「消費税10%」で中小企業の大廃業が加速する
2018年10月19日 8時30分
日刊SPA!
― 連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗> ―
◆消費増税による景気腰折れを防ぐことができるか
「大廃業」時代の到来という言葉を聞いたことがあるだろうか。
日本は、中小企業の国だ。’14年の時点で国内の企業数は382万社を数えるが、大企業は1万1000社にすぎない。実に380万に及ぶ中小企業がこれまで地方経済を支えてきたのだが、その3分の1にあたる127万社が’25年までに廃業する恐れがあるのだ。
この「大廃業」は既に始まっていて、今年4月に公表された’18年版『中小企業白書』によれば、’09年から’14年までの5年間に39万社もの中小企業が廃業している(8月1日付日経新聞)。特に建設、製造業、卸売業、小売業、飲食サービス業での廃業が目立つ。企業数が増えているのは、医療・福祉分野ぐらいだ。
廃業の原因は、「事業に将来性がない」という判断とともに、経営者が高齢化しつつあるなかで「黒字経営だが、適切な後継者が見つからないので廃業せざるを得ない」ケースが多い。
そして、きたる127万社の「大廃業」によって、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われるといわれている。そこで政府も事業承継に関わる税負担の軽減などの対策を取っているものの、地方経済を本気で守るつもりはあるのだろうか。というのも、来年10月に予定されている消費増税が、中小企業の「大廃業」を加速させることになるからだ。
◆増税で景気悪化、地方経済も縮小へ
9月20日、日本自動車工業会の豊田章夫会長(トヨタ自動車社長)は「消費税を3%から5%に引き上げた際は国内需要が101万台ほど減り、二度とそれ以前のレベルに戻っていない」と指摘したうえで、来年の消費増税によって30万台の需要減、経済効果マイナス2兆円、9万人の雇用減に繫がる可能性があると訴えた。
増税は個人の買い控えを助長する。そして増税による個人消費の縮小と売り上げ減少のなかで、中小企業の大半がさらなる経費節減、つまり自動車の新規購入中止を余儀なくされるのだ。
買い物をするたびに“罰金”を課す消費税という制度は、個人消費を縮小させてきた。
しかも、この「消費増税→個人消費の縮小→売り上げ減少→雇用や設備投資の縮小と、中小企業の廃業増加→地方経済の衰退」という悪循環は、自民党の支持基盤を破壊しつつある。自民党のある政治家はこう嘆いた。
「地元で会合をするたびに痛感するが、これまで選挙を支えてくれた地元後援会の幹部、その多くが飲食、建設、運輸など中小企業の経営者で、廃業のため次々に後援会をやめている。来年秋、増税に踏み切ったら一気に底が抜けるかもしれない」
ちなみに丸の内のある企業から聞いたのだが、廃業予定の中小企業のなかには優秀な技術を持つ製造業もあり、M&A(合併・買収)の対象になっていて、メイド・イン・ジャパンのブランドが欲しい外資、特に中国人からの問い合わせが増えているという。
来年の統一地方選と参議院選挙を控え、中小企業の大廃業への対策と消費増税が大きな争点になるはずだ。
2018年10月19日 8時30分
日刊SPA!
― 連載「ニュースディープスロート」<文/江崎道朗> ―
◆消費増税による景気腰折れを防ぐことができるか
「大廃業」時代の到来という言葉を聞いたことがあるだろうか。
日本は、中小企業の国だ。’14年の時点で国内の企業数は382万社を数えるが、大企業は1万1000社にすぎない。実に380万に及ぶ中小企業がこれまで地方経済を支えてきたのだが、その3分の1にあたる127万社が’25年までに廃業する恐れがあるのだ。
この「大廃業」は既に始まっていて、今年4月に公表された’18年版『中小企業白書』によれば、’09年から’14年までの5年間に39万社もの中小企業が廃業している(8月1日付日経新聞)。特に建設、製造業、卸売業、小売業、飲食サービス業での廃業が目立つ。企業数が増えているのは、医療・福祉分野ぐらいだ。
廃業の原因は、「事業に将来性がない」という判断とともに、経営者が高齢化しつつあるなかで「黒字経営だが、適切な後継者が見つからないので廃業せざるを得ない」ケースが多い。
そして、きたる127万社の「大廃業」によって、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われるといわれている。そこで政府も事業承継に関わる税負担の軽減などの対策を取っているものの、地方経済を本気で守るつもりはあるのだろうか。というのも、来年10月に予定されている消費増税が、中小企業の「大廃業」を加速させることになるからだ。
◆増税で景気悪化、地方経済も縮小へ
9月20日、日本自動車工業会の豊田章夫会長(トヨタ自動車社長)は「消費税を3%から5%に引き上げた際は国内需要が101万台ほど減り、二度とそれ以前のレベルに戻っていない」と指摘したうえで、来年の消費増税によって30万台の需要減、経済効果マイナス2兆円、9万人の雇用減に繫がる可能性があると訴えた。
増税は個人の買い控えを助長する。そして増税による個人消費の縮小と売り上げ減少のなかで、中小企業の大半がさらなる経費節減、つまり自動車の新規購入中止を余儀なくされるのだ。
買い物をするたびに“罰金”を課す消費税という制度は、個人消費を縮小させてきた。
しかも、この「消費増税→個人消費の縮小→売り上げ減少→雇用や設備投資の縮小と、中小企業の廃業増加→地方経済の衰退」という悪循環は、自民党の支持基盤を破壊しつつある。自民党のある政治家はこう嘆いた。
「地元で会合をするたびに痛感するが、これまで選挙を支えてくれた地元後援会の幹部、その多くが飲食、建設、運輸など中小企業の経営者で、廃業のため次々に後援会をやめている。来年秋、増税に踏み切ったら一気に底が抜けるかもしれない」
ちなみに丸の内のある企業から聞いたのだが、廃業予定の中小企業のなかには優秀な技術を持つ製造業もあり、M&A(合併・買収)の対象になっていて、メイド・イン・ジャパンのブランドが欲しい外資、特に中国人からの問い合わせが増えているという。
来年の統一地方選と参議院選挙を控え、中小企業の大廃業への対策と消費増税が大きな争点になるはずだ。