いまさら取り上げるまでもないーーと自民総裁選挙を考えていたが、この異常さは恐怖さえ覚えるようになったので少し書こう。ちなみに9日付けの各紙の社説を取り上げると以下の通り。
新聞社説一覧 (2015/09/09)
朝日新聞
安倍総裁再選―民意とのねじれを正せ
在外被爆者―違法状態に終止符を
読売新聞
安倍総裁再選 経済再生に最優先で取り組め
毎日新聞
社説:司法試験漏えい 公正さ保つ仕組み必要
社説:安倍総裁再選 無競争信任におごるな
日本経済新聞
向こう3年間の重みを自覚せよ
産経新聞
【主張】安倍総裁再選 日本の立て直し加速せよ 脱デフレへ「継続」では足りぬ
東京新聞
安倍首相が再選 論戦なき総裁選の憂い
以上、見出しを見ればおおよその内容が判断できる。経済に期待をかけ、ボロ(真実)が出始めた「アベノミクス」邁進を促しているのが読売、産経だ。一方、無風総裁選挙に奢るなかれと戒めているのは朝日、毎日、日経、東京だ。私が注目、恐怖を感じたのは産経報道でだ。安倍の恐怖人事には何処も触れていない。
9日付の記事全文を載せたいくらい、削りようのない記事にまとめられているが、あえて抜粋する。
●野田支持18人→10人満たずーーの激烈な潰し
「自民党の野田聖子前総務会長が総裁選出馬に必要な20人の推薦人を集められなかったのは、安倍晋三首相が無投票再選にこだわり、首相側近や党執行部が激しい切り崩し工作を行ったからだ。野田氏が一時、推薦人を18人集めたとの情報も流れたが、告示前日の7日には「10人に満たないレベルまで減った」(首相側近)という。」と切り崩しがいかに熾烈だったか伝え。「『安全保障関連法案の参院審議を考えれば、総裁選を行う余裕はない』 複数の関係者によると、首相は4日、谷垣禎一幹事長と党本部で面会した際、野田氏の出馬の動きを警戒するように強く指示した。」と「異例の党本部を訪れ」て、「強く指示」している。野田議員の支持基盤を潰す戦術に出て、「ある女性議員には、官邸関係者が議員の支持団体に働きかけ、協力を思いとどまらせた。別の議員には地元の県連幹部に推薦人を辞退するよう説得させた。」というから、念の入った締め付けだった。
●古賀誠氏潰しに血眼だった安倍と側近 12人支持→2人支持に
「首相側が特に気をもんだのが、岸田派の古賀誠名誉会長の動きだ。古賀氏は複数の同派議員に対し、野田氏の推薦人になるよう強く求めていたからだ。」「古賀氏と同派議員との2日の会合には12人が集まったが、最終的に野田氏の推薦人になることを了承したのは2衆院議員にとどまった。」と、あたかも憲兵隊を動員して政敵の動向を逐一探った東條英機を彷彿とさせる。
「首相は7日夜、岸田氏に『ありがとう』と電話。岸田氏は周辺に『こういうことを言う人でないのに』と驚きを隠さなかった。」と子細に報じている。こういうところはさすがに産経だ。
野田議員の総裁選出馬断念記者会見は野田氏の口惜しさを十二分に伝えていた。これは安倍に対するだけではなく自民党の不甲斐なさに対してのものではないか?
●改造内閣での人事は総裁選の論功行賞と粛清人事で
10月にも改造内閣が発表される段取りだ。すでに、ひな壇に座る派閥も人物も、論功行賞で決定されているだろう。つまり、人事で縛り、敵は徹底して追い落とす懲罰(見せしめ)人事をする。はっきり言うなら粛清をする。野田聖子議員がその対象になるかどうかは、世評におもねる必要から不遇処分されるかどうかはわからない。しかし古賀誠氏や野田氏を支持した人物は手酷い処遇をされるのは目に見えている。安倍粛清が安保法案を強行採決した後なされるのだ。自民党が愚かと言うより、無思考のファシストの政治巣窟色を濃厚にする。
●偏執狂じみた東條に瓜二つの粛清人事は独裁者の萌芽
戦前、東條英機首相が憲兵隊をゲシュタポのように、私兵化して使い、警察は中野正剛代議士を執拗に追い、逮捕した。しかし逮捕理由が準備できず、強引に憲兵隊の軍法会議に掛けられようと謀られて、中野は自刃してしまう事件があった。東條の報復人事は偏執狂そのものだった。石原莞爾も退役させられたし、例は他にもある。安倍が東條にダブって見える。それをおだて、「バンザイ、バンザイ」と喝采している自民党の安倍支持勢力を見ていると、胸糞悪くなるのを通り越して、恐怖すら感ずる。安倍には独裁者の萌芽が見えた。
●大手メディアは軽減税率の飴で沈黙 巨大広告企業が支持
大手メディアが主面切って論戦しない、暴かないのは、すでにご承知だろう。メディアは消費税提言税率の飴を舐めさせられて沈黙しているし、その音頭を取っている巨大広告媒体産業が裏に支えている。しかし弱点が無いわけではない。読者がおかしいぞゾーーと新聞社の読者応答室に電話を入れれば震え上がるだろうし、購読拒否・不買運動が起これば、たちどころに論調を変えるのは間違いないからだ。読者には勝てないのだ。
●健全な、リベラルな保守が駆逐されようとしている
日本は緩慢に、巧妙に、狡賢く戦時体制にすでに自民党は動員、内部統一されている。自民党政治はカネだ。私の知っている『月刊日本』(鎌倉中央図書館にも在架)は、珍しくカネに潔白なリベラルな月刊誌だが、そのような保守は今や少数派になってしまった。健全な保守が、リベラル保守が駆逐されようとしている。
●ファシスト国家化の裏には黒々とした巨額な利権・ポストかカネが動いているはずだ
政治はカネが通り相場で正しい。そして緩慢なファシスト国家化の裏にも隠されている黒々とした大きな真実があるはずだ。特にカネか利権に関して巨額が動いているはずだ。戦前もそうだった。何処にあるか? ひとつは原子力発電、もうひとつは東京五輪。さらに防衛関連で巨大なカネもしくは利権が動いているーーのではないか。ポスト・地位も利権の一種だ。いずれ巨額なカネに化ける。戦前の歴史を詳細に検討すると、多くの貴重な真実を教えてくれる。