うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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マニー・パッキャオがアジア人初の6階級制覇達成

2010年11月15日 | ボクシング
◆WBC世界S・ウェルター級タイトルマッチ王座決定戦12回戦
(2010年11月13日 @米国・テキサス州アーリントン/カウボーイズ・スタジアム)

マニー・パッキャオ(挑戦者・フィリピン) 12回判定 アントニオ・マルガリート(挑戦者・メキシコ)
※パッキャオはオスカー・デ・ラ・ホーヤに次いで史上2人目の6階級制覇を達成

〔写真はロイター〕

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実質10階級制覇を達成

WBC世界S・ウェルター級王者だったセルヒオ・マルチネス(アルゼンチン)が、今年4月17日にケリー・パブリック(米国)を判定で破ってミドル級王座も獲得。それに伴って自身が保持していたS・ウェルター級の王座を返上。空位になった同級の王座を巡って、マニー・パッキャオ(フィリピン)とアントニオ・マルガリート(メキシコ)との間で今回争われることになりました。パッキャオが勝てばオスカー・デ・ラ・ホーヤ(米国)に次いで史上2人目の6階級制覇。一方、ウェルター級で3度世界王座に戴冠したことがあるマルガリートが勝てば2階級制覇となります。

下馬評では圧倒的にパッキャオが優位でした。ただ、パッキャオは5月に行われた母国の下院選に出馬し見事初当選(実はパッキャオは3年前の前回の下院選では落選してます)。やはり多忙のせいなのか、パッキャオは3月のジョシュア・クロッティ(ガーナ)戦以来、8ヶ月も試合が遠ざかり調整の遅れも伝えられてました。しかも、生粋のウェルター級の体格のマルガリートとの身長差は11cm(パッキャオが169cm、マルガリートが180cm)、リーチの差が13cm(パッキャオが170cm、マルガリートが183cm)。当日の体重差に至っては7.7kg。両者の体格差は数字以上に一目瞭然でした。“ティファナの竜巻”と称されるマルガリートは頑強で知られるだけに、番狂わせを起こすことに淡い期待をされました。

ただ、試合は案の定、序盤からパッキャオが優勢に展開。初回から右ジャブで距離を保ち、鋭い踏み込みから矢のような左ストレートをマルガリートの顔とボディに打ち分けて主導権を掌握。リミットを4.3kgも大幅に下回る体重で臨んだパッキャオは、完全にスピードで圧倒。足も止めず、パンチを上下に散らしてマルガリートを翻弄。4回にはボディブローをみぞおちに突き刺してマルガリートの体はくの字に曲がり、更には顔がみるみる腫れ上がりました。前半の5ラウンドはパッキャオが圧倒的に優勢でした。

ところが、6回。ラウンドの終盤にパッキャオは逆にマルガリートの強烈な左ボディを喰らって腰を落とします。一気に失地回復を図りたいマルガリートは、持ち前の体力を活かしてパッキャオをロープ際に押し込み、アッパーやボディを浴びせて反撃を仕掛けてあわやの場面を作ります。だが、9回あたりからパッキャオが足を使ってヒットアンドアウェーに徹し始めてから、再び試合の主導権を取り戻します。10回には右フックのカウンターを浴びせてグラつかせ、マルガリートを滅多打ちに。11回、両目が完全に塞がったマルガリートに対し、パッキャオは主審に目配せして暗に試合を止めるような仕草をするほど、一方的な展開でした。

だが、マルガリートは試合を止められることだけは拒否。意地とプライドだけで辛うじて持ち堪え、何とか12回終了のゴングを聞きました。結局、パッキャオが、120-108、118-110、119-109のユナニマスデシジョンで大差判定で勝利し、アジア人初の6階級制覇を達成。中盤に危ない場面があったとはいえ、パッキャオの強さだけが目立った36分間でした。同時に、スピードがパワーを凌駕した格好となりました。

パッキャオは、1995年にプロデビューした時の階級は、世界初戴冠となったフライ級よりも1階級下のL・フライ級でした。その後、階級を上げたパッキャオは、まずフライ級を手始めに、3階級上げてS・バンタム級、2階級上げてS・フェザー級、1階級上げてライト級、更には2階級上げてウェルター級と、間の階級を4つも途中ですっ飛ばしながらも世界の強豪を次々と撃破して世界王座を奪取。ついにはS・ウェルター級の王座にまで辿り着きました。実に15年かけて10階級も上げて戦ってきたのです。つまり、20kg近く増量しながらも、パワーが通用しただけでなく、スピードも維持していたことになります。あらためて思うのは、パッキャオは階級性の概念を根底から覆す、常識破りの異次元の存在だと断言できますね。

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2 コメント

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無差別級王者ですか (こーじ)
2010-11-16 00:16:40
 パッキャオは ここまでくれば無差別級王者的な感じですね。
 まったくフレディ・ローチと組んでいる間は
負ける事はなさそうな気がしますよ。

 マルガリートは試合後に緊急入院したようですが、あそこまで増量しての試合とは・・・・
 前日計量のシステムを悪用しているとしか思えませんし、パワーでスピードを打ち破るという感じなのでしょうけど。

 6Rにボディブローを食ったときはヒヤッとしましたけど、それ以外は危なげない勝利でしたね。
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コメントありがとうございます (猫なべ)
2010-11-16 00:48:35
こんばんは、こーじさん

それにしても、今回の試合はよく主審がストップを掛けなかったと思いますね。
10回以降のマルガリートは完全に人間サンドバッグと化してましたから。
パッキャオが主審に目配せをしたシーンは、ウィラポンが辰吉との再戦でやっていたのを思い出します。

今のままだと、パッキャオとまともに戦える相手はメイウェザーぐらいでしょうかね?
ただ、お互いにあまり戦いたくない感じですけど・・・。
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