【時事(爺)放論】岳道茶房

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JR不採用問題 労組に甘すぎる政治決着だ

2010年04月10日 | 社説
JR不採用問題 労組に甘すぎる政治決着だ

 国鉄分割・民営化における、国鉄労働組合(国労)の組合員ら1047人のJR不採用問題で、政府・与党と公明党が解決案をまとめ、国労も受け入れると回答した。

 1987年の民営化以来、23年ぶりに解決に向かうことになったが、あまりに労組寄りの政治決着である。旧国鉄関係者はもちろん多くの国民も、強い違和感を持つのではないだろうか。

 民営化に反対し、組合員の雇用より政治色の強い運動を優先させてきた国労の対応を、政府が認めたに等しい内容だ。

 まず、和解金などとして1人当たり約2200万円を支払うことにしているが、何を根拠に、こんな高額になるのだろうか。

 JRの採用過程で組合差別があったとして、国労組合員らは、鉄道建設・運輸施設整備支援機構を相手取り、損害賠償などを求める複数の裁判を起こしている。

 だが、これまでに認められた最高の賠償額は、遅延金利分を含め1人当たり約1100万円だ。今回の政治決着の半額である。

 しかも、支援機構は組合差別はなかったと上訴している。時効で賠償請求権は消えたとする別の判決もある。政治決着は、こうした裁判の経緯を無視したものだ。

 さらに、政治決着のもう一つの柱として政府は、約200人の採用をJRに要請する。

 すでに最高裁は、JRに採用責任はないとの判断を示し、法的には決着済みの問題だ。就職先が決まらない新卒者も多い昨今、政府が組合員の採用をJRに押しつけるのは、筋違いも甚だしい。

 そもそも、これまで不採用問題が決着しなかった責任は、国労と組合員の側にある。

 国鉄当時の元の職場への復帰にこだわり、JR間の広域異動や再就職の支援も拒否してきた。これまで、自民党などの政党や旧運輸省が示した和解案にも、国労は応じてこなかった。

 民営化に協力した労組が「彼らを復職させるなら、広域異動や転職に応じた我々の仲間を、まず元の職場に帰してくれ」と主張してきた。こんな経緯も考えると、まさにゴネ得である。

 経営環境は厳しく、企業の合併や従業員の出向、希望退職募集などは珍しくはない。労組も企業の存続を優先させ、苦悩しつつ経営に協力しているのが現状だ。

 今回の解決案は、こうした労組や組合員を逆なでするものでもあることを、政府・与党と公明党はわかっているのだろうか。

2010年4月10日 読売新聞 社説


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