【時事(爺)放論】岳道茶房

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4/3 産経妙

2010年04月03日 | コラム
4/3 産経妙

 「因幡の白ウサギ」が来春から小学校の国語教科書に登場するという。古事記に出てくる神話である。サメをだましたばかりに丸裸にされたウサギが通りがかった神々にもいじめられる。だが最後に現れた大国主(おおくにぬしの)神に治療法を教えられて助かる。

 ちょっと年配の人なら「海幸彦・山幸彦」などと並び、誰でも覚えている神話だ。しかし若い世代には案外知らない人も多いらしい。戦後、神話が「大和政権の支配を正当化するもの」などとして教育界から排除され、教科書にもほとんど載らなかったからである。

 例えば「因幡の白ウサギ」の大国主神は、治めていた地上の国である出雲を天上の神々の求めに応じて譲る。この「国譲り」神話は、天孫民族を自任する大和王権が出雲王権を武力征服した史実に基づき都合よく作られた。それが古代史の中では主流の考えだった。

 だがこうした読み方には批判も多い。萩野貞樹元産能大教授の著書『歪められた日本神話』は、吉田敦彦氏の研究に基づき、天上の神と地上の神とが抗争し和解するという神話は北欧やローマなどにも多いとする。それらがみな日本の歴史の反映とは考えられないのだ。

 そんなことより、萩野氏が強調したように「国譲り」という「物語」の壮大さを味わってみるといい。その個性的な神々に触れてみると、生み出した古代の人々の心の豊かさが感じられてくるようでもある。それこそ「神話」という世界の魅力なのだろう。

 その神話がごく一部とはいえ、ようやく教科書に復活する。すべてを支配・被支配という関係で見ようとする歪(ゆが)んだ歴史観から脱するのにも良い機会かもしれない。「因幡の白ウサギ」だけではなく、「国譲り」など読んでもらいたい神話は多い。

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