limited express NANKI-1号の独り言

折々の話題や国内外の出来事・自身の過去について、語り綴ります。
たまに、写真も掲載中。本日、天気晴朗ナレドモ波高シ

ミスター DB ㉛

2018年08月17日 22時37分23秒 | 日記
「貴方の身にまた危険が迫っています。近々、ミスターJから通知が入ります。くれぐれも油断しないで下さい!」見知らぬ看護師の女性は、声を潜めて私に告げた。「DBが特攻隊でも率いて来ると言うのですか?」私が問うと「いえ、Kがまた何かを画策している意図を察知したのです。貴方をたまたま見かけた社員が、Kに通報して水面下で不穏な動きを見せ始めています。詳しい事はまだ分かりませんが、いずれ何らかの動きがあるでしょう。貴方は事の次第が分かるまで、周囲に気をつけて❗私がミスターJと貴方を繋ぎます。指示があれば直ぐに知らせに来ますから安心して下さい」そう言うと彼女は病室から出て行った。また、荒波が迫って来る。今度はどうなるのだ?いずれにしても面倒な事が起こりつつあるのは間違いない。


「クソ!また、帰れず仕舞いか!!」岡山駅の新幹線ホームで、携帯を叩き切ったDBは毒づいた。鳥取での案件をようやくにして捩じ伏せ、横浜へ帰るために、岡山駅まで引き返した矢先、本社からの「緊急指令」で福岡空港へ向かう羽目になったからだ。「恐らくは中国だろう。探りを入れるには絶好の機会だ。俺のコネクションを甘く見るなよ❗」DBは、うそぶきつつ西へ向かった。

「Kの元配下に不穏な動きがある?それは何だ?」Y副社長は電話口で真顔で聞き入っている。電話は「ミスターJ」からの通報だった。私を大学病院で見かけたと言う話が、Kの耳に入り元配下が密かに動いている事が「ミスターJ」の監視網に掛かったと言うのだ。「ミスターJ、阻止もしくは撹乱はできそうか?今が一番の正念場だ。無事に救い出すためにも、時間稼ぎは必須だ❗何としても迷惑は掛けられない」Y副社長は不安を隠さなかった。「この際、あらゆる手を尽くして欲しい。後の始末は、私が引き受ける。何とか叩き潰しに掛かってくれたまえ。iにも情報は流れているんだな?済まんが宜しく頼む。DBは、私に任せてくれていい。手出しはさせん。また、状況は知らせてくれ。分かった。では」電話を切ったY副社長は、部下を集めて次々に指示を与え、毅然として言った「今度こそKもDBも根こそぎ切り捨てる。私を甘く見た報いだ❗」

「韓国?今さら何で出向く必要があるんです?」DBは品質保証部長に携帯で噛みついた。福岡空港で落ち合った部下から、指令と航空券を受け取ったものの、納得が行かないDBはぶちギレかかっていた。部長は必死にDBをなだめ透かしにかかる。「Y副社長直々のご指名なんだ。あの設備に関しては君以外に適任者がいない。中国へ移管するに当たり、問題を解決出来るのは、メーカーと君の協力が不可欠なんだ」「しかし、事は1週間で片付く様な生易しいもんじゃありません。1カ月はかかります。それに私の休暇の件はどうなるんですか?もう2週間ぶっ通しですよ❗私をともかく横浜へ戻して、他の誰かを行かせられないんですか?」ヤツも苛立ちを隠さない。だが、部長は「君しか出来ないから」と譲らない。あまり上司の心情を悪くするのも得策では無い。DBは遂に折れて、韓国へ飛んだ。「帰国したら2週間の休暇と手当の増額」が条件だった。電話を終えて、DBの出国を確認した部長は、Y副社長へ連絡を入れた。「ご指示の件、手配を終えました。2カ月は戻しません」「よし、何があってもヤツを帰国させるな❗抜かりは無いな?」Y副社長は念を押す。部長は「メーカーには徹底的に時間をかけるように指示しました。簡単には帰れません」と答えた。「よろしい。DBからの連絡はのらりくらりで頼む」Y副社長は電話を切り、独り言を言う「まずは一手、次はどう出るK ?❗」

ミスターJとi氏は、自宅の固定電話で「方策」について協議していた。「Kの動きはまだ分かりませんが、元配下の連中が大学病院へ探りを入れる準備を始めているのは、分かっています。彼が見つかったのは偶然です。Kは半信半疑の域を出ていないでしょう。だから、配下の連中が大学病院へ行くのでしょう」ミスターJは落ち着き払っている。「まだKが諦めていなかったのは分かるが、動いている連中はどの程度の人数なんだ?ヤツらは解体させられて処罰を食っている。今度、垣根を越えたら首切りだぞ!Kも元配下も正気か?」i氏は半ばあきれ果てていた。「前回の一件で唯一、処罰を免れたXを覚えていますか?ヤツが八方に働きかけて10名を呼び戻す事に成功しています。今、大幅に生産が遅延しているNデジタルの量産に不可欠だと主張して。ですから、11名が再集結してうごめいているんです。これにKを加えると12名になります。手強いヤツらばかりですよ」i氏は「信じられんが、いつの間にこんな所帯を作り上げたんだ?人事に関してはXだけでは覆す事はできんぞ!誰がバックに居るんだ?」とミスターJに誰何した。「恐らく、組合でしょう。Xは役員です。各事業部に掛け合う機会は多いし、Nデジタルの問題は全社的な事案になってます。これを盾にとれば、抜け道はいくらでも用意できますし、本部から本社へ話を持ち込むルートもある。組合を後ろ楯にする手口はKの入れ知恵でしょう」「分かった。その手口ならあり得ない事でも無いな。で、どうする?下手に動いては彼に危害が及びかねない。だが、何も手を打たなければ、Kの思うがままだ。どうすればいい?」i氏も困惑を隠さない。「一つ試して見たい手はあります」ミスターJは言った。「KとXの間にはスキがあります。Kは退職してますから、直接的なものが見えない。どうしてもXを経由するしかないんです。もし、仮にKとXの間に楔を打ち込めれば、撹乱する事は可能ですし、詳しい手の内が覗けます」「どうやって楔を打ち込むんだ?」半信半疑でi氏は聞き返す。「Xの奥さんは今パートでウチの工場に来てますよね?彼女の職場には私達に協力してくれる社員が数名居ます。これが何を意味するか?はお分かりでしょう?」「まさか、本気か?」i氏は絶句した。「そうです。奥さんにスパイ活動を依頼するんです!」「それだけじゃないな!まだ、あるんだろう?」i氏は半ば呆れつつ聞いた。「Xを二重スパイに仕立てます!身の保護と10名の部下の地位の保証をエサにして。Kはともかく彼らには生活がかかってます。もうこれ以上の転落は避けたいはずですから、食いついては来ると思いますよ!」「もう、始めてるのか?」i氏が聞くとミスターJは「察しが早い。既に奥さんは落としてあります。Xも時間の問題です」と答えた。「そうすると、Kにはどんな情報が行くんだ?ヤツとDBを根こそぎ一掃するのがY副社長の目的だぞ!」i氏は心配しつつ聞くと「そこが私の腕の見せ所ですよ。Xから流れる偽物の情報によって、ヤツらは破滅するんです。無論、貴方にも手伝っていただく必要性がありますが、構想は固まりつつあります。Y副社長の承認さえ得られれば、シナリオを演じるだけでヤツらは破滅です」「分かった。存分にやってくれ!俺の演目はちゃんと教えてくれよな。これからY副社長に説明するんだろう?俺はすべて了解済みだと伝えてくれ!また、何かあれば電話をくれ」i氏は電話を切り、ふと考えにふけった。Xを二重スパイに仕立てるとは、壮大な話だ。だが、Y副社長にして見れば、KもDBも仇敵である。「本気を出されたと言う訳か、久し振りだ。あの方の本気程恐ろしいものはない!」ミスターJとどう言った話が展開しているのか? i氏は興味津々と想像を巡らせると同時に底知れぬ恐怖の結末を感じていた。