幕末維新の動乱期を生きた「勝海舟」は、
維新の前後、
幕府側の最高責任者として、
江戸城を「無血開城」し、江戸の市街や市民を救ったことで知られるが、
ここに紹介するのは、
海舟の談話集「氷川清話」にある当時のエピソード。
尚、以下の文中、
「馬丁(ばてい)」は、馬の世話をしたり、口取りをしたりする者。
「居候(いそうろう)」は、
友人や知り合いなど他人の家に転がり込んで、カネも出さず世話になっている者。
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そのころ俺の感服したヤツが三人いるのだが、
それらはいづれも囚徒で、維新の際にオレが放免してやった奴らだ。
その一人は、
馬丁の家で居候をしながら強盗をやっては、
盗んだ大金をどこかへ隠し、素知らぬ顔で上方へ行く。
上方でも同じことをやって、
一年ほどもすると、江戸へ戻って来て、隠して置いた大金で散財する。
それが尽きた頃には、また盗みを働いてカネを溜める、
こんどは上方へ行って、先きに隠して置いた金を使うと云う分けだ。
しかもそのやり方が実にうまい、
表向きはちっとも金のない風をして、まめまめしく馬丁の手伝いをして居る。
その大胆と小心とには、おれも感心した。
そしてこの男、白昼登々と破獄をして、
青い囚人服を着たまま、暴れに暴れて上州まで逃げて行ったには、いよいよ驚いた。
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「上州(じょうしゅう)」は、今の群馬県。
この話、もう少し続きがあるので明日また。