【時事(爺)放論】岳道茶房

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4/17余禄

2010年04月17日 | コラム
4/17余禄「噴火で空の便混乱」

 「1783年の夏は薄気味悪いことが多く、恐ろしい事象に満たされました……太陽はまるで雲のかかった月のように黒ずんで見え、地上に錆(さ)びた茶褐色の光をそそぎましたが、上るときや沈むときは、きわ立って毒々しい血の色をしていました」

 英国の牧師ホワイトの「セルボーン博物誌」(岩波文庫)の一節だ。彼は欧州全域が何週間も奇妙な靄(もや)に閉ざされたと記している。靄は史上最大の割れ目噴火を起こしたアイスランドのラキ火山の噴出物によるものだった。

 ホワイトはそこで太陽のかげりを革命の前兆とおびえる王をうたったミルトンの詩を引いた。実際、この異常気象が招いた食糧不足はフランス革命をもたらす。また日本の天明の大飢饉(ききん)も、同じ年の浅間山噴火とともにラキ火山の噴出物の影響によるといわれている。。

 いわば地球規模で歴史をも変える火山噴火だが、そのラキ火山にも近いエイヤフィヤットラヨークトル火山の噴火が今度は世界中の空の便を大混乱に陥れているという。上空1万6000メートルに達した火山灰が欧州北西部に広がり、各国が飛行禁止措置をとったからだ。

 灰はエンジントラブルを起こす危険があるという。このため欧州域内はもちろん世界中の航空会社の欧州便の欠航が相次ぎ、日本でも途中で引き返す欧州便が出た。欧州の航空関係者からは01年の米同時多発テロの際を上回る前代未聞の混乱だとのぼやきが聞こえる。

 この先の飛行再開の見通しも、雲のかかった月のようにかすませる困った火山の噴出物である。自然の猛威を知らされた今は、噴火が世界史に痕跡を残す大事につながらぬよう祈るしかない。


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