【時事(爺)放論】岳道茶房

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6/22余録

2010年06月22日 | コラム
6/22余録「小惑星からの便り」

 「ほめたたえるって、どういう意味?」と聞く王子さまに、小惑星の見栄張り男は言う。「おれがこの星でいちばん美しく、いちばん身なりが良く、いちばん金持ちで、いちばん利口だと認めることさ」「でもこの星には君一人しかいないよ」。

 サンテグジュペリの「星の王子さま」はまず小惑星をめぐる。権威をつくろう王さまの星、見栄張りの星、酒を飲む恥ずかしさから酒をあおる飲み助の星、空の星の所有台帳作りにはげむ事業家の星--次が点灯夫の星だ。

 1分間に1回自転する小惑星329だ。1本しかない街灯に休む間もなく点火と消火を繰り返す点灯夫は、自転がもっと遅かったころの「指示」に従っているという。王子さまはこの人なら友達になってもいいと思ったが、その星は小さすぎて2人では住めなかった。

 さて、現実の小惑星25143/イトカワは自転周期約12時間、長径540メートルの落花生形だった。そこで見つかるのは、王さまのガウンの毛か、飲み助のこぼしたお酒のしずくか--そんな空想も頭をよぎる小惑星探査機「はやぶさ」のカプセルの中身への期待である。

 ただカプセルから取り出された試料容器のX線検査では直径1ミリ以上の粒子は見つからなかったという。そう聞けば残念な気もするが、もともと収集装置の不調で大きな試料の回収は無理と想定されていた。焦点は開封調査で、より微細な試料が見つかるかどうかだ。

 太陽系誕生の事情を物語るという小惑星だが、開封調査には今後数カ月を要する。そういえば「星の王子さま」もこんなふうに書いていたような気がする……「肝心なものは、目に見えない」。


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