社長ノート

社長が見たこと、聞いたこと、考えたこと、読んだこと、

筆洗 東京新聞

2017-11-26 19:34:36 | 日記

 科学者は「頭がよくなくてはいけない」。もっともだが、その後に「同時に頭が悪くなくてはいけない」と続けば、うん?となる。そう書いているのは物理学者の寺田寅彦である(『科学者とあたま』)。
 この場合の「頭が悪い」とは「効率」や「無駄」を考えないということだろう。頭がよい人は見通しが利く分、無駄で価値のなさそうなことを試みない。頭が悪い人はそれにもがむしゃらに取り組む。結果、無駄でも、その過程で予想もしていなかった重大な宝にぶつかることがあるものだと教える。「科学者はのみ込みの悪い朴念仁(ぼくねんじん)でなければならない」。
 科学者の話ではないが、この手のニュースに触れるたび、この国に「頭のよい人」ばかりが増えていないかと心配する。なにかといえば製造業で相次ぐ品質検査をめぐる不正である。
 日産自動車、神戸製鋼などに続き、今度は三菱マテリアルグループである。
 効率向上、納期厳守、収益拡大。会社にとって「頭のよい」考え方が幅を利かせ、品質第一、厳重検査の愚直さ、バカ正直さが笑われていないか。それは製造業にとって守るべき大切な心意気や魂であるはずだ。
 国際競争の厳しさが分からないではない。が、とどのつまりは世間を騒がせる。自社製品のみならず、安心安全という日本製品全体のブランドを台無しにする。決して、頭のよい話ではなかろうに。