社長ノート

社長が見たこと、聞いたこと、考えたこと、読んだこと、

日本経済新聞 春秋

2014-08-30 17:42:43 | 日記
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 「大統領のラストチャンス」。フランスで26日にあった内閣改造を評し、ルモンド紙がこんな見出しの社説を載せた。なんともベタな言い回しから、政権の経済政策をおおっぴらに批判した大臣の首を側近にすげ替えたオランド大統領の切羽詰まった立場が透けてくる。
 支持率は10%台、失業率も10%台、経済はゼロ成長。人気も国の行方も先が見えないなか、与党内の対立まで噴き出した末の改造劇を同紙は「有り金はたいた大ばくち」と書いている。翻ってわが国の内閣改造である。一時は安倍首相と石破自民党幹事長がすわ衝突か、と見えたのだが、どちらも大ばくちは避けてみせた。
 幹事長にとどまりたい石破氏には、だめなら無役になるという選択肢があった。かたや安保法制担当相を示して拒まれた安倍氏にも、石破氏を無役にするという選択肢があった。石破氏は「幹事長を更迭されるいわれはない」と尻をまくれたし、安倍氏は「人事権は自分にある」と大義を振りかざすことができたのである。
 そうせずに済ませたのが、ご本人方に言わせれば大人の対応であり、懐の深さなのだろう。が、その分はた目には分かりにくさが残った。来年秋の自民党総裁選に向け、二人の懐の奥の埋(うず)み火が赤く燃えさかる日が来ないとはかぎるまい。この間の顛末(てんまつ)を評して「雨降って地固まる」とするのは、ベタに過ぎて気が引ける。