4/10余禄「外交密約に司法が開示命令」
「14日夜、清和寮より参謀本部方面を望めば2条の火光高し。重要書類焼却中のものの如(ごと)し」。太平洋戦争終結の際の作家、玉川一郎の日記である。いわば国家規模の大々的な記録隠滅が行われたのだ。
「例えば外事防諜(ぼうちょう)思想治安等の関係文書、国力判断可能の諸資料ならびに秘密歴史等は必ずなるべく速やかに焼却するを要す」は当時の憲兵司令部本部長の命令だ。一方、憲兵が監視していた人の資料は別に隠すよう指示したのはまた将来使うつもりだったらしい。
こんな先輩をもつ日本の役所だから「秘密歴史」にまた処分命令が出されたと思われても仕方ないかもしれない。沖縄返還に伴う日米両政府の密約文書開示などを求めた訴訟で東京地裁は国に開示を命じ、仮に文書が廃棄されたなら組織的意思決定によると認定した。
裁判は元毎日新聞記者の西山太吉氏らが原告となり、すでに米国で公開されている日米秘密合意を示す文書3通の開示などをめぐり争われた。その中で国は「文書はない。メモ類は廃棄されてもおかしくない」と主張した。
だが判決はもし永久保存すべき文書が廃棄されたならば高位の者が関与したとしか考えられないと指摘した。その上で文書の所在につき十分な調査をしていない国の対応を不誠実だと指弾する。これに対して先の密約問題の調査で「文書はない」と公表した岡田克也外相はその立場を踏襲して、控訴する構えだ。
はてさて文書はどこにあるのか、どう消えたのか。もしも霞が関方面を望んで3条の火光を見た人がいたとすれば、そこで焼かれていたのは国民とその歴史に対する役人の責任感に違いない。
「14日夜、清和寮より参謀本部方面を望めば2条の火光高し。重要書類焼却中のものの如(ごと)し」。太平洋戦争終結の際の作家、玉川一郎の日記である。いわば国家規模の大々的な記録隠滅が行われたのだ。
「例えば外事防諜(ぼうちょう)思想治安等の関係文書、国力判断可能の諸資料ならびに秘密歴史等は必ずなるべく速やかに焼却するを要す」は当時の憲兵司令部本部長の命令だ。一方、憲兵が監視していた人の資料は別に隠すよう指示したのはまた将来使うつもりだったらしい。
こんな先輩をもつ日本の役所だから「秘密歴史」にまた処分命令が出されたと思われても仕方ないかもしれない。沖縄返還に伴う日米両政府の密約文書開示などを求めた訴訟で東京地裁は国に開示を命じ、仮に文書が廃棄されたなら組織的意思決定によると認定した。
裁判は元毎日新聞記者の西山太吉氏らが原告となり、すでに米国で公開されている日米秘密合意を示す文書3通の開示などをめぐり争われた。その中で国は「文書はない。メモ類は廃棄されてもおかしくない」と主張した。
だが判決はもし永久保存すべき文書が廃棄されたならば高位の者が関与したとしか考えられないと指摘した。その上で文書の所在につき十分な調査をしていない国の対応を不誠実だと指弾する。これに対して先の密約問題の調査で「文書はない」と公表した岡田克也外相はその立場を踏襲して、控訴する構えだ。
はてさて文書はどこにあるのか、どう消えたのか。もしも霞が関方面を望んで3条の火光を見た人がいたとすれば、そこで焼かれていたのは国民とその歴史に対する役人の責任感に違いない。