まずは亀井選手のケガについて。
この人のいちばんの危ぶまれる点は、やはりケガなのだ。
左太ももの軽い肉離れ。
軽い、というところで、どうにか救われる。
亀井はあの時、どういう体勢でホームに入ろうとしていたのだろうか。
録画したものがあったので、そのシーンを検証するつもりで何度もリプレイで繰り返し見てみた。
ライトからのバックホームを待つキャッチャーの黒羽根は、ホームベースよりも前に出た位置、
マウンド寄りのところでライトからの返球をキャッチした。
黒羽根がキャッチした時点で、亀井はまだホームベースより二、三歩くらい手前のところにいた。
完全に間に合わないタイミングだった。
亀井は走ってきたファウルラインの外側をそのまま真っ直ぐ走っていた。
足からスライディングしてホームに入っていけるような位置ではなかったので、
スライディングするとしたらキャッチャーのタッチを掻い潜るように、
ホームベースから少し離れたところで回り込んでスライディングし、
伸ばした左手でホームベースに触りながら滑りぬけていくというカタチが、
あのタイミングでは理想的だろうか。
ボールを捕球したキャッチャーの黒羽根は背中越しに走ってくる亀井に対し、
左側に振り向きながらミットを伸ばしてタッチに来るか、
あるいは捕球した勢いでそのまま左側から振り向きざまに身体ごとタッチに来るか。
亀井にとって不利な状況であることに違いはない。
果たしてその瞬間、亀井はどういう選択でホームに近づいて行ったか。
亀井がどこまでキャッチャーの動きを予測していたかは分からないが、
少なくとも黒羽根のあの動きは予想外だったろう。
キャッチした返球が低かったからか、
あるいは捕ってから振り返っていては間に合わないと判断したのか、
左足でベースを遮るようにブロックしていた黒羽根は、
返球をキャッチした中腰の姿勢のまま後ろ向きで後転するように尻餅をつき、
そのままホームベースを遮るように仰向けに倒れこんだ。
亀井から見ると、仰向けのようにひっくり返った黒羽根に、
完全に前方を塞がれてしまったカタチだ。
黒羽根が完全に行く手を遮ってしまったため、亀井はもう避けることも、飛び越すことも、
もちろんすべることもまったく出来ず、躓く以外はなかった。
黒羽根が尻餅程度だったらギリギリ避けられたかもしれないが、
あれだけ身体ごと倒れこまれたら、もう回り込むこともできないだろう。
あの位置からホームに入っていったことを考えれば、
かなりホームベースからは離れたラインを亀井は走っていたので、
ホームベースをブロックする黒羽根の足めがけてスライディングする意思はまずなかったろう。
タイミング的には不利でも、ホームへ近づくあたりでスピードを極端に落とす様子もなかったので、
やはり少し離れたところで回り込むように滑って、
左手をホームベースに伸ばしてタッチするという選択だったのではないかと思う。
黒羽根は左足でベースをブロックしていたから、
亀井が回りこむようにスライディングしてくれば、
そのまのま低い体勢で振り向きざまにミットを伸ばすか、
あるいは振り返りながら身体でタッチいくか、
いずれにしてもなんてことなくアウトに出来たプレイで終わっていたはずだ。
仮に亀井がスライディングをかけず、
タッチを掻い潜るように身体を逃がしながら駆け抜けようとしたとしても、
まずタッチが遅れるようなタイミングではなかったので、
さらにイージーなタッチプレイに終わっていた可能性もある。
ところが黒羽根が予想外の体勢になったものだから、
亀井は何の対応も出来ぬまま、突発事故のように躓いてしまったのだ。
黒羽根に非があったわけではもちろんないし、
亀井の突入の仕方に問題があったわけでもないだろうが、
軽症とはいえ、肉離れにつながるようなプレイになってしまったわけだ。
しかもそれがまた亀井だったという事実がジャイアンツ側からすると何ともやり切れない。
あの場面、坂本だったらどうしていたか、長野だったらどうだったか、
橋本だったら、片岡だったら、阿部、村田だったらどうなっていたか、
そんなことを考えてしまう。
皆、基本的にはホームを獲りにいくことに変わりはないだろうが、
どう対処するかは、それぞれに違いがあるはずだ。
例え同じシチュエーションに陥ったとしても、
全員が亀井のようにケガを負っていたとは思えない。
能力やスピードにそれぞれ違いがあるから当たり前のことだが、
現実として、亀井はこういうケースでよくケガを招く。
ケガはつきものと言うし、ケガを恐れぬプレイも時には必要だろうが、
プレイが出来なくなってしまうほどのケガでは元も子もない。
昨日も同じことを書いた気がする。
いい流れに乗って、いいカタチを築いていた中でのここまでだっただけに、本当にやり切れない。
★
開幕当初、一度だけ先発で一軍のマウンドに上がった宮國だが、
そのとき以来というファンは宮國の投球フォームが少し変化したことに気づいただろう。
イースタンリーグでフォームを模索しながら調整を続けていた宮國の状態は、
ファームの試合中継の中で見聞きしながら情報を得ており、その近況や感想は何度か記事にもした(※)。
久しぶりに宮國の投球を見たのは6月23日のイースタンリーグ・楽天イーグルス戦に先発登板した試合だったが、
そのとき、あらたに模索中の投球フォームを目にし、やはり少し不安を覚えた。
そのときにも書いたことだが、担当のコーチと懸命に取り組んだ結果、現状で、
もっともしっくりいく投球フォームにたどり着いたのだろうから、
けっして間違っているとは思わないし、批判するつもりもない。
現在の投球フォームについて見聞きし感じたことは、そのときの記事で書いているので、
今、あらためてここでは触れないか、
ただ、一軍で投げるには、まだ時期尚早ではなかったかと感じる。
6月23日のイーグルス戦での投球内容は、
0勝3敗というそこまでのファームでの成績が頷けるような制球、
球のキレで、まだもう少し時間がかかるだろうという印象だった。
宮國の年齢とポテンシャルを考えれば、
仮に今季、一度も一軍に戻れなかったとしても、
この期間が来季以降の布石になるならば、
ここで慌てる必要などなにもない。
ただ、ファンほど余裕のない今季のチーム。
ここにきて菅野が抹消になり、さらに一軍の投手陣が手薄な状態になった。
そこにきての7月後半の宮國の成績だ。
7月は4回先発して後半の2回で好投、数字だけで言うと調子は上がって見える。
7月5日のイースタンのベイスターズ戦は4敗目の黒星がついたものの粘りのピッチング。
7回を投げ5安打1四球の2失点でゲームをつくった。
7月12日のライオンズ戦は9回を投げきったものの内容は散々。
2回に6連打を含む8本の長短打を浴びて一挙8失点。結局、14安打10失点で5敗目を喫した。
7月、3度目の登板は21日のイーグルス戦。この試合は8回1/3を4安打2失点で抑え、初勝利。
7月最後の登板となった29日のライオンズ戦でも7回3安打1失点と好投。2勝目がついた。
この後半2戦の好投が一軍昇格の決め手になったのだろう。
宮國いわく、「けっして軽く投げているわけではない」と説明するこの新フォームへの取り組みは、
先日、ファーム中継の中でも、担当の二軍コーチの発言として解説者が紹介している。
投げる瞬間までボールを持つ手に力を入れず、ボールをリリースする瞬間にボールに力を伝える。
説明の一部でそんなニュアンスのことを言っていたが、
このスタイルはひとつの術(すべ)としてよく耳にする。
もちろん他にも諸々の要点はあり、これが取り組みの中心ではない。
桑田真澄氏が以前、解説で宮國の投球フォームのクセを指摘していたことがあったが、
桑田氏以外からも宮國のクセを指摘する声は耳にしたことがある。
それと直接、今回の投球フォームの修正が関係しているかは分からない。
2年目に飛躍を見せた宮國がそのオフに、
澤村さんのような速いストレートを投げられるようになりたいとコメントしていたのをよく憶えていて、
たしかに当時の宮國のストレートに澤村のような球速が加われば、
持ち前の緩急もさらに威力を増すだろうと、聞いているだけで心躍るコメントだった。
その翌年はWBCの関係で開幕投手を務め、その後の成績は周知の通りだ。
どこに原因があって行き詰ってしまったのか、そこを探りながらの修正や改良だろう。
ただ、前述の、投げる瞬間にボールに力を伝えるという部分も含め、現在のフォームの完成度では、
どうも腕の振りが小さくなっているように見えて仕方がない。
この日解説の田淵氏も球に威力が伝わっていないとしきりに言っていたが、
あの突っ立った感じの投げ方が宮國本来の柔らかさを妨げているように見える。
先日書いたが、やはり久々に見た江柄子も投球フォームが少し変化していて、
宮國と同じような突っ立った感じになっている。
踏み出す左足の幅が極端に狭いと、江柄子のフォームを見た解説者がコメントしていたが、
そうすることでコントロールの精度が増すのか、
ちょっと判らないのでもう少し詳しく調べてみたいと思うが、
ただ江柄子にしても宮國にしても、共通してボールが高めに浮く頻度が増しているように感じる。
江柄子に関しては、その時の解説者もそう指摘していて、すべてが高めに浮くわけではないが、
この投げ方だと全体的にボールは高めに浮きがちになると説明していた。
宮國のコメントによると、現在は、
左足を上げた際の上半身のひねりを最小限にとどめた1年目のシンプルな投球フォームへ戻しているらしい。
そういった試行錯誤の繰り返しが現状に繫がっているのだろう。
プロの、その中でも一定のレベルにまで達している選手らの苦悩である。
昨シーズン、開幕からさっぱりだった村田修一が、7月、8月に続けて4割レベルの打率を上げるなど、
とくにトップクラスの選手になるとほんの少しの調整で理想のカタチを掴んだりする。
ただそれを維持する力というのは、また違った能力のようだ。
宮國の今回の登板でハッキリ判ったことは、まだ宮國が理想のカタチを掴みきれていないということ。
宮國の苦悩はまだまだ続きそうだ。
そしてファンは、きっと理想のカタチを掴んでくれるだろうと信じて、見守り続けるのです。
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