北ユーラシアの歴史
貂主の国
アルタイ語族オールスター出演、サハ共和国のチンギスカン映画
ぼりさんとこで紹介していた「レッドウォーリアー」もなかなかのものでしたが(時期的にレッドクリフと重なってたんでタイトルがこうなっているのは仕様として)、あれを上回ってくれるんじゃないかと期待して取り寄せた作品がこれ。
By the Will of Genghis Khan
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/24/07c62379730a325ac793a74fc222c3c9.jpg)
なんだよ、チンギスカンの映画なんて掃いて捨てるほどあるからもういいよ、という貴方、ここで帰ったら損ですぜ。なんたってこいつは
史上最北のチンギスカン映画
なのですから。誰だい、「お寒い映画の間違いだろ」って思った奴は。外へ出ろ。
それはさておき、この映画の製作元は東シベリアに日本の10倍近い面積を占めるサハ共和国になります。貂主の国的にはそれだけでご飯が3杯いけますね。
この手の、旧ソ連圏の共和国や自治共和国が民族意識振興のために大枚をはたいてハリウッドとか海外に映画を作ってもらう、というのは先のレッドウォーリアーでも同様ですね。こちらはカザフスタンの映画なのですが、18世紀中オルダのアブライ汗を主人公に当時強盛を誇っていたオイラト、即ちジューンガルのガルダンからカザフを守る様を描いていました。
その伝からいうとサハ共和国ならではの歴史的英雄を映画化、と行きたいところですが、あいにくとかの国には史料的なものはなく、あるといえばオロンホという英雄叙事詩だけ。さすがに知名度的にも映像化の可能性的にもつらかったのでしょう。同じアルタイ語族のジンギスカンを持ってきた、というところのようです(えー
劇中一箇所だけチンギスカンが「子供の頃に母さん(ホエルン)が話してくれたオロンホを思い出していた」と語る場面があり、これに応えてホエルンがオロンホの一節を口ずさみます。
中の世界の全ては3人の天の息子によって司られている。
Odun Khanによる逃れられぬ死と
Jylga Khanの定めた運命、
そしてチンギスカンの意思によって(By The Will of Genghis Khan)
ということで、ここでタイトルの一節が出てくるわけです。あれ?オロンホにチンギスカンなんて出てきたっけ?
「中の世界」というのは、オロンホではこの世界は「上の世界(天)」「中の世界(地上)」「下の世界(黄泉)」の3つに大別されるので、いわゆる地上世界のことですね。でもオロンホにOdun KhanとかJylga Khanとか、ましてやチンギスカンが出てくるわけが・・・
まぁここを突き出すと全部台無しになるので聞かなかったことにしましょう。スルー力(^^)/
この映画の見所は(多分他のチンギスカン映画と同じでしょうが)バトルシーンです。頭に浮かぶのは馬に乗った草原の武者達が駆け巡るシーン、なのですがなんか様子が違う。
毛皮をもさもさと着て膨れ上がったテムジンにジャムカ。なんだか暖かそう。
よくみれば草原じゃなくて一面の雪景色。
馬が蹴立てるのも雪煙だ!
そして何より馬が・・・どうみてもヤクート馬です。ありがとうございました。
ヤクート馬というのはレナ川流域に氷河期時代から暮らしている馬の末裔とも言われている連中で、「北極圏で何らの畜舎もなしに放牧でき、雪の下から自力で餌を得ることのできる背の低い馬である。」(国立民族学博物館研究報告13巻2号P379)なわけです。下北半島の寒立馬もたいがいでしたが、北極圏!世界最北の寒極を抱えるサハ共和国で生きているわけですからレベルが違います。毛足も凄く長くて寒冷地に適応していることがわかります。
このマキバオーのような馬にまたがって大の大人達が雪煙蹴立てて合戦しているわけですよ。
お腹一杯です(笑)
この他にも流氷漂うバイカル湖畔のシーンであるとか、寒いシーンには事欠きません。テムジンなんか、いきなり氷結した川のクレパスに落ちたりしますからね。
まぁ、寒いシーンばかりというわけでもないのですが、今回、撮影したのが
・サハ共和国:ヴェルホヤンスク
・ブリヤート共和国
・トゥバ共和国
・ハカス共和国
・アルタイ共和国
・モンゴル
とむやみやたらとあちこちに亘っています。
そして、俳優達も。サハ共和国陣を中心に上記に加えて
・バシキール共和国(ナイマンの王役の人は、バシキールでチンギスカン役をやってた)
とか。
東はサハから西はバシキールまでのテュルク系諸国が勢ぞろいです。おまけにモンゴルもブリヤートも、というのですからこれはもう汎アルタイ主義宣伝映画であると言っても過言ではないでしょう(笑)。
いやぁ、すごい映画です。面白いかどうかはイギリスから取り寄せても2000円とかそんなんですから一度お試しください。
おまけ:
あと、劇中ナイマン王の妻の護衛で二本差しの居合いの達人が出てきます(笑)
どうみても日本人だと思ったら日本人でした(正確には日系アメリカ人)。なんか場違い感がいなめませんが・・・
まさか大陸に渡った源義経じゃないよね(えー
どうも原作小説が一応あるっぽいので、これも入手して読んでみないと。
映像的に唐突感のある「これも作ってたんだけどカットしちゃった」みたいなのがちらほらあるのでディレクターズカット版が出ることを祈りましょう。
【関連リンク】
公式サイト
謎の二本差しの人のサイト
By the Will of Genghis Khan
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/24/07c62379730a325ac793a74fc222c3c9.jpg)
なんだよ、チンギスカンの映画なんて掃いて捨てるほどあるからもういいよ、という貴方、ここで帰ったら損ですぜ。なんたってこいつは
史上最北のチンギスカン映画
なのですから。誰だい、「お寒い映画の間違いだろ」って思った奴は。外へ出ろ。
それはさておき、この映画の製作元は東シベリアに日本の10倍近い面積を占めるサハ共和国になります。貂主の国的にはそれだけでご飯が3杯いけますね。
この手の、旧ソ連圏の共和国や自治共和国が民族意識振興のために大枚をはたいてハリウッドとか海外に映画を作ってもらう、というのは先のレッドウォーリアーでも同様ですね。こちらはカザフスタンの映画なのですが、18世紀中オルダのアブライ汗を主人公に当時強盛を誇っていたオイラト、即ちジューンガルのガルダンからカザフを守る様を描いていました。
その伝からいうとサハ共和国ならではの歴史的英雄を映画化、と行きたいところですが、あいにくとかの国には史料的なものはなく、あるといえばオロンホという英雄叙事詩だけ。さすがに知名度的にも映像化の可能性的にもつらかったのでしょう。同じアルタイ語族のジンギスカンを持ってきた、というところのようです(えー
劇中一箇所だけチンギスカンが「子供の頃に母さん(ホエルン)が話してくれたオロンホを思い出していた」と語る場面があり、これに応えてホエルンがオロンホの一節を口ずさみます。
中の世界の全ては3人の天の息子によって司られている。
Odun Khanによる逃れられぬ死と
Jylga Khanの定めた運命、
そしてチンギスカンの意思によって(By The Will of Genghis Khan)
ということで、ここでタイトルの一節が出てくるわけです。あれ?オロンホにチンギスカンなんて出てきたっけ?
「中の世界」というのは、オロンホではこの世界は「上の世界(天)」「中の世界(地上)」「下の世界(黄泉)」の3つに大別されるので、いわゆる地上世界のことですね。でもオロンホにOdun KhanとかJylga Khanとか、ましてやチンギスカンが出てくるわけが・・・
まぁここを突き出すと全部台無しになるので聞かなかったことにしましょう。スルー力(^^)/
この映画の見所は(多分他のチンギスカン映画と同じでしょうが)バトルシーンです。頭に浮かぶのは馬に乗った草原の武者達が駆け巡るシーン、なのですがなんか様子が違う。
毛皮をもさもさと着て膨れ上がったテムジンにジャムカ。なんだか暖かそう。
よくみれば草原じゃなくて一面の雪景色。
馬が蹴立てるのも雪煙だ!
そして何より馬が・・・どうみてもヤクート馬です。ありがとうございました。
ヤクート馬というのはレナ川流域に氷河期時代から暮らしている馬の末裔とも言われている連中で、「北極圏で何らの畜舎もなしに放牧でき、雪の下から自力で餌を得ることのできる背の低い馬である。」(国立民族学博物館研究報告13巻2号P379)なわけです。下北半島の寒立馬もたいがいでしたが、北極圏!世界最北の寒極を抱えるサハ共和国で生きているわけですからレベルが違います。毛足も凄く長くて寒冷地に適応していることがわかります。
このマキバオーのような馬にまたがって大の大人達が雪煙蹴立てて合戦しているわけですよ。
お腹一杯です(笑)
この他にも流氷漂うバイカル湖畔のシーンであるとか、寒いシーンには事欠きません。テムジンなんか、いきなり氷結した川のクレパスに落ちたりしますからね。
まぁ、寒いシーンばかりというわけでもないのですが、今回、撮影したのが
・サハ共和国:ヴェルホヤンスク
・ブリヤート共和国
・トゥバ共和国
・ハカス共和国
・アルタイ共和国
・モンゴル
とむやみやたらとあちこちに亘っています。
そして、俳優達も。サハ共和国陣を中心に上記に加えて
・バシキール共和国(ナイマンの王役の人は、バシキールでチンギスカン役をやってた)
とか。
東はサハから西はバシキールまでのテュルク系諸国が勢ぞろいです。おまけにモンゴルもブリヤートも、というのですからこれはもう汎アルタイ主義宣伝映画であると言っても過言ではないでしょう(笑)。
いやぁ、すごい映画です。面白いかどうかはイギリスから取り寄せても2000円とかそんなんですから一度お試しください。
おまけ:
あと、劇中ナイマン王の妻の護衛で二本差しの居合いの達人が出てきます(笑)
どうみても日本人だと思ったら日本人でした(正確には日系アメリカ人)。なんか場違い感がいなめませんが・・・
まさか大陸に渡った源義経じゃないよね(えー
どうも原作小説が一応あるっぽいので、これも入手して読んでみないと。
映像的に唐突感のある「これも作ってたんだけどカットしちゃった」みたいなのがちらほらあるのでディレクターズカット版が出ることを祈りましょう。
【関連リンク】
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謎の二本差しの人のサイト
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