ゑふでなゐ ♪ヽ(´▽`)/♪ えふでない 絵筆無い♪

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ショートショート集「みちくさ」 『虹の橋』新しいお話をアップしました!!

2020-07-28 17:15:50 | ショートショート
小説「ショートショート集 みちくさ」

新しい話の『虹の橋』アップしました!!

よろしくお願いします。



電車の通っていない場所に行く用事があり、


少し遠方だが朝早くから自動車で出かけた。


朝から雨で用事を済ませる頃、雨が止んだ。


帰り道、少し予定より早く用が済んだので、


予定では高速道路を使うつもりだったが、


のんびりと国道で帰ることにした。








少し晴れ間が見える空になっていた。


虹が出ている!


綺麗な光景だ。






思わず車を止めて眺めた。


電線が邪魔だな。


もう少し街はずれなら綺麗に見えるかな?






虹の足って見えないな…やはり。






そんなことを思いながら虹を見つめていた。




なんだろう?




何だか黒いものが虹を渡っている。






「えっ?」




中央に差し掛かる辺りに黒い影…






人影に見えるものが二つある。






目を懲らしてみるが、はっきりしない。




もう少し虹に近づくことは出来るかな?




車に飛び乗ると


虹に向かって走らせた。






段々と山間に車は入っていく。






虹に近づいていくように思った。






人影が少し大きく見える。


虹の橋をまさに歩いている。








「前にも虹に向かって走った事が、あったような気がする」










そうだ。


あれは五年ほど前だったかな。




当時仲良しだった智子と二人でドライブしていた時だった。






虹が山間にかかっているのを、


智子が見つけて、


「ねぇ、虹の足って見えるのかな?」






二人で追い掛けたっけ…








「あの時は虹までの距離が変わらなかったはず…」












でも今は確かに虹が近づいてきている。




車が走れるギリギリまできたみたいだ。


広場になっていて駐車できる。






車を降りると目の前に続く


山道を登っていった。






虹の橋は薄く透け人の姿が、はっきりと見える。






「…智子!」






虹の上に智子が立っていた。










一緒にいる白い服の人には見覚えがない。








「ねぇ、ちゃんと虹に足があったわよ!気持ちいいよ!」








智子が私に向かって叫んだ。






智子の声が山にコダマする。










私は、あっけにとられて、


ただ、虹の橋の上にいる智子を見上げていた。








私の顔を見て智子は、


にっこりと笑っていた。




ゆっくり手を振ると、


白い服の人と虹の橋を歩きだした。






「待って!智子!行かないでよ!戻ってきてよ!」






私の声に智子は振り向くと、


少し微笑みながら首を振った。


でもまた元気な声で言った。






「何十年かしたらまた会おうね。またね!」






いつもの帰りの時のように、


智子が振り返りながら言った。




二人はどんどん歩いて行ってしまった。


二人が遠ざかるごとに、


段々と虹は薄くなっていき、


薄くなっていく虹とともに智子たちの姿も消えていった。






なんで見えたのだろう。






…智子は一月半程前に亡くなったばかりだ。






何も見えなくなるまで見送った。


山道を駐車場まで降りながら、


涙が止まらなかった。






車まで戻ると、


もう一度振り返って、山の虹のあった所を眺めた。






「四十九日かな…」






虹の橋は懐かしい姿を写すって本当だったのだ。






「でも智子笑っていた。」






入院していた時は苦しそうだった。




笑って元気よく叫んだ声を思い出すと




少し気持ちが軽くなったのだった。






車をUターンさせ山道を下りて行った。








よく二人でドライブしたっけなぁ。




何十年かしたらまた会えるかな。




その時は、また一緒にドライブしようね。










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