社長ノート

社長が見たこと、聞いたこと、考えたこと、読んだこと、

今日の東京新聞 筆洗

2013-12-31 15:38:54 | 日記
 一九七九(昭和五十四)年、紅白歌合戦の紅組のトリは八代亜紀の「舟唄」だった。山口百恵は、「しなやかに歌って」だった。サザンは「いとしのエリー」、北島三郎は「与作」。美空ひばり、藤山一郎も、特別出演している▼アイドル、ニューミュージック、演歌に戦前歌謡までがバランス良く構成され、子どもから大人までが楽しめる。まさに歌謡曲の黄金期だった▼それに引き換えという話ではない。「舟唄」。もともと阿久悠さんが美空ひばりを想定して書いていたと平尾昌晃さんの『昭和歌謡1945~1989』に教えられた。<お酒はぬるめの燗(かん)がいい>。そう言われてみれば美空ひばりに似合う▼紅白で「舟唄」を歌うシーンが降旗康男監督の映画「駅STATION」にある。高倉健の刑事がたまたま田舎町の居酒屋に入り、おかみの倍賞千恵子と出会う。おかみはこの歌が好きなのだという▼大みそか。二人が店のカウンターで静かに紅白を見ている。大みそかは家族だんらんの日である。紅白は家族そろって見るものだった。それを孤独な人間同士が心の寒さを温め合うようにあの切ない歌を黙って聞く。名シーンだろう▼今年も暮れる。家族の季節に孤独や苦しい思いを抱えている人、家族と過ごせない人もいるだろう。慰めにもならないでしょうが良いお年を。すばらしい一年になりますように。