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通訳の続き

2011-05-27 21:17:33 | 国際会議の通訳
 先週から今週にかけて、更新する時間がとれず、マルタの話が途中になってしまっている。

 以下は、通訳が始まったあとのことである。
 
・総会に当たる会議の冒頭や、開会式などの式典では、全員が起立する場面がある。例えば、冒頭の1分間の黙祷や「国歌」が流れるときなどだが、ブースにいる通訳者もそうする。そのときは、通訳者はマイクに向かって「ご起立願います」と訳して一旦、マイクを切り、起立をする。終わったときには、マイクを入れ(ることを忘れない)、通訳を続ける。

・プロモーションビデオはそのまま流しておいて、通訳はしない。例えば、ICNの閉会式の最後は、次回とその次の開催国の代表が、自国の紹介を行いプロモーションビデオを流す。動画で英語音声がついているとき、大体が速いので事前に見せられていないと訳をつけることは難しいが、そのまま同通できるものもあることはある。でも、その場合もそのままにしておく。そのように主席通訳者が合図を入れたり、事前にそう打ち合わせすることもある。全ブースがそのときに、訳を出さないのだ。

・ICNでは、ゆっくり話すように参加者に注意喚起される。英・仏・西語が使用言語と言ってもほとんどの参加者にとって、そのいずれもが母語ではないからだ。これは国際会議に共通のことだ。だから、通訳者も訳をゆっくり明瞭に出している。特に英語通訳者にそれが顕著だと思う。それができる通訳者が選ばれている。残る言語にリレーされるから、特に重要だ。
 国際会議でフロアから日本語で質問が出ることはこのごろはなくなってきた。質問に立つ日本人は英語で質問している。この傾向は他の国からの参加者にもいえており、CNRという総会に当たる会議は別だが、学術集会で質問を出す人は、ほとんどが英語で質問している。たまにスペイン語で質問が出ても、壇上の講演者にはレシーバーを持たせておらず、基本的には英語で運営するようなやり方になりつつあるようだ。
 だから、日本人通訳者の場合も、ほとんどが英→日通訳になっている。日本人が質問は英語でできるようになってきているのはいいことなのだろう。

 近日中に、看護関係の単語をについて少し説明するつもりだ。一般には、看護は医学の中に入るように思われているが、実はそうではない。同じ日本語でも、医学と看護では異なることがある。簡単にいうと、基本的な治療のモデルが違うので、言葉の選び方が異なってくるのだ。医学では薬や医学的な処置を使って治すが、看護はそうではない。その人の潜在的な力を刺激して健康を回復させさらに健康を増進できるように進めていく。そうした視点から、「医療」という言葉一つでも、訳が異なってくる。


 ICN機関誌のINR(インターナショナル・ナーシング・レビュー)誌に「通訳ブースから見た世界の看護とナース」という題名で原稿を書くことになった。ICNの大会の様子を看護師転じて通訳者になった者の目からみて、紹介するというもの。コラム程度の分量だけど、ナースにとって、これまで「聞く」だけだった通訳の仕組みを少し紹介し、コミュニケーションの視点から見た世界のナースや看護の特徴を簡単に書ければと思う。できれば、ICNの大会が身近になるとともに、いろいろな機会がある国際会議について、ナースの関心を高めることが目的だ。その中に、上記の言葉の使い方の説明も含める。

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ICNマルタ 通訳の準備

2011-05-17 10:15:31 | 国際会議の通訳
 写真は、MCCの1階の廊下に、間隔をおいて置かれてあった甲冑を着た騎士像。Republic Hallの前にあったものだと思う。


 ICNぐらいの大きな国際会議では、資料は事前に出ない。通訳者は自分でスピーカーズルームに行って入手することになる。講演者は前日の17時までにパワーポイントなど、発表関係の資料をスピーカーズルームに提出するようになっている。各演者にはその旨、事務局より周知されているのだが、全くPPTを出さない人もいる。以前は、私もスピーカーズルームでそれをプリントアウトしたり、USBに入れて、自分のPCで見たりして、準備ができた。でも今年からは、講演者にはパスワードが与えられて、ペーパーにアクセスできるのは、当該演者のみになった。通訳資料は主席通訳者が代表してスピーカーズルームに行き、通訳が必要なセッションの資料のプリントアウトを依頼して、ブースに持ってきてもらうという決まりになる。資料が出るのはだいたい、その日の朝。

 1つのセッションには、3人の講演者がいるが、資料については2人出ていれば非常によい状態で、1人だけか、全く出ないセッションもある。通訳サービスのあるメインセッションにはセッション自体の趣旨のみがプログラムに書いてあって、講演のアブストラクトもない。

 だから、事前に、考えられるだけの準備をする。今回の基調講演者のDiana Masonについては、著書Policy and Plitics in Nuring and Health Care(2007)は購入して当該ページは目を通した。
 ICN機関誌のインターナショナル・ナーシング・レビュー誌の中の「インターナショナル・パースペクティブ」というICNの最新動向は私がずっと翻訳をしているのでそれはもう一度、必要部分をチェックする。あと、ICNとWHOのウェブで関連部分は必ず、確認する。それと、日本看護協会の活動ページも活発に変化があるので、見ておく必要がある。
 やるだけのことはやって、睡眠はある程度しっかりとって、自分の準備したことを信じて、本番に臨む。

 食事は非常に大事だ。日本にいるときは、大きな仕事のときには、朝は特に忙しいのだが、10分早く起きていつもよりも朝食をしっかり作る。いわしの丸干し、ほうれん草のおひたし、豆腐の味噌汁、ご飯、ヨーグルトとフルーツ。これだけ食べていくと、午前10時から11時ぐらいに、頭は最高に回転して、すごくのって仕事ができる。
 自宅のときはそれが可能だが、特に海外の出張では、それに代わる同等か、それ以上の栄養価のものをしっかり摂取することを心がける。そうでないと、必ず途中でばててしまう。経験からそうしている。特に朝食は、内容を考えてしっかり食べる。今回もそれは実践した。




 
 
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ICN学術集会(マルタ)のつづき

2011-05-15 20:54:11 | 国際会議の通訳
 5月5日から7日の3日間の学術集会が開かれたMCC(Mediterranean Conference Centre)では、Republic Hallという大ホールでの通訳だった。ホールの中はいわゆるBalcony(劇場の2階席/桟敷)がある造りになっている。


 ブースは、Balconyの最上部分にあって、舞台に向かって、左側が英語とフランス語、右側が日本語とスペイン語のブースだ。左右では、2つのブースが続いている。その真ん中から舞台正面を撮った写真がこれ↓


 奥にあるスペイン語のブースには日本語のブースを通らないと行けない。また、奥のブースはデッドエンドなので、扉を閉めると完全な酸欠になり、通訳をしているときに扉を開けたままになっている。双方の声が聞こえる状況という、ちょっと考えられない状態だった。

 ただブース内にはMFCCと同様、ディスプレーが設置されていた。これは良かった。


 ICNでは主席通訳者がいて、今回のような会議では英語が2人、フランス語とスペイン語が各4名で、2チームの通訳チームが編成されている。今回は、Republic HallとLa Valette Hallに使用言語の同時通訳サービスが提供されていた。日本語は、Republic Hallのみで、事前にその旨、予告されていたセッションの同通だ。
 欧米の通訳では、訳者は母語に訳すという原則がある。1人の通訳者が3ヵ国語以上話せるためにそれが可能だが、日本人の場合はそうはいかない。英語の通訳者の場合は、日英両方を訳すことになる。
 現地で、「英語だけでなく、スペイン語もできるんですか?」と日本人参加者から、何回も尋ねられた。フロアでスペイン語の発言があるときも、私が日本語を出していたからそう思ったらしい。この場合は、リレー通訳といって、私はブースのスイッチをスペイン語に切り替える(事前にエンジニアによって設定されている)と英語通訳者がスペイン語を英語に訳しているので、それを聞いて日本語に訳す。反対に、フロアで日本語の発言があると、私が英語に訳し、その英語をフランス語とスペイン語の通訳者は聞いて、それぞれの言語に変える。これが多言語がかかわる国際会議の場合の通訳チームの連携だ。

 つづく。
 

 



 
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プロフィールの写真の通訳ブース

2011-04-18 10:58:15 | 国際会議の通訳
プロフィールの写真は通訳ブース内のもの。2009年ICN南アフリカ大会でのダーバン国際会議場の大会議場のものだ。舞台に向かって右側の上にあって、舞台と会場を見渡せる。ただ、ブース内にはPCのディスプレイはないので、双眼鏡でスライドの文字を確認する必要がある。ブースと舞台上のスライドの距離はあるので、手持ちの双眼鏡では、スライド全面が見えて、かつ細かい文字も適切に目に入ってきたので助かった。
 ブース内の機材は、業者が持ち込みのもので、会場据付のものではない。

 今日から青学の授業が始まる。
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