前に派遣社員をしていた頃、
ある派遣の現場に
他の派遣会社から来ていた女の人がいた。
いつもしっかりマスクしていて、軍手もつけていた。
真ん中が吹き抜けになっているので、
各階、各部署がよく見えるフロアだったから、
ちょっと横を見るとその人が良く見えた。
その彼女は、
自分のいるフロアで、誰かがくしゃみや咳をすると、
たたたっと走って、その場を離れ、
５分ほどして戻ってくる。
地震があると、
どんなに小さな地震だとしても、
いきなり外に走り出て行ってしまう。
揺り返しがなければ、１０分ほどして戻ってくる。
ランチタイムは周りに人がいないところで一人で食事をしている。
マスクを外すことがなく、
一口食べては、マスクを戻す。
あるとき、食堂の席がいっぱいだった時、たまたま、
私の前の席に彼女が来たことがあるので、一度聞いてみた。
マスクをずらすようにしながらサンドイッチを食べ、
マスクの下から、
パックに入ったコーヒーをストローで飲んでいる。
それをみて、私は聞いてみた。
「食べにくくないの？」
食べているサンドイッチの袋を閉めてから、彼女は答えた。
「私の周りに、１粒でもウィルスがいたら気持ち悪いじゃないですか！
それに、誰かが罹患したウィルスだと思うと、
他人の体の中にいたウィルスですよ！
気持ちが悪くて、ゾッとするじゃないですか。」
ウィルスを一粒！という人を初めて見た。
・・・病的な潔癖症みたいなものかな？
自己保全能力全開?
生きにくそうだなぁ・・・
それから、
地震があると、
彼女が今も走って外に避難しているだろうと思い、
咳やクシャミをしている人がいると、
彼女は離れた所に避難しているだろうと思う。
昨今の新型コロナウィルスの騒ぎで、
彼女は、どう生きているのか、
最近、
とても気になる。