風に吹かれて~撮りある記

身近な自然の撮影
詩・雑文・ペット・簡単料理レシピ等

総社神社

2019-10-18 22:07:16 | おもひで

4年生になった頃、美代子ちゃんに友達ができた。

通学路の途中にその子の家があった。

その子の家の近くまで手をつないでいき、

そこで分かれて徹は先に行った。

おかげでからかわれることは少なくなった。

徹は相変わらず落ち着きがなかった。

ある日学校から帰ってきて庭で遊んでいたら、

ギンヤンマを見つけた。

虫取り網をもってきて捕まえようとした。

あちこち追いかけるうちに

父が大事にしていたエビネランの鉢に

柄があたり台から落ちて割れてしまった。

まずいなこれ。

一昨日も不注意で割ってしまい怒られたばかりだった。

接着剤でもないとだめだな。

おじさんとこに行くかばあちゃんちに行くか

迷っているところに父が帰ってきた。

なんで今日は早いんだ。

こっそり逃げるつもりがつまずいて音を出した。

父はすぐ植木台の近くに割れた鉢を見つけた。

そして逃げてく徹を見て

追いかけた。

徹は必死だった。

おおきな神社がそばにあった。

総社神社だった。

逃げ回ると捕まると思った徹は

手頃な木に登った。

必至に登った。

小鳥の巣に卵を見つけたが今はそれどころではない、

どんどん高く登った。

大きな枝が幹から出てるところでやっと止まった。

枝に腰かけて幹にしがみついて隠れた。

走ってきた父がみえた。

しかし上を見ることなく暫くして帰って行った。

一休みしてばあちゃんちでも行こう。

そのままうたたねをしてしまった。

信次郎はばあちゃんちに電話してみた。

徹は来てるかい。

今日は来てないよ、どうしたの。

いやあいないからさ。

どこにいったんだろ。

一時間たっても帰ってこない。

さすがに心配になって外に出た。

隣の板金屋のおじさんが、どうしたんだと声をかけた。

徹が逃げちまって帰ってこないんだよ。

どこへ。

神社までは追いかけたんだけど。

ええっ、もう暗くなってきたぞ。

一緒に行くか。

二人で神社に向かった。

5分ほどで神社に着いた。

そのころ徹は目を覚ました。

ここはどこだ、寝ぼけてた。

下を見て驚いた、何でこんな高いところにいるんだろ。

暗くなってきたな、降りなくちゃ。

その時徹は気が付いた。

俺って高いところは苦手だった。

下を見たら足がすくんだ。

動けなくなっていた。

だんだん心細くなってきて徹は泣き始めた。

怖いよ、怖いよ誰か助けてよ、え-んえ-ん。

誰もいない神社に響いたのだが。

誰も応えてはくれなかった。

しかしおじさんがその声を聞きつけた。

あれ、あそこで誰か泣いてる。

あれは徹君じゃあないか。

あーそうだよ、降りられなくなったんだ。

梯子持ってくるから。

頼む、見てるから。

数分後おじさんが梯子をかけて登ってきてくれた。

徹君もう大丈夫だよ、さあ降りよう。

うんありがとう。

その時父が下にいるのが見えた。

いやだ降りない、降りたらひっぱたかれるもの。

なんでだよ。

お父さんは俺のことたたくもん。絶対降りない。

たたかれるのが嫌だから降りないといってるよ。

苦虫をかみつぶしたような顔をして父が言った。

わかった、たたいたりしないから降りてこい。

絶対?

ああそうだよ。

おじさんも言ってあげるから降りよう。

徹はおじさんにしがみついてやっと降りてきた。

父が帰るぞと手を差しのべたが、

おじさんの後ろに隠れていた。

よし徹、今日はおばさんところでご飯を食べよう、

正夫が喜ぶよ。

正夫君はおじさんの息子、まだ幼稚園だった。

そういっておばさんは徹を引っ張って

連れて行った。

おばさんは家に入るときに父に言った。

うちで預かるから明日の朝に返すから。

悪いな。

いいよいいよ。

その日は正夫君とお風呂にはいって遊んだ。

どうして逃げたんだ。

鉢を壊しちゃったんだよ。

そのぐらい謝ればよかったろうに。

一昨日も壊して怒られたばっかりだったんだ。

なんだそうだったのか。

よく登ったな、あんな高くまで。

うん夢中だった。

気が付いたら怖くなったのかい、とおばさんが言った。

うん怖かった。

仕方ないやつだな。

悪いことや間違いをしたら逃げるのではなく謝るんだよ。

ときつくおばさんに言われた。

おばさんはきりっとした人だった。

悪いことをしたら遠慮なくしかるのである。

だれの子だろうが親がいようが、

拳骨をくらわせるのだ。

正夫君にも厳しかった。

やんちゃで聞き分けのない子だったので、

いつも怒られていた。

怒鳴り声が聞こえるのである。

暫くするとチャイムがなる。

こんばんは、正夫です。

家を追い出されました、お兄ちゃん泊めてください。

リュックを背負っている。

必要なものを持たせて追い出したのだ。

台所の窓をあけてお願いと手を合わせていた。

いっしょにお風呂にはいって寝るのだった。

弟のようだった。

翌朝家に帰った。

父はもう出かけていた。

母に一つ二つ小言を言われながら

学校に向かった。

昨日どうしたの、と美代子ちゃんに聞かれた。

いやあちょっとね。

木登り名人だったんだって。

なんで降りられなくなるまで登ったのよ。

どうして知ってるんだよ。

みんな知ってるよ。

今日はたいへんだぞ。

帰ろうかと思った。

ちゃんと行くんだよ。

今日逃げたら明日が大変だよ。

しぶしぶ学校に向かった。

話はいつの間にか広まっていた。

散々からかわれた。

下校時間が待ち遠しかった。



















コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 台風19 | トップ | その後 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

おもひで」カテゴリの最新記事