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「72時間ホンネテレビ」が示した3つの本質

2017-11-08 06:39:29 | 芸能・スポーツ
72時間ホンネテレビ」が示した3つの本質



2017年11月7日 12時52分

東洋経済オンライン


視聴数は結局7400万超に。元SMAP3人の奮闘が今後に大きな意味を持ちそうです

稲垣吾郎さん、草磲剛さん、香取慎吾さんがジャニーズ事務所から独立後に初共演した「72時間ホンネテレビ」(AbemaTV)が、11月5日21時の終了後もなお話題を集めています。

72時間という前代未聞の長さに加え、完全生放送。3人のSNSデビューや、オープニングの矢沢永吉さんをはじめとする豪華ゲストの出演など、これ以上ないほど挑戦に挑戦を重ねた規格外の番組でした。

彼らが番組放送中に達成した主な記録は、「総視聴数7400万超(AbemaTV最高記録)」「Twitterトレンド入り107個(世界トレンド6個を含む)」「Twitterで『森くん』が世界トレンド1位」「稲垣吾郎のブログ(アメブロ)が3日間連続総合1位」「草磲剛のユーチューブ動画再生536万回」「香取慎吾のインスタグラム・フォロワー100万人達成」。

これらの記録がすごかったのは間違いありません。しかし、それ以上に大きな功績は、彼らが教えてくれた3つの“本質”。「72時間ホンネテレビ」は、3人の奮闘する姿を通して、「個人」「芸能界」「テレビ番組」の向かうべき場所を示しました。
「カメラがあるの忘れてたね」の意味

番組スタートの11月2日21時から放送されたオープニングパーティは、いわゆるグダグダ感満載。複数の人がしゃべって聞き取れなかったり、妙な間が空いて「放送事故か?」と思わせたり、この時点では「とてもじゃないけど見ていられない」と思った人も多かったようです。

そもそも地上波で放送されるバラエティは99%が収録。たとえば1時間番組なら2~4時間撮影したものを編集でギュッと凝縮させて、「笑い」「驚き」「学び」「感動」の密度を濃くしています。それらの地上波バラエティと「72時間ホンネテレビ」を比べたら、質の差は歴然。しかし、この「しゃべっているだけ」「ふざけているだけ」「SNSをアップするだけ」という状態に視聴者は引き込まれていきました。

呼び水となったのは、「3人だけで72分トーク」。稲垣さんが「今までやってきたこと(演技や歌)は(今後も)やりたいよね」、草磲さんが「ギターを弾くようになって歌がもっと好きになった。芝居もいろんな役をやりたい」、香取さんが「(芸術家としての活動を)2人はどう思ってるの?」などとホンネで語ることでグッと引きつけました。

そこにいるのは、これまでのような事務所や番組が求めるキャラクターではなく、素顔の3人。番組放送中、彼らは何度となく「カメラあるの忘れてたね」と言い合っていましたが、ゆとりのある時間配分に加え、編集や過剰な演出がないため、「吾郎ちゃんってこんなにしゃべる人だったんだ」「剛は思っていたより、もっといい人なんだね」「ボケない慎吾も新鮮。熱い人なんだな」などと感じた人は多かったでしょう。

そんな姿こそが、現在の世の中で求められる個人の本質なのです。
すべてを楽しむナチュラルポジティブ

彼ら3人からは、ビジネス、スポーツ、政治などの各分野で突き抜けたスキルを持つ人々と同じように、「妙なプライドにとらわれることなく、目の前のことを楽しもう」というスタンスが見られました。「人々が喜びそうなことなら何でもやってみよう」「年齢や実績は関係なく100人超の出演者たちと一緒に楽しもう」「できるだけSNSを使って視聴者とつながろう」というナチュラルポジティブな姿が、視聴者には輝いて見えたのです。

歌って踊るときも、即興芝居をしていても、罰ゲームを受けているときすらも、とにかく楽しそうな笑顔であふれていました。芸能界の大先輩である堺正章さんから、「40代から先の芸能活動は絞ったほうがいいかもしれない」というアドバイスを受けたあとも、自分の気持ちに正直な彼らは、すべての企画で楽しそうだったのです。

これらの楽しげな姿は、確実に視聴者の心にリーチしていました。彼らがマクドナルドで食事しているだけのシーンで引きつけられるのは、いかにも楽しそうな姿で視聴者の笑顔を誘えるから。人々の生き方や生活が多様化・細分化する中、芸能界のみならずビジネス界、スポーツ界、政治界などのあらゆる業界で、彼らのようなナチュラルポジティブな人物像が求められているのです。

たとえばビジネス界なら、旧来の作られたアイドル像を脱ぎ捨てた彼らのように、型にハマったビジネスパーソン像を脱ぎ捨てられるか。年齢や立場の違いにとらわれることなく、一緒に仕事ができるか。SNSで多くの人々と双方向でつながれるか。何より、それらをナチュラルポジティブな感覚でやれるか。3人から学ぶことは多いのです。

正直なところ、これまでも芸能人としてのすごさはわかっていたつもりでしたが、ここまでの人間性が備わっているとは思いませんでした。今頃放送を見たテレビマンたちは間違いなく、「彼ら3人と仕事がしたい」と思っているでしょう。

2つ目は、芸能界の本質。これまで「東洋経済オンライン」へのコラムで何度も書いてきたように、芸能界とテレビ界は長年の慣習と忖度(そんたく)によって成立してきました。ほかの業界にも同じような慣習や忖度はありますが、時代の流れに沿う形で減りつつあるだけに、芸能界とテレビ界の「圧力」や「自主規制」などがより目立つ形になっているのです。

しかし、「72時間ホンネテレビ」から見えてきたのは、それらの習慣や忖度を打ち破ろうとする当事者たちの思い。番組放送前は「ジャニーズ事務所への配慮から、出演タレントがいないのではないか」「大手事務所の芸能人は難しいだろう」と言われていましたが、フタを開けてみたら多くの芸能事務所が所属タレントを送り出していたのです。

これは「いつまでも業界のしがらみにとらわれていてはいけない」という意思表示であり、実際、芸能事務所やタレント本人にとってイメージアップになっていました。3人が全身から発していた「ありのままに楽しくやろうよ」というナチュラルポジティブな姿勢がゲスト出演した芸能人たちにも乗り移り、魅力的に見えていたのです。慣習や忖度にとらわれて、3人との交流があったにもかかわらず出演しなかった芸能人とのイメージギャップは計り知れないものがありました。

「72時間ホンネテレビ」によって、「長年続けてきた慣習や忖度はイメージダウンにつながる」「自分たちの都合よりも視聴者を優先させるべき」という芸能界の本質があらためて浮き彫りになったのです。
世の人々を侮り続ける芸能事務所

ただ、皮肉だったのは、72時間の中で「最も感動した」といわれているのが、SMAP時代の盟友・森且行さんと再会したシーンだったこと。友人との再会がこれほどのサプライズとなり、感動を集めてしまったのは、ひとえに「芸能界の慣習と忖度がいかに強固なものなのか」にほかなりません。その厳然たる事実が、3人の「『森くん』という言葉で(Twitterの)世界1位を取れたことがうれしい」、森さんの「(みんなに)会いたかったもん」という言葉に集約されていました。

その瞬間、ほとんどの視聴者が、ようやく慣習や忖度から抜け出し、地に足をつけて歩き始めた3人の姿を認識したとともに、「中居正広さんと木村拓哉さんがいない」という寂しい現実を再認識したでしょう。

フィナーレの「3人だけの72曲生ライブ」でSMAPやジャニーズ事務所絡みの楽曲を含まなかったことも含めて、今回の「72時間ホンネテレビ」ではここまでが限界。3人は「72時間ホンネテレビ」のテーマに、「ありのまま」だけでなく「感謝」を掲げていたように、多くの人々に迷惑をかけてまで強行突破しようとは思わなかったのでしょう。

人気商売である芸能界において、イメージは何よりも重要なはず。しかし、すでに多くの人々が知っている芸能界の慣習や忖度をやめない事務所が多いのはなぜなのか。その理由として、「多くの芸能事務所が、世の人々を侮っているから」といわれても反論できないでしょう。

実際、今回の「72時間ホンネテレビ」を通して、再びジャニーズ事務所のスタンスに批判が集まりはじめています。また、番組に参加しなかった芸能事務所はどこなのか。世の人々はしっかり覚えていて、イメージダウンとしてとらえているのです。もしこれまでのように世の人々を侮り続けたら、芸能界のビジネススケール自体が縮小されかねません。

私が「72時間ホンネテレビ」に参加しなかった某芸能事務所のスタッフに話を聞いてみたところ、「とりあえず1回目だし、様子を見てみたようです」と話していました。「とりあえず」が世の人々を侮っている証しであり、それこそが芸能界の危機であることに気づいていないのです。
「進行がグダグダ」でも面白かった理由

3つ目は、テレビ番組の本質。あらためて「72時間ホンネテレビ」で放送された主な企画を振り返ってみましょう。

草磲さんが人気ユーチューバーたちに弟子入りして、おバカ動画を制作。3人で稲垣さんと草磲さんの母校である堀越高校へ行って、高校生たちとCMの「1本満足バーダンス」を踊る。三谷幸喜さんに芝居の作・演出をしてもらい、5分間の生芝居。山崎賢人さんと新宿歌舞伎町、山田孝之さんと原宿でゲリラ撮影。草磲さんがプロレスに参戦して、男色ディーノ選手からキスの洗礼を受ける。クックパッド社へ行き、市川海老蔵さんを交えてキャラ弁対決。SMAPが解散した昨年の大みそかに開かれた食事会の会場で、堺正章さんとホンネトーク。

亀田3兄弟、ホスト、コワモテらと深夜のガチンコ・ゲーム・バトル。多くの芸能人を集めた「早朝男だらけのインスタ映えばえ運動会」。3人でマクドナルドに行き、草磲さんがアルバイトに挑戦。浜松オートレース場へ行き、森且行さんのレース観戦と感動の再会。婚活宣言をした稲垣さんが表参道で、人生初のナンパに挑戦。“カトルド・トランプ大統領”に扮した香取さんがSP役の谷原章介さんと浅草に出没。稲垣さんがナンパに成功した女性と「まさかの結婚式」を挙げる。フィナーレとして「3人だけの72曲生ライブ」を開催。

どれも文字だけで見ると、「本当に面白いのか?」と感じるものばかりですが、大半は「面白かった」「また見たい」という高い視聴満足度を示す声が上がっていました。その理由は、ズバリ「生放送だったから」「地上波バラエティでは見られない映像だから」。

前述したように、グダグダな進行だったり、内容のないトークが続いたりした時間帯もありました。そんなときネット上では、「もし中居くんがいて仕切ってくれたら」という声も上がっていましたが、それは地上波バラエティの感覚にすぎません。確かに中居さんがいたらグダグダ感は薄まり、より見やすく、より笑いが多かったかもしれませんが、その分だけ生放送のダイナミズムは伝わりにくくなっていたでしょう。

たとえば、森さんとの対面企画では、「MCなしのトーク番組をノーカットで放送する」という地上波バラエティにはない魅力であふれていました。番組としての演出や編集がほとんどないだけに、すべての言葉や間合いがホンネ。日曜朝に放送されている「ボクらの時代」(フジテレビ系)というMCのいないトーク番組が人気を集めていますが、その何歩も先を行っていたのです。

ほかの企画も完全生放送にすることで、すべてが単なるバラエティではなく、ドキュメンタリーのようになっていました。近年、視聴者の支持を集めているのは、「家、ついて行ってイイですか?」(テレビ東京系)、「ドキュメント72時間」(NHK)、「世界の果てまでイッテQ!」「1億人の大質問!? 笑ってコラえて!」(ともに日本テレビ系)などのドキュメント要素が強い番組。現在の視聴者は、台本どおりに笑いを盛り込んだバラエティよりも、「何が起きるかわからない」「決められたやり取りや、固められたキャラがない」番組を好む傾向があるため、「72時間ホンネテレビ」がハマりやすかったのです。

質の高さや笑いの手数ではなく、出演者の生き生きとした姿を見せることがテレビ番組の原点であり本質。1960年代から1980年代の半ばあたりまでは、地上波のテレビもこれくらい進行がグダグダで、笑いの数も多くありませんでした。しかし、時代を追うごとに番組のパッケージ化が進み、「グダグダ」や「バカ」よりも、「そつのなさ」や「クレバー」を求めるように変化。「パッケージ化された番組に視聴者が飽きてしまった」という事実はユーチューバーや一発屋芸人などの人気からもうかがえます。

地上波テレビ番組のスタッフたちは、「72時間ホンネテレビ」を見て自らの技術面に自信を深めるとともに、こうした本質が欠けていることに気づかされたのではないでしょうか。
「稲垣結婚」「香取トランプ」に批判が殺到も

もう1つ、「テレビ番組の本質として、これは忘れてはいけない」と再認識させられた瞬間がありました。それは、「稲垣吾郎がナンパした女性と結婚式を挙げる」「カトルド・トランプが都内に出没する」の企画が発表されたとき。すると、しばらくの間、ネット上には「やりすぎだ」「シャレにならない」「絶対にやめるべき」などの批判が殺到し、Yahoo!ニュースのコメント欄にも、「そう思う」と同調する声が圧倒的多数を占めました。

しかし、「72時間ホンネテレビ」は、こうした声に信念を曲げることなく、思い切った企画を見事にやりきり、結果的に批判を上回る称賛を集めました。地上波のテレビマンたちは、「多少の批判にめげずにやりきることの大切さ」や「批判があがるくらいのほうが見てみたくなる」のが本質であり、自分たちがなくしてしまったものを見る思いがしたのではないでしょうか。

もし「スポンサーの力が強い地上波では無理」「ウチはコンプライアンスがうるさいから」などと逃げていたら、若年層からジワジワと浸透しはじめているネットテレビの勢いに飲み込まれてしまうでしょう。

ちなみに、フィナーレの72曲生ライブと同時刻に地上派で放送された「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)の視聴率は21.2%、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(NHK)は同11.4%を記録。これらの高視聴率番組は、「72時間ホンネテレビ」の影響をほとんど受けなかったのです。

これは、「視聴率につながるリアルタイム視聴者層と、ネットテレビの視聴者層は別である可能性が高い」ということ。ただし、テレビ局はこの結果に安穏としていられません。

この3日間、私の周りにいる40・50・60代の男女各5人(計30人)に、「『72時間ホンネテレビ』を見ましたか?」と尋ねたところ、14人が「見たいのに見方がわからなくて見られなかった」、10人が「見ようと思わなかった」、6人が「見た」と言っていました。

計30人と少ないサンプル数ではありますが、「日頃ネットでニュースやゲームを楽しみ、FacebookやLINEを使っている40・50・60代の男女ですら、まだAbemaTVの使い方はわからない」という人が約半数を占めたのです。

現状は40代以上の層にはネットテレビやテレビ画面でのネットコンテンツ視聴が浸透していないだけであり、ネットコンテンツをテレビ画面で見られる機器であるAmazon Fire TVやGoogle chromecast(クロームキャスト)などの普及が今後進んだら……何か手を打たないかぎり、さらにテレビ番組の視聴率は下がってしまうでしょう。

また、「東洋経済オンライン」などのネット媒体においても、ネットテレビの存在は脅威です。実数こそ発表されていませんが、「72時間ホンネテレビ」が放送された3日間は、「各ネット媒体のページビューやユニークブラウザなどの数値が下がった」という話を聞きました。

今後は、テレビ番組、ネットコンテンツ、電子書籍などが、ますますテレビ、パソコン、スマホの画面を奪い合う争いが激化していくでしょう。今回の「72時間ホンネテレビ」やネットテレビが、その争いに名乗りを上げたのは間違いありません。
いつか5人で“サードステップ”を

最後に話を3人に戻すと、今回は「彼らへの飢餓感と期待感が好結果につながった」という側面がありましたが、この先は不透明。しかし、真摯で謙虚、挑戦的かつ柔軟な彼らなら、ライトなファン層もつかんでいくのではないでしょうか。

企業の経営判断としても、テレビマンの判断としても、今回のポジティブな結果を生かさない手はありません。年末年始あたりに再びAbemaTVで「〇時間ホンネテレビ」が見られるのでは……いや、いきなりレギュラー番組としての発表があっても驚かないのです。

さらには、NetflixやAmazonプライム・ビデオなどの動画配信サービス、もしかしたら地上波への出演が決まるかもしれません。彼らは自らの手で、そう思わせるほどの状況に持ち込んだのです。

3人にとって現在の状況は、SMAP時代の“ファーストステップ”に続く、“セカンドステップ”。コアなファンにとって「72時間ホンネテレビ」は、皮肉にも5人での再集結がないことの証明になってしまいましたが、必ずしも悲観してはいないでしょう。

セカンドステップが成功したら……いつか5人での“サードステップ”だって。3人があえて中居正広さんや木村拓哉さん、そしてジャニーズ事務所について、ことを荒げず口をつぐんだことで、その希望がつながったのも、また事実なのです。

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