【時事(爺)放論】岳道茶房

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6/28余録

2010年06月28日 | コラム
6/28余録「旗」

 下馬評では悲観論一色だった日本チームが、ついに決勝トーナメントに進出した。サッカー・ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会は夢のような展開になった。

 最初の対カメルーン戦がよかった。1点を守り抜いた。終わってからじわじわと自信がわいてくる。さて、この試合をお隣の中国中央テレビ(CCTV)も中継していたが、日本人には気がつかない異変が起きていた。

 前半34分47秒。本田圭佑選手が初のゴールを決める少し前だった。画面は松井大輔選手とエヨング・エノー選手のつばぜりあいを追っていた。ややアップの選手の背後にスタンドの観衆も映っていた。突然、CCTVの画面は、直前のプレーのビデオ映像に切り替わった。

 実は、松井選手の背後に映っていた女性が、青い旗を取り出してカメラに向けて振り出した。青地に白い太陽を染め抜いた台湾の旗。このところ中国と台湾は経済交流が飛躍的に進んでいるが、政治的なたてまえは厳しい。中国のテレビ画面に台湾の旗が映ってはいけない。

 放送局には画面を常に監視して、不都合があれば瞬時に画面を切り替えるプロがいる。その日もボールに注意を奪われず、観客席を凝視しつづけた。だれかが胸の前に掲げた青い布。それが日本チームの応援旗ではなく、台湾の旗の一部だと即座に見抜いた。

 カメラの向きが変わると、なにごともなかったように中継が続いた。だが、一瞬の異変に気付いた視聴者がいた。インターネットで話題になり、台湾人観客のやったこととわかった。あのサッカー中継の裏側で、中国では検閲のプロと、見破りの達人が火花を散らしていたのだ。


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