【時事(爺)放論】岳道茶房

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6/27有明妙

2010年06月28日 | コラム
6/27有明妙

 ワーキングプア。働かず怠けて貧しいのは当たり前だが働いているのになお貧しい。働く貧困者。格差社会が生んだ〝時代の言葉〟という感があるが、実はそんな新しい言葉ではないようだ。

 1世紀以上も前、普通に雇用され、毎日働いている人たちの中にも貧困があったという。英国の慈善家で社会学者チャールズ・ブース(1840~1916年)の「ロンドン市民の生活と労働調査」。この調査で働いているのに貧しい人たちが〝発見〟されたのである。

 1886年から99年にかけて行われた調査。チャールズ・ブースは、ロンドン市民420万人の30・7%が貧困者である-という調査結果を公表、社会を驚かせた。しかも、この30・7%の大部分が働いていないのではなく雇用されている労働者で、雇用が不安定であるか、常雇いであっても低賃金ゆえの貧困という結果報告に世間はなお驚いた(『現代の貧困』ちくま新書)。

 働いても貧しい人たち。貧困は普通に働いている市民とは無関係のところにある-というのが世間の常識だった。貧困は怠け者の証明、個人の資質と責任によるものと思われていただけに、ブースの〝ロンドン調査〟は衝撃的だった。100年以上前の、まさしく「ワーキングプア」である。

 広島市のマツダ工場で起きた殺傷事件。2年前、東京・秋葉原の歩行者天国での痛ましい無差別殺傷事件を思い起こさせる。逮捕された男は「マツダをクビになり、会社に恨みがあった」と。身勝手で卑劣な犯行は許せるものではないが、この突然の凶行が何かを社会に問いかけてはいないか。

 貧困は時として家族との関係、地域とのつながりを断ち切ってしまう。人格をもいともやすやすと打ち砕くのである。


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