limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

life 人生雑記帳 - 66

2019年11月20日 16時22分51秒 | 日記
早紀のアパートを出たのが、午前11時過ぎ。「Y先輩、楽しかったです!また、泊りに来て!」と玄関先で別れのキスをしてから、傘を広げて表通りを目指す。早紀は、ずっと見送ってくれていた。雨は、大分治まって来てはいたが、時折横殴りに吹き付けた。表通りには、恭子の車がハザードを点けて停まっていた。助手席へ乗り込むと、ゆっくりと車は走り出した。「Y、早紀はどうだったかな?」「自分でハメといてよく言うよ!どうしたの?目が真っ赤じゃないか!寝てないのか?」「うん、だって・・・、悔しくて・・・、寂しかったの!」恭子は泣きながら車を走らせる。これまで、金曜日の夜は、恭子との時間だった。他人を挟まずに2人だけで逢瀬を重ねて来たのだ。それを手放したダメージは恭子の予想を越えたものだったのだろう。車は、城山公園へ突っ込んだ。恭子はシートを倒すと、後部席へ滑り込む。僕も続いた。膝に恭子を乗せると、しっかりと抱いてやる。「あなた・・・、置いて行かないで!」恭子は僕の胸で泣きじゃくった。華奢な身体をしっかりと包み込んでやり、思いっきり泣かせる。「置いて行かないよ。恭子の傍にいる」彼女は、泣きながら何度も頷いた。しばらくすると、恭子は、徐々に落ち着きを取り戻した。「早紀の匂いがする。あたし、馬鹿な事したのね。早紀にYを丸投げするなんて、自分で自分の首を絞めるだけなのに、愛しい人を差し出すなんて愚かだったわ」と消え入りそうな声で言う。「恭子、“正室”なら、もっと我儘を通していいんだよ。引き下がる理由なんていらないだろう?」「うん、自分の時間は大切にしなきゃダメよね。Y、今晩、出掛けようよ。あたし、我慢出来そうも無いの!」「分かったよ。でも、その前にしなきゃならないことがある!」うつむいた恭子の頬を掌ですくってから唇を重ねた。恭子も舌を絡ませて来る。狂おしい程に恭子が愛しく感じられた瞬間だった。雨は次第に弱まって来たが、風は依然して強く車を時折揺さぶっていた。

寮に戻ると、鎌倉も“非常招集”から上がって来た直後だった。「Y!昨夜は何処に泊ったんだよ?帰って来ないとは、罠にハメられたのか?」「ああ、見事にハメられたよ。酔った挙句に“お持ち帰り”にされちまった!」僕は、昨夜の顛末をダイジェストで説明した。「うわー!最悪のパターンだな。それで、ボトル代はどうしたんだよ?」「こっちで払ったよ。今までの事を考えれば、それくらいは出さないとヤバイだろう?」「何分の一かは知らんが、少しは見返りを出した訳か。まあ、当然だな!それで、朝メシは?」「手料理でおもてなしだよ。それは成り行きだからまた別の話だが、相手が品証の大物の女の子だから断る訳にも行かなかった。実権もかなりの部分を握ってるし、発言力もある子だ。恥をかかせて“品証を敵に回す”のは得策とは言えん!」「うーん、相当“危ない橋を渡る”を地で行ってるな。もう、首まで固められたか?」「そうらしいよ。“側室”がまた増えちまった。“大奥”が一段と賑やかになったのは、喜ぶべきか?嘆くべきか?頭が痛いよ」「まあ、そう悲観するな。俺も同じ運命だよ!総務の女の子達が“サーディプみたいに大奥制度を創設しなきゃ!”って張り切り出した!俺も時間の問題さね。しかも、新谷さんは近所にアパートを借りて1人暮らしをしてる。今日は、そこへご招待されてるんだよ!あすは、間違いなく朝帰りさ!Y、彼女の部屋はどんな感じだった?」「きれいに片付いていて、一分の隙も無かったよ。ついでに言うと、当然だが“してない”ぜ!」「やっぱりか!俺も“させてもらえない”のは分かってる。俺も、そろそろ腹を括る潮時だな!総務の女性陣に総攻撃を喰らったら、Yより恐ろしい事になりそうだしな・・・」鎌倉も同じ道を歩もうとしていた。総務での“大奥制度”創設に関しては、早紀が子細に答えているので、同じ制度が立ち上がるのは時間の問題だろう。「ともかく、風呂へ行こうぜ!鎌倉、ずぶ濡れじゃないか!」「Yは、女物のサニタリーの匂いがプンプン!」互いに笑い合ってから、風呂へ入り温まってから出た。「今晩に備えて寝ておかないとマズイな!」「ああ、少しは休んで置かないと、新谷さんの部屋で沈没しちまう!」僕と鎌倉が正に寝床に入ろうとした瞬間、「悪いが待ってくれ!2人に相談しなきゃならない事がある!」と田中さんが止めに来た。「最悪!」「寝入り端に何です?」僕等の機嫌が良いはずが無い。「まあ、そう怖い顔をするなよ。お前達を捕まえるには、こうでもしないと捕まらんのだ。早速だが、異例の要請が来てしまったのだ。第1次隊の赤羽以下、4名の“緊急召喚”だ。本人たちは何れも“今、抜けるのは無理だ”と答えた。しかし、O工場側は“どうしても戻してくれ”と譲る気配が無い。板挟みなのだが、どうしたものかな?」田中さんはため息交じりで言った。「送って置きながら、今になって“帰せ”とは如何にも無責任でしょう?みんな、それぞれに責任ある立場に立っているんです。後任問題を解決しなくては、事業部に迷惑がかかりますよ!」「そうだ!何のための派遣なんだよ!今更“帰せ”とは、ご都合主義もいいところじゃないですか!」僕と鎌倉は反発した。「O工場側としても、台所事情は厳しい。総務と設計に携わる連中については、喉から手が出る程人手が欲しいんだよ。向こうの開発状況に変化が出ているのは確かだ。当初の目論見以上に、事の進行が速いのか?複数の開発が進んで人手不足に陥っているのか?判断は微妙だが、第4次隊の派遣中止も視野に入れている節が見受けられる。だが、“早期帰還”を言い出した事を勘案するとだな、第4次隊の縮小は避けて通れなくなりそうなんだ。現場レベルで“早期帰還”は実現しそうか?」「それは、無理ですよ!第1・2次隊の連中は、特に各事業部の中核を担ってます。後任を出そうにも、現状の仕事量を考えれば、帰れる保証はありませんよ!せめて、任期が満了しなくては、帰還問題云々を議論する余地はありません!」「そうだな。任期が終わる時期が近いなら、こちらも考えるでしょうが、我々、第3次隊も中核を担い始めてます。国分のシステムに組み込まれてる以上、抜けるのは容易ではありませんよ!O工場側は、それが見えて無いから無茶を振るんでしょうが、既に“国分の一員”となった今、無責任な事は避けるべきですよ!」僕と鎌倉は“無理だ”と繰り返した。「となると、個別に事業部と交渉しなくてはダメか。ふむ、厄介だな!」「それに、各派遣隊員は、職場でも信頼を勝ち得ています。最低限、任期満了の日が来るまでは、動かすべきではありませんよ!O工場の信用にも関わる大事ですよ!向こうも苦しいでしょうが、我々も苦しみながらそれぞれの道を進んでます。ここは、“痛み分け”でケリを付けるのが順当ではありませんか?」「そうだ、第4次隊の派遣は中止してもやむを得ないが、既に着任している第3次隊までは、任期を全うしなくてはO工場の威信に関わる大事になっちまう。田中さん、ここは向こうにも我慢をしてもらわなくは、困りますよ!そうしなくては、全社から非難を浴びちまう!」僕と鎌倉は盛大に釘を打った。「うーん、2人の言う事は最もだな。ここで引いたらO工場の恥を晒す事になりかねん。どうやら、再検討を依頼しなくては無理だな。分かった。向こうには“途中で引き返す事は出来ない”とハッキリ断言して、判断を出し直させよう!いや、悪かったな。ゆっくり休んでくれ」田中さんは、確信を得て引き上げて行った。「虫のいい話だよな!」「知らぬは、無節操な考えを生むもの。ご都合主義は通らないよ!」僕等はやっと眠りに付く事が叶った。

数時間後、目覚ましのタイマーが作動する前に僕は目覚めた。深く眠った事で、疲労感も倦怠感も失せていた。克彦ちゃんと吉田さんは、偶然にも休みになったらしく、同僚と出掛けていた。そんなメモがあった事にも気づかずにいた程、疲れていたのだろう。鎌倉は爆睡していたので、起こさぬ様にそっと部屋を出てシャワーを浴びに風呂へ向かう。早紀の匂いを消すためだ。恭子の手前、それぐらいの気遣いは必須事項だろう。サッパリとして部屋に戻ると、鎌倉も起きだしていた。「おはよ。もう、身づくろいかい?」「ああ、別の女の匂いは消して行くのは、最低限のマナーだろう?“正室”に対して失礼のない様にするのは当然だよ」「気苦労が絶えないねー。でも、そうした姿勢が評価されて、今の地位がある様なもんだ。俺も参考にさせてもらうよ」鎌倉もそそくさと風呂場へ向かった。支度を整え手荷物を揃える頃には、鎌倉も戻り急いで身支度にかかった。「何か、緊張するぜ!女性の部屋に乗り込むんだ。粗相の無い様にしなけりゃいけない!」「まあ、余り力を入れても仕方ないぞ!普段の姿や休日の姿は見られてるんだから、下手にメッキして行っても何の効果も無い。“そのまんま”で行くのが最善手だよ。ただ、タバコは気を付けろ!迂闊に出すなよ!」「おっと、それを忘れるところだった。基本“禁煙”だよな?」「ああ、匂いを残すものはご法度だ!それくらいは我慢しろ!」「お前さんに言われなけりゃ、危うく吸っちまうとこだったぜ!禁煙、禁煙!」鎌倉は呪文の様に唱えている。ヤツも内心は浮かれているに違いない。何が待っているか?までは想像もつかないが。「Y、お迎えの時間は?」「4時半だぜ。そろそろかな?」「こっちも同じくだ。出るか?」「行きましょう!」連れ立って寮の玄関を出ると、白いローレルとスカイラインは既に待機していた。「無事に帰還しろよ!」「そっちもな!」別々に分かれて車に近づくと「Y、これ!」恭子がキーを放って寄越す。ベージュのワンピース姿は初めて見る。化粧も念が入っていた。運転席に乗り込むと、左の頬にキスが飛んで来る。「マークを付けなくても大丈夫だよ」「ふふふ、今、拭いてあげる。それより、お腹空いて無い?あたし、お昼食べてないからどうする?」小首を傾げた恭子はゾクゾクする程美しい。「鉄の桶でもカジれそうなくらい腹ペコだよ。まずは、食事だな。どこへ行く?」「加治木まで飛ばして!角煮丼でも食べようよ!」恭子が言うので、スカイラインは西へ向かった。「Y、これ読んだことある?」恭子が1冊の文庫本見せて言う。「“天璋院篤姫”か。読んではいないけど、内容は想像が付く。島津一門に生まれた彼女は、島津斉彬に見いだされて、京の近衛家を経てから13代将軍家定の元へ嫁ぐ。家定は、病弱で虚弱体質だったため、子宝に恵まれる事は無かったが、彼女は大奥で重きを成して、明治維新の際に“江戸城無血開城”と“徳川家存続”に力を尽くす。作中では、天真爛漫に育った少女時代から、徳川家の行く末を案じた晩年までを記した“1人の女性の一代記”が描かれているってとこでしょう?」「流石、Yだわ!篤姫が薩摩の人だって知ってる事も驚きだけど、読んでないのに内容をスラスラと言えるのは、脱帽モノでしか無い!神崎先輩が貸してくれたんだけど、あたしも“御台所の心得”のつもりで頑張って読んでるのよ。最も、子宝に恵まれない云々は別にしてだけど」「斉彬公について、安政の大獄の背景について掘り下げれば、自ずと分かる事ですよ。あの頃は、女性の政略結婚は当たり前の事。運命に翻弄された女性は、数多くいましたからね。特に“大奥”は鬼門の様な場所。篤姫も苦労が絶えなかったはずです。僕等は幸いにして、互いの大切さを思い、逢瀬を自由に重ねられますが、結果が出ないのが残念ですよ」「そうね。でも、あたしは、必ず結果を出して見せる!そう、思わなくは生きて行く支えが得られないもの。もう少し先の信号を右に曲がって。Y、早紀の匂いを消して来たのね。そう言う細やかな心遣いを忘れないのがうれしいわ!」恭子は左手に右手を重ねた。目指す場所には、意外と早く到着する事が出来た。暖簾をくぐって、椅子に座ると恭子がオーダーを入れる。運ばれてきたお茶の飲みながら、改めて恭子を見ると美しかった。「何見とれてるの?最も、それが狙いでもあるけど」「美しい人に見とれて悪い事がある?」「無いわよ!惚れ直した?」「うん、改めてね」「やけに素直に認めるのね。早紀と何かあったの?」「特に何もないけど、あんな状況にホッポリ出されて、面食らったのは事実。それと、罪悪感だろうな。居心地が悪かったのは確かだ」「どうして?」「上手く説明するのは難しいけど、金曜日の夜は基本的に恭子の日だろう?バツが悪いんだよ。他の女の子を抱くには」最後は小声になって言うと「それを聞いて安心したわ。あなたもそうだったのね。あたしも、ずっと泣いてたの。“どうしてYを置いてきちゃったの!”って自分を責めたの。だから、車の中で待っている間も悲しかった。寂しくてたまらなかったの!」恭子の目から光るモノが頬を伝う。押し潰されそうな不安と戦った一夜だったのだろう。人目をはばかる事無く、彼女は涙を流した。「恭子、金曜日を潰すのは止めようよ。2人の時間はちゃんと確保しないか?」「うん・・・、もうあんな事・・・、しない!」ハンカチで涙を押さえながら、恭子は言った。その声は強い決意に裏打ちされている様に感じた。角煮丼の入った器が運ばれて来る頃には、恭子も落ち着きを取り戻していたが、その器の巨大さに半ば呆然とする。「大盛だから、しっかり食べようよ」と彼女は言うが、ご飯はてんこもりだし角煮も個数が多い!だが、昼を抜いている僕等には丁度いい量だった。無心に食べていると「人間、3食キチント食べないとダメよね」と言う。「ああ、チャント食べて、飲んで、笑って、寝て、そうしてから考える。答えは僕等の内にある。自分を誤魔化すのは一番辛いしダメな事だろう?」と返すと「うん、その通りだね」と言われる。恭子も僕に負けまいと無心に丼に喰らい付く。見事に完食すると、自然と笑顔がこぼれた。「どう?お腹足りてる?」「これで“足りない”と言う人が居たら、絶食してるか?大食いの人だけじゃないか?」と返すと「良かった」と笑みが浮かぶ。女性としての器の大きさは彼女は抜群だ。千絵は足元にも及ばない。“正室”と自ら言い切るだけのことはある。何気ない気遣いや細やかな心配り。“大奥総取締”を自認するだけの力量は間違いなかった。お腹を満たした僕等は、宛ての無いドライブに出た。カセットは“For East”、スタートの曲は“Drifter”だ。「“Drifter”って“放浪者”のことでしょう?今の気分には合ってるわね。このまま、全国を巡る旅にでも出ようか?」「ふむ、それ、いいかも。だが、支度が整って無いよ?女性なら一荷物積んで来なきゃ!」「Yだって、撮影機材がいるでしょう?」「ああ、だから今は、“アスファルトの迷路をさすらう”だけでいい」「ずっと気になっていたんだけど、何故、女性アーティストばかり聞くのよ?男性がNGな理由はなに?」「うーん、明確な基準は無いんだ。フィーリングの問題。と言うか運転していて“心地いいか?”だろうな。本能的に女性を欲しているのかもね。レーサーならともかく、助手席に女性が居た方が僕としては落ち着くからかな?」「今は、あたしが居るのに?」「クセになってるからだよ。男の怒声を聞いてたら、コーナーからはみ出すかも知れない。落ち着いて運転するためにも、必要な要素になっちまってるんだろうな」「ずっと“女性”とつるんで来たからじゃない?高校時代の付き合い方を思えば、必然性はあると思う。あなたは、女性と組むのが“宿命”なのかも」恭子が笑う。「“宿命”か。そうだとしたら、今は文句の付けようがない無い環境にいる事になるな。故に、自然と力が湧いて来る。僕は女性に囲まれた方がいいのかも知れないな!」「そう思ってくれるなら、帰ろうなんて気は起きないでしょう?」「ああ、黙って引き下がるつもりは無いよ。“安さん”は伏せろと言ったが、恭子にだけは話した方がいいかも。実は、“安さん”の嘆願が受理されて、本部長が僕の任期延長に動いてくれる事が決まったらしい。当面、半年だが、後は自動的に“転属”になるってさ。願ったりだから、どうなっても“構いません”って返事はして置いた」「本当!Y、残る事に異存は無いの?」「恭子を置いていけるか?他の“側室”もそうだが、今更、引き返す意味があるか?自分の道は自ら切り開く!縁あって出会った子達を、置いて帰る理由が見当たらないんだよ。“改革”も道半ばだし、やりたい事は、ここにあるんだ。まだ、僕は“見たい世界”を見ていない。それに、中途半端が一番嫌だ!完結させて、根付かせるまでは、走るのを止めたくないからね」「あなたなら、そう言うと思った!何一つ疎かにしない姿勢の人が、途中下車なんて屈辱じゃない!ここで暮らそう!あたし達の子を育てようよ!」恭子は、左側から袖を掴んで、僕を揺さぶった。「誰の人生でも無い、僕の人生だ!後悔しない生き方を選ぶさ!だから、恭子と共に歩みたいと思う!我は“この地に根を降ろす”誰にも邪魔はさせない!」スカイラインは、徐々に鹿児島空港に近づいて行った。“誰にも見咎められない部屋”を目指して。

“部屋”で2人きりになると、恭子は甘え始めた。膝に座り込むと唇を重ねて舌を絡ませてから、胸元へ手を導いた。華奢な身体には、不釣り合いな豊満な乳房だ。「ねえ、あたし髪を切ろうかしら?少し邪魔に感じるのよ。どうすればいい?」キスを繰り返しながら聞いて来る。「長さは変えるなよ。もう少し、長い方が似合う。だが、毛先が痛んでるから、少し整えた方がブラッシングにはいいかもね」「じゃあ、そうするわ!どうして、長い髪に拘るの?」「素直に真っ直ぐな髪だから、余計な飾りなんていらないだろう?恭子はロングが似合う。たまには、こっちの意見も聞いて見ろよ!」「分かったわ。毛先の傷み具合まで見抜かれてるなんて、初めて言われたわ。上からボタンを外して!今夜も寝かせないから」恭子は嬉しそうにほほ笑んだ。パステルカラーのブラが見えるまでボタンを外すと、ホックをもどかし気に緩める。掌に余る乳房をゆっくりと揉んでやると、「下も早く」とせがんだ。ワンピースを剥ぎ取りパンティ1枚にすると、ソファーに押し倒す。乳首を摘まむと「ダメ!濡れちゃうでしょう!」と悲鳴を上げるが、恭子はそれすら愉しんでいる様に感じた。指で下をかき回してやると、雫でパンティにシミが付いた。「そうよ、もっと・・・、かき回して!ああ・・・、いい・・・、もう出ちゃいそう!あっ・・・、ああ!」と喘ぎ声高まると同時に、愛液が噴出した。ソファーも床もびしょぬれ。パンティも被害を免れなかった。「気持ち・・・良かった。濡れた・・・パンティあげるわ。今度は、あたしの番よ」恭子は息子を引き出すと、夢中で舌を這わせた。「もっと元気にしてあげる。あたしの中で思いっきり暴れられる様に」愛おしそうに息子にエネルギーを送り込むと、ベッドへ飛び込んで馬乗りになる。「さあ、イタズラ坊やをちょうだい!」恭子は狂ったかのように腰を振って喘いだ。昨日の鬱憤を晴らすかの様に、貪欲に息子を欲しがりねだり続けた。

「ねえ、ちょっと気になる事があるの」「なにが?」3試合を終えた恭子が、胸元で言い出した。ピッタリと身体を寄せ合ってベッドで休んでいる最中に。「宮崎ちゃんの髪の色なんだけど、徳永が問題にしようと画策してる節が見受けられるのよ!どう思う?」「あれか?宮崎さん、何か失敗でもしたの?」「いいえ、彼女はどんな時でも完璧よ。手抜きなんて彼女の主義じゃないもの」「それなら、反論の余地はあるね。“個性”を抑え付けるなんて暴挙に等しい。仕事上で問題があるなら、付け込まれる隙があるけど、それが無いとすれば、原則的にどうこう言う、言われる筋は無いよ」「Yの様に寛容な考え方が出来る人じゃないから、困るのよね。月末、最終日に決着が付いた当たりに、言い出して来ると思うの。Yは助けてくれる?」「勿論、応戦はするさ!制限の多い中、唯一のオシャレなんだから、出来る限りやって見るのも悪くない。けれど、そんな“重箱の隅を突く”前に、他を叩いて欲しいな!」「何を?」「塗布工程の効率化とか、下山田の尻を蹴るとか、課題は山積してる。田尾の喧嘩を止めさせるなら、話は別だが」「そうでしょ!何故かズレてるのよね!」恭子は不満げに胸元を叩く。「まあ、今までがズレまくりだったんだから、仕方ない側面はあるが、そろそろ上も意識を変えてもらわないと困るな。返し・検査の一体運用にメドは立って来た。出荷は、徳田と田尾に任せるにしてもだ、整列・塗布の前を強化しなくては、生産能力の引き上げは覚束ない。整列には、矢を打ち込めたからいいが、次は橋元さんに楔を打っとく番だろう。それに、返し・検査の頭を誰にするか?これも、早急に決めなきゃならない!」「Yがやれば済む事でしょう?」「それはそうだが、順序を踏まないと、いきなり座り込んだら変だろう?“貴様が全責任を負え!”って“安さん”が咆えてくれなきゃ勝手は出来ないよ。やるからには、誰にも文句は言われたくないし、思う様に変えて行きたいし」「やけに慎重にするのね。その心は?」「征服者が失敗するケースのほとんどが“焦りから来る軽率な行動”だからさ。段階を踏んで、徐々に傘下に治める方が反乱が起きる心配は少なくなる。最も、恭子達が叛くとは思ってはいないよ。問題は2階の連中さ。影響力を削がれるのを恐れて、簡単には譲歩しないだろう。だからこそ、“安さん”の決断が必要なのさ!」「でも、“安さん”の腹の内は決まってると思うの。だからこそ、宮崎ちゃんをダシにして、“試験”するつもりなのかも」「もし、そうだとしたら、絶好の機会になるな!ここで、一気に全権を握れれば、後が楽になる!受けて立ちましょう!」「見せてちょうだい!武田の騎馬軍団の勇猛さを!」恭子は上から覆いかぶさると、キスをして来た。もう、1試合を望んでいる様だ。下に手を伸ばすとゆっくりとかき回し始める。「そうよ!もっと指を入れて!」恭子は、息子を掴んで刺激をし始めた。夜は更けていったが、熱く燃える逢瀬は果てる事無く続いた。

寮に帰り着いた頃には、日付が変わろうとしていた。「じゃあ、おやすみ」キスをすると運転席を代わる。「これからは、金曜日は誰にも譲らないことにするわ!Y、愛してるわ!」恭子は投げキスをすると、ゆっくりと駐車場に乗り入れて行った。部屋に戻ると、誰も居なかった。克ちゃんと吉田さんも外泊らしい。鎌倉は「考えるだけ野暮だな」と斬って捨てた。ヤツも今頃は、眠れぬ夜を過ごしているはずだ。僕は、目覚ましをセットするとベッドに横になった。“旧態然とした組織を打ち壊して、目を覚まさせるのは容易では無い。だが、これ程、やりがいのある仕事をO工場でやれるか?”“そんな事出来る訳無いでしょ!年功序列だぜ?!”自問自答をすればする程に、“帰還の日”が近づくのが憂鬱になった。“最初で最後、最大のチャンスを棒に振るな!”そんな声が聞こえる。確かに、今が絶頂期なのは間違いあるまい。ならば、自分はどうすべきか?答えは1つ。「何としても“残留”を勝ち取る事!これしか無い!」僕の心は定まった。もう、揺らぐべきでは無かった。歩む道が定まった以上、惑う事は避けなくてはならない。何度かの寝返りを打った後、僕はようやく深い眠りに落ちて行った。

遠くでベルが鳴っている。隣に眠っている恭子が起きてしまうじゃないか!必死に手を伸ばして目覚ましを止めると、寮のベッドの上だった。「うーん、昨夜の逢瀬が潜在意識に残存していたか?」部屋には誰も居なかった。克ちゃんも吉田さんも鎌倉も、未帰還の様だった。「ふむ、今日は千絵と永田ちゃんか。2人が組むのは久しぶりだな。何を企んで来るやら!」そう呟くと、シャワーを浴びに1階へ降りた。眠気を振り払い、サッパリすると身支度を始めた。フィルムは3本用意して、ポートレート撮影に備える。レンズは85/F2.8と28/F2.8を選んだ。ボディに予め装着したのは28の方だ。集合予定時刻は、午前9時。後30分は猶予があるが、僕は早々に談話室へ降りて行った。玄関先を窺うと“緑のスッポン”がウロウロとしていた。どうやら、待ち構えているらしい。車はまだ横づけされていない。「どうせ喰いつかれてるんだから、適当に追い返すか?」僕は、外へ出て周囲を見回した。「先輩、今、いいですか?」美登里が駆け寄って来る。「あまり時間は無い。手短に済ませてくれ!」「実は、業務で板挟みになってるんです!NGなのに、“合格品にしろ!”って現場が言う事を聞かないんです。どうしたら、いいと思いますか?」“スッポン”曰く“マルチレイヤーパッケージに、欠けがあるにも関わらず現場は合格品扱いを言い、品証はNGの判定を下せ!と主張している”と言うのだ。まだ、経験の浅い美登里にすれば、どちらの言い分を通すべきか?判断しかねるらしい。「基準が分からないから、推測でしか答えられんぞ!その点は、勘弁しろよ。品証が“NG”の判断を下した以上、合格にはならないだろう?まあ、現場にしてみれば、これまでの苦労が灰燼に帰すんだから、粘るのは当たり前だ。だが、厳格な基準が存在する以上、品証が揺らいではならない!“ダメなものはダメ!”で押し通すのが筋じゃないか?製品の用途を考慮すれば、CPUのケースである以上、不完全な製品を納めるのは、客先の信頼と受注を失う一大事だ。時と場合にも寄るが、品証である以上は“非情な決定も下さなきゃならない”事を意味する。上が“ダメ!”を出したら、覆すのではなく“何故NGなのか?”を現場に納得させる事が先決なんじゃないか?その上で“特別採用”なり、再生産を指示する。品証の権限は絶大だ。恐らく、君は“試されてる”んだろうよ。“正しい判断”が下せるか?否か?をな」「じゃあ、現場が何と言おうが“ダメなものはダメ!”で押し通せと?」「さっきも言ったが、品証の判断は“絶大で、余程の事が無い限り覆らない”んだ。情に流されず、己の立ち位置を良く考えるんだな!O工場の様に“なあなあ”では済まないんだ。“白か黒か”の2択しか答えは無い。それは、自分でも良く分かるだろう?多分、答えは既に君の中にあるはずだ!自分の地位は自分で確立しなきゃならん。任された責任は果たせ!それが、ここの流儀なんだ!」僕はそう言うと、道路を見た。“ブルドック”が重低音を響かせて停まった。お迎えの到着だ。「じゃあ、僕は出掛けて来る。岩留さんの期待を裏切るなよ!ここで踏ん張れば、信頼されるようになるだろうさ」踵を返して僕は車に向かう。「先輩、ご自身が判断に迷われたら、どうするんです?」美登里は背に声をかけて来た。「品質基準を読み返せ!基本は、そこにあるだろう?迷ったら品証に問い合わせるさ!君はあらゆる事に対して、答えられる事を求められている。もっと、身を入れて仕事に向かえ!」振り返ってそう言うと、僕は前に向き直り、永田ちゃんの笑顔と千絵の笑顔を見つめた。「Y先輩、これ!」永田ちゃんがキーを投げて寄越す。「さて、どこへ行くんだ?」「それがね、まだ決まらないのよ!永田ちゃんはワインディングロードって言うし、あたしは大事な“種”をもらいたいし、膝に座りたいの!」千絵はそう言って悩んでいた。「別に2人同時に“種”をちょうだいしても、問題ないですよね?」永田ちゃんは開けっぴろげに言った。その目は悪戯っぽく輝いている。「両方の希望を同時に叶えるか?のっけから難題だな・・・。ともかく、走りに行こう!それぞれの希望は、走りながら考えればいい!」「“成り行き任せ”って事?」千絵が膨れる。「そうしなきゃ時間がもったいないだろう?1対1じゃないんだからさ」「まあ、いいわ。どっちが魅力的か?永田ちゃん勝負する?」千絵が挑んだ。「受けて立ちますよ!若さでは、負けませんからね!」永田ちゃんも燃え上がる。「よし、行こう!」僕は“ブルドック”をスタートさせた。快調に飛ばして、牧之原台地へと駆け上がる。「まずは、宮崎県へ出よう。食料と飲み物を調達しなきゃ!」「あー、お腹空いた!」「基本はそこからね」2人も同意する。さて、今日はどうするのか?まだ、名案は浮かんでいなかった。“ブルドック”は勢い良く裏道を駆け抜けて行った。

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