【時事(爺)放論】岳道茶房

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4/3余禄

2010年04月03日 | コラム
4/3余禄「お花見の幸せ」

 「花の雨寝ずに塗ったをくやしがり」。塗った、とは婦人のお化粧のことだ。晴れ着もそろえ、腕によりをかけたお弁当も用意したのに、花見の当日のあいにくの雨をくやしがる江戸川柳である。

 桜が開花した地方も花冷えの日が続き、ようやく暖かくなったかと思えば荒れ模様の天気である。1日に気象庁がソメイヨシノの満開を発表した東京でも2日は花散らしの風雨が交通機関を混乱させた。だが天気の回復する週末は待ちに待った花見日和になりそうだ。

 「花時の雑踏、また江都の第一たり。数里の長堤、桜花弥望(びぼう)し、淡々濃々、雲暗く、雪凝る」。天保年間の「江戸繁昌記」にある隅田堤の光景だ。長い堤は見渡す限り桜で、ところにより淡く濃く、雲がたれさがったようでもあり、雪がこごったようでもあるという。

 何百人もの寺子屋の子が花びらのように喜び戯れ、御殿女中の着飾った一団が妍(けん)を競う。江戸詰の藩士らは酔いで足をふらつかせ大声で歌う。弟子を連れた儒者も、頭に花びらをのせた僧も、田舎から来た老人たちも一日の遊びで寿命を延ばす--人々も楽しそうだ。

 八代将軍吉宗が植えた隅田堤の桜は江戸時代後期には上野山を超える花の名所になった。その名残をとどめる隅田公園の桜が今年脚光を浴びるのは近くに建設中の東京スカイツリーのおかげである。タワーと桜の組み合わせが江戸っ子の初物好きの血をわかしている。

 「入り婿は花のほかには内ばかり」も江戸川柳だ。日ごろはこき使われて遊びに出られなかった入り婿も花見だけは別だったらしい。あらゆる人が春らんまんの幸せを平等に分かち合う花の下である。

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