中国貴州省とそこで暮らしている苗族トン族等の少数民族を紹介しています。

日本人には余り馴染みのない中国貴州省と、今私が一時滞在中の雲南省や大理白族自治州大理古城について

貴陽市と云う名の由来

2011年08月25日 | 貴州省

私は現在貴州省の省都の貴陽市に滞在中です。貴陽という地名について、日本人から、太陽或いは陽の光が貴重だから、貴陽という名がついたというような話を時に聞く事があります。

また、日本人が貴陽という地名は太陽が貴重だから、その名が付いたと書た文章も読んだ事があります。例えば、20数年前に貴州省の貴陽を訪れた調査団の一人が書いた文章の中にも、「陽光が貴いのでこの名がついたのですといわれる人口80万の省都貴陽の町も云々」との記述があります。(江波戸 昭 お茶の水地理第26号1985年 お茶の水女子大から出された雑誌)、今手元に、その文章がないのですが、貴州省を訪れた事のある日本人が、やはり貴陽という地名について同じような説明をしているのを読んだ記憶があります。

何故一部の日本人が貴陽市という地名は、太陽が貴重だから、この名が付いたと誤解しているのか良く分かりませんが、その原因の一つには貴陽市を訪れた人が、このような実に、いい加減な説明や人から聞いた話を鵜呑みして、貴陽市という地名は太陽が貴重だからその名が付いたなどと書いた文章が幾つかある事に関係があるようです。

云うまでも無い事ですが、この解釈は間違いです。「陽」という漢字の意味を調べると、日の当たる丘、明るい小高い岡、という意味以外にも、山の南側、川の北側(注:漢字源)という意味もあります。また、現代漢語大詞典には、陽と引くと「山的南面或水的北面」とあります。

「陽」と云う漢字は、多くは地名に用いられるとの記述もあり、たとえば衡陽、洛陽、咸陽、岳陽等の様に地名に陽という漢字が使われた場合には、その意味するところは、衡山という山の南にあるので衡陽といい、洛陽は洛河の北側にあるので、洛陽という名が付いた、同じ様に、咸陽は九嵕山の南、渭水の北にあるので咸陽という名が付いたとの説明があります。山陽地方とか山陰地方という場合も山の南側、山の北側と解説してあります。

徳陽市、綿陽市、信陽市、南陽市、瀋陽市、安陽市、益陽市等と中国には「陽」が付く地名が、実に沢山あります。これは何れも同じ様な意味から来てるとの事。同じように、貴陽市という地名も、貴山という山の南側にあることから、貴陽という名が付いたそうです。


貴州歴史筆記(範同寿著 貴州人民出版社)という本によれば、貴州図経新誌という本の中に貴陽について書かれた行には、「山之南為陽 山之北為陰、貴陽因在貴山南面、故得名貴陽」との記述があます。「貴州歴史筆記」という本は、その題が示すように貴州に関係する歴史や貴州に関する様々な事について書いてある本ですが、この本の著者である範同寿という人も同じように、「貴陽因在貴山南面、故得名貴陽」つまり「貴陽とは、貴山の南側に位置しているので貴陽という名が付いた」と説明しています。

太陽が貴重だから「貴陽」と名付けられた等と云ういい加減な説明は日本の一部にだけ通用する言説の様です。ブログ等を見ると、したり顔に、この様な間違った説明をしたブログを良く見かけますが間違いです。最近もある日本人が書いたブログに、「貴陽と云う名は太陽が貴重だから、このが付けられたのです」と丁寧にもゴシック体で、得意げに書いてあるのを見ましたが、云うまでも無い事ですが間違いです。(注:この内容は、2016年3月に大幅に編集しなおしました。)

 



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