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TPP: 交渉決裂が真相?漏洩した本文も掲載する

2015-08-01 17:23:10 | 日記

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉で、米ハワイ州マウイ島で開かれていた参加12カ国の閣僚会合は最終日の7月31日午後(日本時間8月1日午前)、「大筋合意」できずに閉幕した。焦点だった新薬のデータ保護期間と乳製品の関税の扱いをめぐって、参加国の対立が最後まで解けなかった。「新薬・乳製品で対立」と朝日新聞は報じている。次回会合は話し合われなかったと言う。「会談不合意」もニュースだが、これも重要なニュースだ。

私が見るところは「対立が問題」ではない。異見・対立は当然だ。むしろ、なぜ妥協できなかったのかーーが問題なのだ。報道を読む限り「知的財産権問題」で暗礁に乗り上げたらしい。「知的財産権問題=具体的にはジェネリック薬品問題」は米にとって譲ることは出来ない一線だとわかる。米USTRへの医薬業界のプレッシャーがよほど強いのだろう。果たしてこれはジェネリックだけの問題なのか?それとも知的財産権ではない何かが潜んでいて、交渉国の民族資本を納得させない大きな壁があるのか?それは何か? やはりISD条項か? 

もう一つ見逃せない事態を朝日は告げている。次回会合について、「フロマン氏は『集中的な協議を行うが、時期ははっきり決めていない』と述べた」としている。これは何を示しているか? 私が想像するに”交渉決裂に近い最終会合”だったのではないか? 大手メディアが報道していたように「大筋合意」とは、ほど遠い会議内容だったのではないか。さて、米USTRは態勢を再度整えて再挑戦か?それまでに何処にほころびがあったのか、点検、研究、懐柔工作するだろう。
朝日は「次の会合が8月下旬ごろに設定された場合、TPP交渉がオバマ政権下で合意できるかどうかの最後の機会になる可能性がある」と結んでいる。今回の会合での「不合意」は反TPPの決定的な勝利だ。

 

長くなったが以下、ウィキリークスで流され、前回紹介した山田正彦氏のコメントの基本になる本文を紹介する。コメントだけ(伝聞だけ)なってはいけないと思うからだ。例によって内田聖子氏Uchida@uchidashokoらの翻訳による。彼女の貢献に頭が下がる思いだ。

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 本日発表されたウィキリークスによる「国有企業」に関するリーク文書の日本語訳です。原文はこちら→ https://wikileaks.org/tpp-soe-minister/

2013 年12 月7~13 日
 国有企業問題に関する閣僚への指針
 TPP交渉参加国の大半は、商業的活動や、以下の項を含むWTOやFTAにおいて定められた現在の義務を超える独占に対する規制を支持してきている。
それは、
・国有企業及び独占企業の、商業的配慮を基にした活動をすることと、売買における非差別的な対応に合致することを確かなものにすること、
・委託された政府の権威により活動する際には協定に定められた義務に従うことを確かなものとすること、
・国有企業に政府から委任された行為を含む場合にはその権限の範囲を法廷にて供すること、
・商業行為を行う国有企業と競争相手である民間企業との間の不公正な規則、
・内外に対する説明責任、そして、
・国有企業の章の実行を監視あるいは実施するに当たっての委員会設置である、技術的諸問題が残されているがそれは交渉の場において解決されるものと信じている。国有企業に関する知財の効果的執行が知的財産権の章に移ってしまっている。
 幅広い分野で閣僚による指針あるいは判断が求められている。
・貿易相手国に対して逆効果をもたらす国有企業に対する政府支援にどう対処するのか、(物品やサ-ビス、貿易や投資などのような)幅広く適用される規律を政府が支援する場合に必要とされる例外措置あるいは他の期待での柔軟な対処とはどうあるべきか、
・国有企業の定義、政府の各レベルに適用される国有企業の規律、そして紛争解決の仕組み
1.政府の支持
すべての交渉参加国は、既に物品貿易に影響を与える補助金に関するWTOにおける義務を有している。TPP交渉参加国は、国有企業に対する政府支援について(WTOと)よく似た規則を、より幅広い状況下に広げようと検討している。例えば1)物品貿易に影響を与える政府支援、2)物品貿易・サ-ビス貿易双方において交渉参加国の領土内において国有企業と他の交渉参加国からの投資との間の競争に影響する政府支援である。しかし提案された内容は、TPP交渉参加国の利害に対して反対の影響をもたらすくらいまでに政府による国有企業への支援を制限するものでしかない。

 2.例外措置と他の柔軟性
もし政府による国有企業支援に広範な規律が含まれているなら、交渉参加国は各国に対して、規律を台無しにすることなく各国政府に適切な政策余地を与えるために、どのような例外措置や柔軟性が必要なのか決定する必要がある。例えばWTOでは物品貿易においては、補助金規律の一般免責条項は無い。TPPではどのようにサ-ビス貿易に影響を与える政府補助に対処すべきだろうか?当該国内において国有企業と隠された投資との競争に影響を与える規律に対してどのように柔軟性で対処できるだろうか?交渉参加国は、一般免責、範囲の除外、交渉参加国の特定国に対する柔軟性を提案してきた。

 3.国有企業の定義と、行政組織全ての段階の政府への適用
 隠された国有企業の定義に当たってどのような基準を設けるべきだろうか?規律の目的は?政府所有とは?支配力の行使は?効果的な支配とは何か決定するにはどんな基準を使うべきか?等々中央政府、地方政府など異なるレベルの政府において設立され委託された国有企業や独占的企業にどのように規律を適用するのか?各国は中央政府ではない範囲あるいは組み込まれたものとして関与するのか?

 4.紛争解決システムの適用
 推進派は、意味のある、強制可能な、他の章で使われている国家間の紛争解決の仕組みの重要性を強調している。参加国は、追加的対話や検証が、正式な紛争解決の手順に先駆けて必要ではないかとかあるいは紛争解決のためには他の要素も含まれるべきだはないかとの検討をしている。