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鼠草子(ねずみのそうし)――「お伽草子」展@サントリー美術館

2012-10-30 21:41:11 | 文学
お伽草子というのをご存じですか?
「浦島太郎」「一寸法師」などの
物語に絵をつけたものです。

「お伽草子―この国は物語にあふれている―」展@サントリー美術館

地味な内容なので
空いてるかと思ったのですが、
平日にもかかわらず、文学関係と
おぼしき方々もいらして、
(拡大鏡で変体仮名を読んでいる)
意外とたくさんの鑑賞者がいました。


絵画として面白かったのは
付喪神
都大路を練り歩く「百鬼夜行絵巻」。
異形のものが楽しそうに
生き生きとしているのです。

以前に何度か見たことがあるのですが、
サントリー美術館所蔵の
「鼠草子(ねずみのそうし)絵巻」という
16世紀に描かれた絵巻物も
展示されていました。

ねずみの権頭(ごんのかみ)の
人間の姫との悲しい恋のお話なのです。

なにぶん、絵巻物ですので、
全部を観たことはないのですが、
おもしろそうだなあと思っていました。

今回かなりの部分が観られて、
そのおもしろさに驚きました。

裃をつけたねずみの絵もユーモラスで、
まるで絵本『ぐりとぐら』のような
味わいのある絵です。

家来の名前も
「穴掘の左近尉(さこんのじょう)」
「穴惑のひょんの助」など、
思わず噴き出してしまいます。

漫画の吹き出しのように
絵の中に会話が
書き込まれているところがあって、
その大人なおもしろさ!


今度、現代語訳の絵本が会場で売られているのを
発見したので買ってみました。


権頭は清水寺で出会った姫にひとめぼれし、
首尾よく姫と祝言をあげました。


婚礼の宴会のための準備でいそがしい厨での
下女などの会話が大人な味わいなのです。


姫は夫の正体を知り、
逃げ出してしまいます。


権頭の嘆きといったら。
ただくうくうと泣き
姫の調度をながめて
姫をしのぶ歌を詠んだりします。


これが源氏物語などの
古典をふまえた立派な歌なのです。


結局、ほかのおとぎ草子と同じように
権頭は出家してしまうのですが・・。

こんな歌を詠むねずみさんだったら、
私なら気付いてもそのまま
一緒にいると思います。

姫のように罠で捕まえようなんてしません。


琴の糸の罠にかかり瀕死のねずみさん。
そんなひどい仕打ちを受けても
権頭は姫が大好きで仕方がないのです。

なんていじらしい。

とても500年前に描かれたものとは思えない
リアルな手触りがあります。

こんな物語を持っている日本ってすごいですね。
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