社長ノート

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産経新聞 産経抄

2014-08-29 10:33:51 | 日記
   心のささくれ

 ワンピース姿の少女が、ジャーマンシェパードの盲導犬を伴っている。東京・新橋の駅前広場の片隅にある「乙女と盲導犬の像」に気づく人が、どれほどいるだろう。
 像の台座には、「月光仮面」の原作者として知られる、故川内康範(こうはん)さんのこんな詩が、刻まれている。「街は こんなにも明るいのに どこかに翳(かげ)りがある 心のささくれ」。犯人は一体、どんな心のささくれの持ち主なのか。
 さいたま市に住む全盲の男性(61)が先月電車で出勤途中、連れていた盲導犬が、何者かに刺されていた。けがに気づいたのは、男性の仕事場の同僚である。ラブラドルレトリバーの雄で8歳の「オスカー」は、痛みをこらえて鳴き声を上げなかったようだ。
 盲導犬は、飼い主に危険を知らせる時を除き、むやみにほえないように厳しくしつけられている。それを知った上での悪質ないたずらの可能性があり、怒りの声が広がっている。
 故塩屋賢一さんによって、国内で初めての盲導犬「チャンピイ」の訓練が成功したのは、昭和32年だった。その12年後に建てられた像が契機となり、初めて盲導犬パレードや募金活動が行われたという。ベストセラーとなった『盲導犬クイールの一生』などで、その存在は広く知られるようになったはずだ。公共施設や飲食店、スーパーなどの施設に、盲導犬など補助犬の受け入れを義務付けた「身体障害者補助犬法」が平成14年に施行されてからも、今年で12年になる。
 にもかかわらず、いまだに拒絶する店が後を絶たない。それどころか、たばこの火の押しつけや落書きの被害の例さえ報告されている。警察には、一日も早く犯人を捕まえてほしい。ただ「器物損壊」という、罪の名前には納得がいかない。