漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

胴欲・土右衛門、⑩

2009年05月14日 | Weblog
きのうの続き。

濁流渦巻く大和川へ飛び込み、
中身が石とも知らず掴(つか)み取り、岸へ戻ろうとする土右衛門ですが、

上流からは藁(わら)屋根の古家が彼を目がけて流れ来る。

身勝手、胴欲の土右衛門に泣かされ続けた村人は、
同情するどころか、
この際と、罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせかけ、・・・・・
  
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皆は手を打ち、
「天罰にてあの屑家にて鼻でも打ちて土右衛門の死ぬかし」と、

「その財布は金ならず、
 石を大事に咥(くわ)えておるは、いかい痴(たわけ)と、

声々に罵(ののし)る内に、
件(くだん)の藁屋(わらや)、土右衛門が背にどうと乗る。

「そりゃこそ、今に死におろう」と、

どよめく声の聞こえてや、

土右衛門は頭を上げ、

「屑家(くずや) 背負うたつもりが担(かつ)がれたり、
  さてこそ無念、藁屋(わらや)に打たれて笑やれるとは」。


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江戸時代の大坂で、
本当にあった話のように展開しておいて、
最後は落し噺(おとしばなし)にする、と云うことが流行ったのだそうです。

これはその一例。

ただし、落ちは、
当時の芝居のセリフをもじった物ですが、今では分かりにくい。

それで、勝手に変えたのです、
これも良いとは思えないが、まぁ、仕方ない。

切に御容赦。

尚、落し噺とは何かと云うに、

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【落し話/落し噺】 おとし‐ばなし

しゃれや語呂合わせを使って、最後をおもしろく結ぶ話。
落ちのある話。
落とし話を核に筋を発展させると落語になる。

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と辞書にある。


また、きのう出て来た「我慢(がまん)」、
これもついでに、「上方語源辞典」でひいておくと、

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【我慢】
入れ墨のこと。
博徒、寄席芸人がいう。

〔語源〕
通説に入れ墨をする時の痛さを我慢する意からというは、
近代語を現代語で解くもの。

もと仏教用語で、
我(が)を よりどころとして心が驕慢(きょうまん)であること。
転じて強情。
再転して、気概、負けぬ気の強いこと。

入れ墨は任侠の徒などが、
負けぬ気の強いことをほこるためにする。

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とある。




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