10月12日松下幸之助一日一話(松下幸之助.COM)
経営は総合芸術
経営者の仕事は、画家などの芸術家の創造活動と軌を一にするものだと考える。一つの事業の構想を考え、計画を立てる。それに基づいて資金を求め、工場その他の施設をつくり、人を得、製品を開発し、それを生産し、人びとの用に立てる。その過程というものは、画家が絵を描くごとく、これすべて創造の連続だと言えよう。
なるほど、形だけみれば単に物をつくっていると見えるかもしれないが、その過程にはいたるところに経営者の精神が生き生きと躍動しているのである。その意味において、経営はきわめて価値の高い、いわば総合芸術ともいうべきものだと思います。
筆洗
2013年10月11日筆洗(東京新聞TOKYOWeb)
▼水俣には、深い川があるという。<苦しんだ家族を誰か助けてと泣き叫んだ涙は/幾すじも流れ/やがて魂の川が流れ始め/深い人類の川に合流し始めている>
▼水俣病に苦しむ人々の涙の川が人類の川へと流れ始めている証しだろうか。世界でやまない水銀による汚染や健康被害を防ぐための「水俣条約」が、きのう採択された
▼その報を聞きつつ、坂本直充さんの詩集『光り海』(藤原書店)を読んだ。水俣で生まれ育ち、自らも水俣病と思われる症状に苦しみながら、今は市役所で働く坂本さんを、作家の石牟礼道子さんは「胸が痛くなるくらい穏和な人」と評する。その作品から伝わってくるのは、胸が痛くなるほど真摯(しんし)な問い掛けだ
▼冒頭に引いた詩「水俣」で坂本さんは問う。<誰もが幸せを願っていた/海の恵みは生命を育んだ…誰が生命を奪ったのか/誰が母に苦しみを与えたのか…水俣で地球の痛みを感じますか/水俣で地球の悲しみを感じますか>
▼安倍晋三首相は、水俣条約を採択する会議に向けて、わが国は水銀による被害を克服したと言った。しかし、水俣病は今も多くの人を苦しめ続けている。被害の全貌すら分かっていない
▼水俣の深い川は、<希望の海へそそぎ込むまで流れ続ける>と坂本さんはうたう。水俣の痛み、悲しみから目をそらしていては、決してたどりつくことができない海だ。