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ショートショート集「みちくさ」 『転校生』新しいお話をアップしました!!

2020-07-23 17:22:38 | ショートショート
アルファポリスの投稿小説  ショートショート集「みちくさ」
 
『転校生』新しいお話をアップしました!!
 
よろしくお願いします。
 




『転校生』



その転校生は、うちのクラスにやってきた。




朝のホームルームの教室に入ってきたとき、


みんな、ざわざわとざわめいたのだった。




小学生なのに、スラっとしていて、


肩までの髪の毛。


なんだか都会っぽいのか、綺麗な顔をしている。




けれど、男子なのか女子なのか判らない。


先生が自己紹介をするように、その子に言った。






「名前は田中薫です。


今日から1か月位ですが、このクラスにいることになりました。


短い期間ですが、よろしくおねがいします。」




鳴れたような感じで、ペラペラと自己紹介をすると、


先生が指さした私の隣の空いている席についた。






薫って名前は、


男女どちらにも使うし、


ジーンズだし、やはり性別不明。






担任の先生も、普通に席について、


このクラスにすでに慣れたように行動するその姿に


呆気にとられたのだろうか、


それ以上に説明することもなく、


そのまま授業に入ってしまった。






あちこちから ひそひそ話が聞こえてきた。






男女どちらにも見えるけど・・・綺麗な子だ。




「薫ちゃん、教科書違うの?私のを一緒にみる?」




国語の教科書が見たことがない教科書だったので、


話し掛けると薫ちゃんはニッコリ笑った。


その笑顔を見たら、絶対女の子だと思った。




薫ちゃんは、とても人懐っこい感じで、


あっという間にクラスの皆と打ち解けた。


美人で可愛らしくて人懐こい子だ。




なんで短い期間しかいないのか聞くと、


薫ちゃんは、サーカス団の子供なんだという。


サーカス団はあちらこちらで巡業をするので、


色々な街に行くのだという。


サーカスがやっている期間しかいないのだから、


だから短期間しか学校にこないんだと。




仲良しになる暇もなく、


次々に学校が変わっていくのだと。




「だから、日々旅にして旅を住みかとす、なんだよ」




かっこいいなぁと思った。


だから、大人っぽいんだと思った。






薫ちゃんは、授業が終わると、すぐに帰ってしまう。




あんまり早く帰ってしまうから謎だった。








ある日、母に祖父母の家に届け物のお使いを頼まれて、


祖父の家に向う途中、


広い大きな空き地があったのだけれど、


そこに巨大なテントがあった。






サーカスのテントだった。




バイクのうるさい音が中から響いていた。




ちょっと のぞいてみた。








本物の象と天井から下がっているブランコ






あと、大きな鳥かごみたいな中でバイクが三台走り回っていた。






くるくるくるくる・・・




目が回りそうなくらい籠の中を


3台のバイクが何回も回っている。




天も地も関係ないように。








祖父の家に行くのも忘れて見惚れていた。




やがて、バイクは練習を終わり籠から出てきた。




バイクの三人のうち小柄な一人がヘルメットを脱ぐと、




薫ちゃんが現れた。








びっくりした。




感動もした。






同じ年の子なのに 


あんなに恐いこと出来ちゃうなんて!








それから一週間ほどして、


夜に そのサーカスを見に行った。


象が大きくて可愛くて、


綺麗なお姉さんがムチを床にパシッとすると、


右に左に歩いたり立ち上がったりして凄かった。




犬とピエロが面白いコントのパントマイムをしていて、


可愛くて、大笑いした。




バイクが縦横無尽に走る出し物の時、


練習の時以上に薫ちゃんたちが凄かった!


上手だし、重力なんて感じないくらいだった。


舞台の上の薫ちゃんは格好よくて素敵だった。










夢のようなサーカスの出し物は


ゴールデンウィークの間毎日やっていたようだ。












ゴールデンウィークが終わると 




サーカスは終わってしまった。










巨大なテントも 




あっという間になくなってしまった。






隣の席にいた薫ちゃんも 




また転校していってしまった。












まるで 何事もなかったかのように。








大きな広場は元の姿に戻った。




そのうちにマンションが建ってしまった。








ただ、私は、






今でも、 




その広場があった前を通ると思い出す。








同じクラスにいた、






格好よくて素敵だった薫ちゃんを・・・
















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