うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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駅伝って世界一は決められるの?

2009年11月23日 | 陸上
◆第21回国際千葉駅伝(2009年11月23日 6区間42.195km ※男女混合レース)

優勝:日本      2時間05分58秒
(1区・上野裕一郎、2区・小林祐梨子、3区・竹澤健介、4区・赤羽有紀子、5区・佐藤敦之、6区・中村友梨香)
2位:日本学生選抜 2時間07分47秒
3位:ケニア       2時間08分34秒
4位:千葉選抜    2時間09分26秒
5位:米国       2時間09分42秒

〔写真は時事通信より〕

                          *  *  *  *  * 


毎年勤労感謝の日に行われている国際千葉駅伝。2年前の大会から奇数区間を男子、偶数区間を女子が走る、男女混合レースとなりました。レースは、1区で日本学生選抜の“山の神”柏原竜二(東洋大)が先頭を引っ張る展開。柏原は健闘を見せるものの、4年前のヘルシンキ世界陸上5000m銅メダリストのクレイグ・モットラム(豪州)が区間賞を獲得。上野裕一郎(ヱスビー食品)が2位に続き、柏原は5位で襷を繋ぎます。その後の展開は、完全に日本の独壇場。小林祐梨子(豊田自動織機)をはじめ、2区以降の日本のメンバーは全員が北京五輪代表選手。駅伝とは思えないほど、かなり豪華なメンバーでした。

一方、今回の外国の招待チームには、北京五輪女子マラソン金のコンスタンティナ・ディタ(ルーマニア)や銀のキャサリン・ヌデレバ、アテネ五輪男子マラソン金のステファノ・バルディニ(イタリア)やベルリン世界陸上男子マラソン金のアベル・キルイ(ケニア)ら有名選手が参加してました。しかし、今名前を挙げた選手のうち、調子の良かった選手は皆無です。というのも、ディタとヌデレバは8日前に横浜国際女子マラソンに参加してたので、体調不良なのは当たり前です。「この大会の為に来日した」と2人の事をテレビ中継で紹介してましたけど、マラソンの序でに参加したと表現した方が正しいです。他の選手も、“駅伝世界一決定戦”と銘打つほど、血眼になって調整はしてないです。要するに、この国際千葉駅伝は「有名選手を招待した顔見せ興行」に過ぎないです。


ただ、私はこういう陸上ファンを楽しませる駅伝大会は、別にあっても構わないです。日本は長距離、特にマラソンと駅伝に人気のある国だからこそ、こういう興行が成り立つと思います。問題なのは、本気でマラソンを狙う選手にまで、マラソンシーズンたけなわの時期に行われる、この駅伝大会に参加させている事です。今回の駅伝大会だけでなく、企業アマが主体の日本の陸上界は、マラソン選手にまで所属チームで駅伝を走らせている傾向があります。駅伝は、若い長距離の選手の育成やチームの底上げには少しは機能すると思います。しかし、ある程度出来上がった長距離選手の強化に役に立つとは思えないです。

日本人は、トラックだと先天的にスピードのあるアフリカ人に対抗するのは無理なので、距離が長いマラソンの方が持ち前の持久力を活かして辛うじて対抗できます。 駅伝は、決められた距離を設定したタイムで確実に次の走者に襷を運ぶ為に、安定した走りを重要視されます。ただ、駅伝のペースに慣れきってマラソンを走ると、急激なアップダウンの揺さぶりに振るい落とされ、たとえ喰らい付いても瞬発力で劣る日本人はラストスパートで完敗します。なので、マラソン選手が本業を疎かにしてまで駅伝を走らせる必要は無いと思います。


話は変わりますが、「なぜ、駅伝は五輪の正式種目に採用されてないの?」という意見を日本人はよく口にします。柔道、競輪と日本生まれの五輪種目があるのに、駅伝が採用されていないのはたしかに疑問に感じます。ただ、現実的には五輪での採用はかなり難しいと思います。まず、10000mやマラソンで上位を目指す選手が、同じ大会の駅伝部門に出場する事は体力的に不可能です。ただでさえ、五輪は真夏に開催されているので、体力の消耗が激しいです。また、駅伝は団体戦である以上、どのように出場資格を決めるのかも大変です。短距離のリレー種目の場合、五輪本番までの1年間に、参加標準記録(2レースの平均タイム)を突破したチームの中で上位16チームが選ばれます。ただ、駅伝だと、区間の距離が長いので、1年の間に何回も大会に参加は出来ないです。それに、コースによって条件がバラバラなので、記録を参考にしにくいです。

そして、総走行距離の設定も問題でしょう。短すぎると差が付かないですし、長すぎると冗長になりがちになります。あと、区間距離の設定も、仮に5~10kmぐらいだと、間違いなくトラックで無類の強さを発揮するケニアやエチオピアといったアフリカ勢の独壇場になると思います。逆に長いと、持久力に長けた日本人でも対抗できます。なので、区間距離の設定は、各国間で相当揉める事が予想されます。あと、区間距離の長さに反比例する区間数の設定も問題です。短距離ならまだしも、長距離で人数を揃えられる国はそう多くはないからです。そして、駅伝は公道を使用するので、警察が実施に難色を示す可能性もあります。それに何といっても、ランナー自身は、陸上は個人戦が基本だと認識しています。なので、仮に五輪に採用した場合、マラソンに選ばれなかった選手たちの「慰めの大会」の性格を帯びた大会になり、盛り上がるのは駅伝好きの日本だけのような気がしますね。

短距離のリレー種目と違って、五輪のような公式大会で駅伝の世界一を決めるのは、様々な条件が重なってかなり難しいと思います。やはり、駅伝は、長距離の選手にとっての余興で十分だと思います。陸上ファンも、駅伝の特性を考慮した上で、楽しむ姿勢でよいのではと思います。

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