ジャイアンツにとって、宮國椋丞という存在は、非常に大きな意味を持つ。
ここ十数年、高卒投手の大器といいえる存在がジャイアンツにはいない。
高卒投手でエースを嘱望される存在には、若いがゆえの、なにか華のような、
大卒や社会人からの投手にはない期待値の高さがある。
ひと昔前のジャイアンツで言えば、槙原、斉藤、桑田。
とくに桑田のように甲子園からその名を轟かせていたような存在は貴重だ。
球界全体で、ここ十数年でそういった存在を見渡すと、松坂、ダルビッシュが代表格だろうか。
楽天の田中将大もそうだろう。
日ハムの斉藤佑樹が田中と死闘を繰り広げた甲子園での優勝をぶら下げて、
もしそのままプロ野球界に入っていたならそれはかなりのインパクトであったろう。
実際、斉藤佑樹はあの時プロに入っていたほうが技術的にはよかったのかもしれない。
斉藤が今の状態からレベルアップするには相当な覚悟と、肉体的、精神的変化が必要かもしれない。
斉藤については後日、ふれたいと思う。
高卒で1年目からローテーションに入り、エース級の活躍をするなんていうのは近年では松坂くらいだろうか。
ダルビッシュでも1年目は5勝5敗、防御率3.53と高卒新人投手としてはまあまあの出来だ。
新人賞に輝いた田中将大の1年目で11勝7敗、防御率3.82はりっぱな成績といえる。
ちなみに2年目の田中の勝敗は1年目を下回っていて、ダルビッシュは勝ち星も防御率も1年目を上回っている。
そのさらに上を行ったのが松坂大輔だ。
彼の1年目、16勝はリーグ最多、防御率も2.60と2点台は別格だ。
桑田真澄も1年目こそ2勝1敗と目立った活躍はなかったが、
2年目に15勝を上げ、2.17の最優秀防御率を残している。
ジャイアンツにおけるここ10年ほどの高卒投手で、
入団前から比較的注目されていたドラフト上位指名選手を見てみると、
2001年1位の真田裕貴(姫路工高)、2位の鴨志田貴司(水戸短大付高)、
2003年2位の西村健太朗(広陵高)、2005年高校生ドラフト1位の辻内崇伸(大阪桐蔭高)、
2010年2位の宮國椋丞(糸満高)、2011年1位の松本竜也(英明高)あたりが該当するであろうか。
2001年の林昌範(市立船橋高)、2004年の東野峻(鉾田一高)は、
共に7位指名の選手だが比較的早い時期に頭角を現し一軍に定着した。
ただいずれも安定した成績をキープするまでには至らなかった。
先の上位指名選手を見てみてもわかるように、
ここ10年の間で注目された高校生投手をあまり指名出来ていなかったのがわかる。
ただ、2001年は日南学園高の寺原隼人(福岡ダイエー)を、
2007年は仙台育英高の佐藤由規(ヤクルト)をともに1位指名するも抽選で外している。
獲得した上位指名選手の中で、1軍に定着して現在も活躍しているのは西村健太朗ぐらい。
宮國は実質1年の働きであり、松本竜也は1年目を終えたばかり、ともにこれからだ。
執筆人が以前からかなり期待している西村健太朗だが、
彼も昨年のストッパーでようやく安定した仕事場を得た感はあるが、
実力からすれば必ずしも満足のいく結果を残したとまではいえないように思う。
先発ローテーションの一角を担えるだけの球は持っている。
早い時期から頭角を現し、そのままエース級の存在にまで昇りつめた高卒投手には、
大卒、社会人からの選手と比べて華がある。
甲子園という手土産があればその華はさらに大きい。
若さや幼さを残しているぶん、成長してゆく過程も込みで期待値が高い。
松坂、ダルビッシュ、田中将大がその例だ。
広島の前田健太は今や押しも押されぬカープのエースになった。
同じくカープの今村猛は清峰高校を優勝に導いた立役者。
1年毎に確実に力をつけており、大ストッパーに成長する可能性大だ。
その今村の清峰に決勝で敗れた花巻東の菊池雄星も確実に出てくると太鼓判を押したい。
千葉ロッテの唐川も期待通りの活躍でまだまだ飛躍する可能性に満ちている。
ジャイアンツがドラフトで1位指名を外した仙台育英高の佐藤由規も日本人最速となる161キロを投げ、
故障があければ間違いなくスワローズのエース候補だ。
昨年、8勝1敗防御率1.07でパリーグ新人賞に輝いたソフトバンクの武田翔太、
楽天の釜田佳直も7勝4敗と今季に期待が持てる。
釜田とともに甲子園を沸かせた阪神の歳内宏明も、
1年目の昨シーズンは後半の1試合のみの登板で終わったが期待のもてる内容を残した。
そして今季、タイガースには藤浪、ファイターズには大谷が入団した。
よく高卒選手はじっくり育ててからといわれるが、こう見てみると、
とくに投手の場合、1、2年をメドに1軍で実績を積ませることが重要で、せいぜい3年目、
4年目くらいまでに結果を残せなければエースとしての期待値もプロとしての存在価値も低くなる可能性が高い。
4年目を過ぎると大卒、社会人の新人と年齢も変わらなくなってくるからやはりそこまでに何らかの成績を残したい。
甲子園への出場がない高卒の新人投手ならなおの事、早いデビューと活躍に越したことはない。
今年が3年目の宮國。2年目の昨シーズンは6勝2敗、防御率1.86とキッカケはつかんでいる。
甲子園出場こそなかったが、ジャイアンツにあっては久しぶりの高卒大型投手であることに間違いない。
昨シーズン後半、ケガで調整中に、宮國は速球へのこだわりを何度も口にしていた。
澤村のような速い球を身につけたいと、直球に磨きをかけることを目標に調整を続けていた。
たしかに、あの鋭い変化球を活かすにはもう少しストレートに球威が欲しい。
現在は140キロ前半から中盤が平均だろうか。
140キロ後半を目にすることもあったが、ほんのわずかの印象だ。
平均的には140キロ前後といったほうが正確か。
あのうわずえと手足の長さからすればまだまだ球速は伸びるはずだ。
もともと球にキレがあるタイプだから球速が増せばあの変化球もさらに効果を増す。
投球術の巧さは昨年1年で実証済みだ。逆にもっと投球に若さがあっていい。
速球でグイグイ押せるようような力強さが加われば、今のジャイアンツ3本柱をしのぐ存在になりかねない。
先日、原監督が宮國に対しこんなコメントをしている。
「内海、杉内、澤村に負けないと思えるだけの位置付けにはきている。
逆に(本人に)そう思って戦ってもらいたい」。
原監督がスター候補と位置づける宮國に求めるものは高い。
「先発3本柱を超える活躍を期待している。
まだまだ伸びる要素をたくさん持っている」。
彼が巨人のエースに成長することをファンも願っている。
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