まず、最初に断言しておきたい。昨日の出来事は「事態」ではなく「事件」であることだ! 各新聞社はどのように見ているのか? 今日の社説を読むと、参院特別委員会での強行採決に理が無いことを知っていて書きようが無いので、書きたくないーー各社の論説委員会の態度が明瞭になている。
書きたくない、与党を支持する書きようがないーーとの心理にあるのであろう社は2本立てで今日付けの論説を構成している。昨日の混乱の非が自公・与党にあるとする社はご覧のように1本社説で貫いている。昨日の当ブログで明らかにしたように、昨日の特別委員会強行採決は出来ることなら触れたくないのだ。まずは各社の社説を見てみよう。
新聞社説一覧 (2015/09/18)
朝日新聞
安保法案、採決強行―日本の安全に資するのか
読売新聞
東日本豪雨 不明者の氏名は開示が原則だ
安保法案可決 民主の抵抗戦術は度が過ぎる
毎日新聞
社説:安保転換を問う 参院委採決強行
日本経済新聞
参議院は何のために存在しているのか
看護師の役割を広げよう
産経新聞
【主張】警察の不祥事 襟を正し信頼を取り戻せ
【主張】安保関連法案 採決こそ議会制の根幹だ
東京新聞
「違憲」安保法制 憲法を再び国民の手に
産経主張は「採決にあたり、民主党議員らは国会の一部を占拠し、鴻池祥肇特別委員長の移動を封じようとするなど、物理的妨害を重ねた。 他の反対勢力ともども『民意に反した強行採決は許されない』などと批判しているが、まったく的外れだ。審議を経た法案を採決するのは立法府として当然だ。 国会議員やその集まりである政党は、国民の負託を受けて、法案採決を通じた政策的判断を求められる。それを否定するなら、議会制民主主義は成り立たない。」という。
●11本の法案を一括審議するのに時間は全く足りない
この混乱騒ぎだけ読むと、十分な審議を経て後でも民主党が物理的妨害工作をして、混乱させたかのようだが、事実は全く逆だ。「審議を経た法案」というが、10+1の11本の法案を一括審議するのがどだい無理であり、11本の時間をかけるべきだ。時間の問題ではないが自公の言うように100時間でも110時間でも足りない。審議し尽くされていない。
●採決動議は出されたのかどうか?速記録者にも聞こえない採決提案が採決動議と言えるのか?
さらに、現場では与党が委員長席に駆け寄って、採決に至り混乱が始まった光景だった。果たして採決動議が出たのかどうか?委員長は「私の判断」とその後言っている。これは、与党からも採決動議が出なかったことを認めるものだ。さらに採決提案が委員長から出されたのかも判然としないではないか。この白を黒と言いくるめる、とりわけ産経の社説は真逆の説明であるだけでなく、感情的ですらある語調で野党を詰っていてファシスト的体質さえ感じさせる。日本がファシズム国家になるとしたら、メディアでは産経が飛び抜けた牽引役を果たすのだろうことは間違いなさそうだ。「議会制民主主義」などとさも守護しているかのようだが、いざファシズム国家になったならどこかに忘れたように処するに違いないと思われる。
●①今国会で強行採決しなければならない理由②「国民投票による改憲」ではなく「解釈改憲」ーーを読売、日経、産経は何ら説明できない
①強行採決してでも成立させる理由がない:今国会で採決しなければならない理由について読売、日経、産経は一言も触れていない。世論が安保法制に反対する意見より、今国会で成立させようとする自公に反対する方が多い理由は、議論すればするほど与党の論拠が崩れているからなのだ。十分な議論が必要と、このままで成立してしまうことを懸念しているのだ。3社論説委員はこの点に大きな弱みがあることを知っている。だから触れられないに違いない。
②「国民投票による改憲」でなく「解釈改憲」による理由がない:私は改憲に反対だが、仮にその内容は問わないとしても「解釈改憲」というなし崩しは憲法違反だと思っている。堂々と本筋である国民の投票により決めるべきだ。「解釈改憲」ではなく「投票改憲」をすべきなのに、3社は「解釈改憲」の不正常さ、異常さに全く触れていない。
以上2点に全く触れていないのが読売、日経、産経の社説だ。日本の基本的方向、憲法に関する、しかも9条という戦後70年日本を律してきた法律の改定に関する重大この上ない条文を、3社の論説委員会は知らぬ振りを決め込んだのは論説として恥辱を自ら浴びたに等しい。日本の大衆論壇として歴史に残る売国行為であり自殺行為だ。これは「事態」ではない「事件」だ。