ゑふでなゐ ♪ヽ(´▽`)/♪ えふでない 絵筆無い♪

日々は彷徨い 色々書いています。

小説 ショートショート集「みちくさ」新しいお話『岩つばめ』をアップしました!!

2020-07-30 12:05:04 | ショートショート

連続小説 ショートショート集「みちくさ」
 
新しいお話「岩つばめ」をアップしました!!
 
 

 






「岩つばめ」


また、つばめのやってくる季節になった。








普通のつばめより、ひとまわり小さい、岩つばめもやってくるだろう。






もうだいぶ昔になるが、


仕事の帰り道、


私の車を追越して前に割込みしてきた車が岩つばめを撥ねた。




何羽か、その車が走り去った後、道路脇に落ちたのを見て車を止めた。




親つばめは二羽死んでいて、


子つばめが一羽。




バタバタともがいていた。


よく見ると、片方の羽が折れていた。




けど、一生懸命道路脇に向かって行って、


ちゃんと生きていた。




まだ飛び始めで羽が柔らかかったから、もしかしたら、繋がるかもしれない。






その子つばめをその場に置いていくのが出来なくて、


死んでしまっていた親鳥は道脇に埋めて子を連れて帰った。






鳥籠は前に小鳥を飼っていたので、家にあった。




羽を楊枝を削ったものと水絆創膏で止めて固定した。




問題は餌…




野鳥の会の会長が知り合いだから電話したら飛んできてくれた。




見て一言…




「難しいぞ」




餌は虫。


バッタやコオロギの足を取って、小さくしてみたが食べなかった。


このイワツバメを保護した場所は、牛舎の傍。


きっとこの子は蝿や蚊など食べてきたかもしれない…




鳥かごは常にそばに置いた。


その日から蝿取りでスマッシュ!頑張って捕えた。


蠅だとすぐに口を開けて食べてくれた。


とにかく暇さえ出来れば、魚屋や惣菜屋の裏で虫取り…


ビニール袋に入れて、すぐに戻り餌を与えた。




すぐに素手で虫が捕まえられるようになった。




ヒナは、かなり食べる…


だから追い付かない。




親鳥の気持ちだった。




一週間必死になって取った。




相談していた会長が、ペットショップでミルワームや、


虫の練り餌を買ってきてくれた。


私たちの気持ちが通じたのか、


その日、初めて、やっと、子つばめにお腹一杯食べさせてあげることができた。




子つばめは、満足そうな顔をしているように見えた。




嬉しかった。






その明け方のことだった。


岩つばめの子が空を飛ぶ夢を見た。






私の頭上を何回も回って、


嬉しそうに空高く舞い上がって行った。






ハッとして目が覚めた。






いやな予感がして慌てて鳥籠に行くとつばめは息絶えていた。




まだ少し温かいつばめの体を撫でながら私は泣いた。






「助けてあげられなくて、ごめんね…」






そのヒナを、車を出して、


親鳥の所に連れていって、親鳥の隣に埋めた。






お世話になった会長に電話をして報告した。




「あれだけの大怪我だったし、野生の子だ。


大概一日しか生きないから、


だから、一週間も生きるなんて 


すごい事だよ…大変だったね、ありがとう」




と言われた。






私はつばめが渡り鳥だから、最低でも一年面倒見るつもりだった。




飛べるようにして空に帰してあげたかった。








その日は、いっぱい泣いてしまった。




あまり仕事にならなかった。




愛鳥会のみんなが慰めにきてくれたなぁ…






あれだけ皆で見守ったんだから、


空で親子そろって空を飛んでいるといいな。




うん、きっと思いっきり飛んでいるに違いない。



















小説 ショートショート集「みちくさ」新しいお話『お寺の石』をアップしました!!

2020-07-29 17:25:21 | ショートショート
小説 ショートショート集「みちくさ」新しいお話『お寺の石』をアップしました!!









『お寺の石』


家を出て、駅に向かう途中


いつも通り過ぎるお寺がある。




そのお寺は裏手に小高い丘を背負っている。






毎朝、お寺を掃除をしている住職さんに会った。




「おはようございます。」




私が先に声をかけることもある。




掃除の手を止めて、住職さんが挨拶を返してくれる。






「おはようございます。お気をつけて行ってらっしゃい。」




とても気持ちの良い朝にしてくれる住職さんだ。




「ありがとうございます。行ってきます。」






私ばかりではなく、お寺の前尾を通る皆に、


いつも朝に声をかけてくれる。






年配の小柄な方で、にこやかな住職さんだ。






時折、門前や、通り道の低い垣根越しで会うたびに、


挨拶や世間話を楽しくしていた。






ところが、ここしばらくのことだけれど、


その住職さんが、少し元気がないように見えた。


お顔の色が白っぽいというのか、あまり血色がよくないようだ。




私の通学路は、お寺の裏手の山のほうからきて、


お墓を過ぎて本堂があって、


門前に行く道を毎日のように歩いている。


本堂の中は見えないけれど、


それ以外のお寺の全体が見える感じなのだ。








朝見かけた時にも裏手の石に向かって、


元気のない顔をして立ち尽くしていた。




何を見ているのだろう?


住職さんの見ている山のほうを見てみた。




…はて?


あんな所にあんな大きな石があったかな?






翌日も また翌日も同じ場所に住職さんはいた。




なぜなのだろう?


どうかしたのだろうか…






ある日、帰宅途中にお寺の横を通り掛かると


「ドスン!!」


大きな鈍い音がした。






何かが倒れたようだ。




垣根越しから、その音のした方を見てみた。




見ると大きな石が倒れていた。




あの住職さんが眺めていた石だ。




お寺から住職さんが飛び出してきた。








「…あぁ…ついに…」


そう住職さんが言ったのを聞いた。






住職さんの顔色は、かなり悪かった。








声をかける間もなく、


中からやってきた人たちが住職さんを室内に連れていった。






体の具合が悪かったのか…


あんなに元気よさそうだったのに。






それになんというのか、かなり老けたように見えた…






それほど年寄りには見えなかったのになぁ…








翌朝、また通学途中に見ると、


職人さん達が倒れた石を運びだしていた。




山の一部のその大きな石が倒れた場所の穴に、


他の石の頭が見えていた。






石が倒れたあの日から一週間ほど過ぎたろうか、




その寺では盛大なお葬式がとり行われていた。






住職さん亡くなったのか…




胸が重苦しい悲しさでいっぱいになった。




檀家さんらしい人が門から数人、話ながら出てきた。








「…やっぱり手ごろな大きさになると、


ここの住職は交替になるなぁ」








…え?どういう意味だろう?




驚いた私は、その人たちは見知らぬ人だが、


何が手ごろな大きさになると、なのか聞いてみた。






「すみません、それ…どういう意味なんですか?」






すると、そのおじさん達が、


ちょっと顔を見合わせながら言った。








「もう、ずっと昔からの事なんだけれどな、




この寺の住職がやってくると、




裏山から石が、竹の子の様に生えてくる。




それが墓石に手ごろな大きさになると、




住職交替時期っていうことらしくて、




で…住職さんが亡くなって、新しい住職さんになるようなのだよ。




ちょっと不気味な話なんだけれどね。」








なんて話なんだろう…








何も言えない気分になった。









ショートショート集「みちくさ」 『虹の橋』新しいお話をアップしました!!

2020-07-28 17:15:50 | ショートショート
小説「ショートショート集 みちくさ」

新しい話の『虹の橋』アップしました!!

よろしくお願いします。



電車の通っていない場所に行く用事があり、


少し遠方だが朝早くから自動車で出かけた。


朝から雨で用事を済ませる頃、雨が止んだ。


帰り道、少し予定より早く用が済んだので、


予定では高速道路を使うつもりだったが、


のんびりと国道で帰ることにした。








少し晴れ間が見える空になっていた。


虹が出ている!


綺麗な光景だ。






思わず車を止めて眺めた。


電線が邪魔だな。


もう少し街はずれなら綺麗に見えるかな?






虹の足って見えないな…やはり。






そんなことを思いながら虹を見つめていた。




なんだろう?




何だか黒いものが虹を渡っている。






「えっ?」




中央に差し掛かる辺りに黒い影…






人影に見えるものが二つある。






目を懲らしてみるが、はっきりしない。




もう少し虹に近づくことは出来るかな?




車に飛び乗ると


虹に向かって走らせた。






段々と山間に車は入っていく。






虹に近づいていくように思った。






人影が少し大きく見える。


虹の橋をまさに歩いている。








「前にも虹に向かって走った事が、あったような気がする」










そうだ。


あれは五年ほど前だったかな。




当時仲良しだった智子と二人でドライブしていた時だった。






虹が山間にかかっているのを、


智子が見つけて、


「ねぇ、虹の足って見えるのかな?」






二人で追い掛けたっけ…








「あの時は虹までの距離が変わらなかったはず…」












でも今は確かに虹が近づいてきている。




車が走れるギリギリまできたみたいだ。


広場になっていて駐車できる。






車を降りると目の前に続く


山道を登っていった。






虹の橋は薄く透け人の姿が、はっきりと見える。






「…智子!」






虹の上に智子が立っていた。










一緒にいる白い服の人には見覚えがない。








「ねぇ、ちゃんと虹に足があったわよ!気持ちいいよ!」








智子が私に向かって叫んだ。






智子の声が山にコダマする。










私は、あっけにとられて、


ただ、虹の橋の上にいる智子を見上げていた。








私の顔を見て智子は、


にっこりと笑っていた。




ゆっくり手を振ると、


白い服の人と虹の橋を歩きだした。






「待って!智子!行かないでよ!戻ってきてよ!」






私の声に智子は振り向くと、


少し微笑みながら首を振った。


でもまた元気な声で言った。






「何十年かしたらまた会おうね。またね!」






いつもの帰りの時のように、


智子が振り返りながら言った。




二人はどんどん歩いて行ってしまった。


二人が遠ざかるごとに、


段々と虹は薄くなっていき、


薄くなっていく虹とともに智子たちの姿も消えていった。






なんで見えたのだろう。






…智子は一月半程前に亡くなったばかりだ。






何も見えなくなるまで見送った。


山道を駐車場まで降りながら、


涙が止まらなかった。






車まで戻ると、


もう一度振り返って、山の虹のあった所を眺めた。






「四十九日かな…」






虹の橋は懐かしい姿を写すって本当だったのだ。






「でも智子笑っていた。」






入院していた時は苦しそうだった。




笑って元気よく叫んだ声を思い出すと




少し気持ちが軽くなったのだった。






車をUターンさせ山道を下りて行った。








よく二人でドライブしたっけなぁ。




何十年かしたらまた会えるかな。




その時は、また一緒にドライブしようね。









ショートショート集「みちくさ」 『転校生』新しいお話をアップしました!!

2020-07-23 17:22:38 | ショートショート
アルファポリスの投稿小説  ショートショート集「みちくさ」
 
『転校生』新しいお話をアップしました!!
 
よろしくお願いします。
 




『転校生』



その転校生は、うちのクラスにやってきた。




朝のホームルームの教室に入ってきたとき、


みんな、ざわざわとざわめいたのだった。




小学生なのに、スラっとしていて、


肩までの髪の毛。


なんだか都会っぽいのか、綺麗な顔をしている。




けれど、男子なのか女子なのか判らない。


先生が自己紹介をするように、その子に言った。






「名前は田中薫です。


今日から1か月位ですが、このクラスにいることになりました。


短い期間ですが、よろしくおねがいします。」




鳴れたような感じで、ペラペラと自己紹介をすると、


先生が指さした私の隣の空いている席についた。






薫って名前は、


男女どちらにも使うし、


ジーンズだし、やはり性別不明。






担任の先生も、普通に席について、


このクラスにすでに慣れたように行動するその姿に


呆気にとられたのだろうか、


それ以上に説明することもなく、


そのまま授業に入ってしまった。






あちこちから ひそひそ話が聞こえてきた。






男女どちらにも見えるけど・・・綺麗な子だ。




「薫ちゃん、教科書違うの?私のを一緒にみる?」




国語の教科書が見たことがない教科書だったので、


話し掛けると薫ちゃんはニッコリ笑った。


その笑顔を見たら、絶対女の子だと思った。




薫ちゃんは、とても人懐っこい感じで、


あっという間にクラスの皆と打ち解けた。


美人で可愛らしくて人懐こい子だ。




なんで短い期間しかいないのか聞くと、


薫ちゃんは、サーカス団の子供なんだという。


サーカス団はあちらこちらで巡業をするので、


色々な街に行くのだという。


サーカスがやっている期間しかいないのだから、


だから短期間しか学校にこないんだと。




仲良しになる暇もなく、


次々に学校が変わっていくのだと。




「だから、日々旅にして旅を住みかとす、なんだよ」




かっこいいなぁと思った。


だから、大人っぽいんだと思った。






薫ちゃんは、授業が終わると、すぐに帰ってしまう。




あんまり早く帰ってしまうから謎だった。








ある日、母に祖父母の家に届け物のお使いを頼まれて、


祖父の家に向う途中、


広い大きな空き地があったのだけれど、


そこに巨大なテントがあった。






サーカスのテントだった。




バイクのうるさい音が中から響いていた。




ちょっと のぞいてみた。








本物の象と天井から下がっているブランコ






あと、大きな鳥かごみたいな中でバイクが三台走り回っていた。






くるくるくるくる・・・




目が回りそうなくらい籠の中を


3台のバイクが何回も回っている。




天も地も関係ないように。








祖父の家に行くのも忘れて見惚れていた。




やがて、バイクは練習を終わり籠から出てきた。




バイクの三人のうち小柄な一人がヘルメットを脱ぐと、




薫ちゃんが現れた。








びっくりした。




感動もした。






同じ年の子なのに 


あんなに恐いこと出来ちゃうなんて!








それから一週間ほどして、


夜に そのサーカスを見に行った。


象が大きくて可愛くて、


綺麗なお姉さんがムチを床にパシッとすると、


右に左に歩いたり立ち上がったりして凄かった。




犬とピエロが面白いコントのパントマイムをしていて、


可愛くて、大笑いした。




バイクが縦横無尽に走る出し物の時、


練習の時以上に薫ちゃんたちが凄かった!


上手だし、重力なんて感じないくらいだった。


舞台の上の薫ちゃんは格好よくて素敵だった。










夢のようなサーカスの出し物は


ゴールデンウィークの間毎日やっていたようだ。












ゴールデンウィークが終わると 




サーカスは終わってしまった。










巨大なテントも 




あっという間になくなってしまった。






隣の席にいた薫ちゃんも 




また転校していってしまった。












まるで 何事もなかったかのように。








大きな広場は元の姿に戻った。




そのうちにマンションが建ってしまった。








ただ、私は、






今でも、 




その広場があった前を通ると思い出す。








同じクラスにいた、






格好よくて素敵だった薫ちゃんを・・・















ショートショート集「不思議なお話」新しいお話の「不思議な万年筆」アップしました!!

2020-07-23 15:43:41 | ショートショート
アルファポリスの投稿小説 ショートショート集「不思議なお話」新しいお話の「不思議な万年筆」アップしました!!