べてみた。添付の画面がそれで上がこのブロムシュテット版で下がシャイー(ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団)版。これらは第2番のトゥッティ部の代表的なパターンで、前者では低音(45~65Hz)辺りが強調されており、これはコントラバスの低域に当たる。後者では低音(65~95Hz)辺りが強調されており、これはチェロの低域に当たる。

 データではたったこれだけの違いだが聴覚的には大きな差になって聴こえるのが不思議だ。前者で試しにスーパーウーファーをOFFにしてみた。そうすると低音が弱くなるだけでなく音楽のスケール感が貧弱になり生き生き感も無くなる。例えればステレオをモノラルに切り替えた時の感覚に似ている。
 後者ではその落差が小さい。これはスーパーウーファーで補完する周波数が弱めにしか入ってないからだ。元々低音再生能力の低いシステムで聴く場合は前者と後者の差は分かりにくいだろうし、スーパーウーファーを追加する場合の効果も限定的かもしれない。(やってみないと分からない)

 もう一つの話題として録音する場所の影響について。両者ともライプツィヒ・ゲヴァントハウスで録音されている。後者は中、高音側にエネルギーがある録音で少しヴァイオリンパート等にキンキンした音の部分もある。前者は低域重視の録音で非常に聴きやすい。同じホールで同じオーケストラの録音だが録音によって全く違うものになるということだ。ライプツィヒ・ゲヴァントハウスは音の良いホールとして有名だがそれはそのホールで直接聴いた時の話で録音は全く別物ということも分かる。

 現在の録音・マスタリング技術からすると現地で聴く以上の解像度でCDを製作できる。ここ数年の最新録音ではこの点を追求する傾向もある様だ。マスタリング段階でソロ楽器やフィーチャーした楽器のレベルを上げるとか、ホールではほとんど聴こえないコントラバスの音を強調したりしてあるものもある。
 技術発達すればするほど家で興味深く聴くことが出来るが実際にコンサートホールで聴く状況を部屋で再現することは不可能だ。例は悪いが、バーチャルツアーで現地に行った気になれるか? TVで野球観戦して球場に行った雰囲気を味わえるのか?というのに似ていると思う。現地と家での視聴の違いは割り切って考えておく必要がありそうだ。

 余談ばかりで恐縮だが、「ブロムシュテットとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のブラームス交響曲は素晴らしい演奏を素晴らしい録音が支えた最高のCDだ。」
楽曲の詳しい解説や感想は、michaelさんのブログにお譲りしたいと思います。

「(続)音と演奏の良いCD」 交響曲編(2)

2022年05月06日 | CD

チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」

テオドール・クルレンツィス(指揮) ムジカエテルナ (1CD)
録音 2015年 場所:ベルリン、フンクハウス デジタル/セッション

 チャイコフスキーの交響曲は、第5番が好きで一番よく聴く。コンサートでもヴァイオリン協奏曲とともに何回も聴いたものだ。
 しかし悲愴は家ではあまり聴いていない。それは優れた録音に出会わなかったから。冒頭のファゴットのpp音はコンサートホールでは難なく聴きとれるが、S/Nの劣るLPやテープの時代はスクラッチノイズやヒスノイズに埋もれて良く聴こえない。CDの時代になって格段にS/Nが改善されたがまだ十分と言えない時期が続いていた。このクルレンツィスの録音はまさにコンサート会場以上の解像度でファゴットのテーマを聴かせてくれる。これを聴いて期待をもって最後まで聴こうと思ったわけだ。期待に違わず、悲愴で初めて聴く高S/N比、広いダイナミックレンジの録音に引きこまれてしまった。

 私がクルレンツィスの名前を知ったのはつい最近だが現在最も期待している指揮者だ。彼はギリシャ生まれで、ムジカエテルナを創設し、SWR交響楽団の首席指揮者でもある。

 彼のCDを最初に聴いたのはモーツァルトのフィガロの結婚。序曲を聴くと今まで聴いたことがない自由な表現とダイナミックな演奏に魅了された。
 ウィーン歌劇場で同曲を聴いた時(クルレンツィスの指揮ではない)の演奏には伝統を重んじる正当性を感じたものだが、どちらが良いとか比較することは意味がないだろう。開演直前のオーケストピットで何百回も弾いたであろう曲を一人練習する当時のコンサートマスターのキュッヒルさんの姿は目に焼き付いているが、あの真摯な取り組みがウィーンの伝統を守っているのだろう。
 最近は、クルレンツィスに限らず伝統にとらわれない自由な表現を行う演奏が注目を集めている面がある。単純にこれが良いとは思わないが興味ある事象ではある。


「(続)音と演奏の良いCD」 ピアノ協奏曲編(4)

2021年10月11日 | CD

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番

*ベアトリーチェ・ラナ(ピアノ) パッパーノ&聖チェチーリア国立音楽院管(1CD)
  録音 2015年7月 ローマ、オーディトリウム・パルコ・デッラ・ムジカ(デジタル/セッション)

 この曲は数多くのCDが発売されていて名演も多い。しかしながら、名録音というのは非常に少ない。ラナはイタリア生まれの若いピアニストでこの録音は22歳の時のもの。溌剌とした演奏は非常に魅力的だ。聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団は、ローマを本拠地とする歴史あるオーケストラで長く音楽監督を務めるパッパーノの指揮の下、生き生きとした雰囲気を醸し出している。
 録音は分離の良い鮮明な音でこの名曲をひき立てている。多分、録音場所のオーディトリウム・パルコ・デッラ・ムジカの音響特性が優れているのも大きいのだろう。ホールの写真を見ただけでそれは想像できる。


「(続)音と演奏の良いCD」 ヴァイオリン協奏曲編(5)

2019年12月26日 | CD


バッハ ヴァイオリン協奏曲

イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)、ベルリン古楽アカデミー
2017、2018年録音、セッション録音、2CD

収録曲は以下の協奏曲以外にも興味ある曲がある。
● ヴァイオリン協奏曲ニ短調 BWV.1052R
● ヴァイオリン協奏曲ホ長調 BWV.1042
● オーボエ、ヴァイオリン、弦と通奏低音のための協奏曲ハ短調 BWV.1060R
● ヴァイオリン協奏曲ト短調 BWV.1056R
● ヴァイオリン協奏曲イ短調 BWV.1041
● 2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV.1043

名手ファウストによるバッハ協奏曲でこれだけの曲を聴けるのでもう決定版といってもよいと思う。
ファウストの明確で美しい音色とベルリン古楽アカデミーの爽やかな競演が素晴らしい。オーボエなどの共演者の好演も光る。