某書士会の無料相談会にて、「あなた達は書類を作るだけで何万円も貰えて良いですねえ」と言われた事があります。松村です。
司法書士の資格は２階建てになっていて、
１階・司法書士試験（結構難しい試験。登記・裁判所提出書類の作成ができる）
２階・簡裁代理認定考査（超簡単な試験。簡易裁判所での訴訟代理ができる）
という構造になっています。
この簡裁代理権を取得するのに、実は結構悩みました。
事務所の経営的には必要性を強く感じていたし、試験を受けさえすれば合格するのは分かっていたのですが（残念ながら私が優秀なわけではなく、試験が簡単過ぎるのです）。
司法書士が訴訟代理をする事が、弁護士代理の原則を前提とする裁判制度とかみ合わないように、訴訟制度をいたずらに複雑化させるように思えたんですね。
ただ、もともと民事訴訟法に簡易裁判所の特別代理の制度が用意されておりそれを類型化しただけだろうと自分を納得させることができたので、簡裁代理権を取得したのですが（生きるって疲れるね）。
話が逸れた。
司法書士の報酬の話でした。
弁護士さん、司法書士（簡裁）のいずれも、訴訟代理をする場合の報酬は、
「
着手金(請求額×何パーセント、又は固定額）」＋「
成功報酬（回収額の何パーセント）」
という構造になっている場合がほとんどです。
（当事務所の本日付報酬規定では着手金なしにしていますが、それはそれとして）
弁護士さんと違って、司法書士の訴訟代理の報酬の苦しいところは、
・報酬額の上限が決まっている（簡裁代理権の範囲＝１４０万円以下×何パーセント）。
・額の大小と事件の複雑さとは直接の関係がない（少額だけど手間が凄くかかるものもある）。
・少額で合わない案件を全て断っていたら、司法書士に簡裁代理権を与えられた意味がない（それなら訴訟代理人は弁護士だけで良いじゃん）。
というところですね。
例えば、金５０万円の債権回収（但し、中身がちょっと複雑）の案件を受任したとして、
・内容証明を出して、埒が明かないので
・訴状（＋証拠、証拠説明書）を出して、
・１回目の期日に出廷
・準備書面を出して
・２回目の期日に出廷
・準備書面（２）を出して
・３回目の期日に出廷（分割払いで和解成立）
勿論、間に打ち合わせをしたりしてるんですねー。
仮に、着手金５万円、成功報酬１５％とすると、報酬は
５万円＋５０万円×１５％＝１２万５千円。
打ち合わせをして、内容証明出して、訴状（証拠付き）をつくって、準備書面を２度作って、裁判所に３回行って、１２万５千円かー。切ないなー。
定型的ではない内容の少額の訴訟は、事務所の経営的に実は結構ツライです。
法廷には司法書士本人が出ないといけないので、不動産の残金決済立会と日程が被るんじゃないかとヒヤヒヤしますし。
では、報酬を値上げすれば良いか？、というとそうでもない。だって、お客さんの手元に残るお金が減るでしょう？
５０万の案件で、司法書士報酬に４０万円取られたら、お客さんからしたら何してるか分からないもんね。
では、合わない案件は断ればよいか？というとそうでもない。
だって、司法書士の代理権はもともと少額（簡裁の範囲内＝１円～１４０万円）を予定しています。
少額＝報酬安い＝断る
としていたら、「司法書士に簡裁代理権が付与されたのは何やったんや、もともと安いのは予定されていたことちゃうんか」、となってしまう（※１，２）。
簡裁代理系の値付けは中々に難しい。
（あっちを建てればこっちが立たない）
今、報酬既定の改定作業中なので、うちの報酬は幾らやネンというのはちょっと待って。
※１ だからといって、司法書士が身を削って合わないボランティア仕事ばかりを引き受けなければならないという理由はないです。勿論。
※２ 最終的には、何とか事務所を運営できるだけの報酬は戴かないとお請けできません、という所に落とし所を見つけないとしょうがないのでしょうね。私がしたいのは「良心的な商売」であって「丸っきりのボランティア活動」ではないですし（将来、年金だけで生活できるようになったら沢山ボランティア活動するので、それまで待ってて）。
それを言ったらアンタだって（－－－－ピー――）してるだけで給料貰えて最高やないケ、というようなことは勿論言いませんでした。
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石川県金沢市 司法書士・行政書士 松村義信
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