安倍首相の支持率が75%だそうで、
いくらなんでもそれは「行きすぎだろう」と思うのだが、
人気と云うのはそんなものかもしれない。
その経済政策や言動が支持率を押し上げてもいるのだろうが、
一ばん大きいのは、民主党政権、「三年間のお粗末さ」だろうか。
「あれに比べれば今は」と多くの国民が思っているだろうから。
それは首相もよく承知していて、
衆議院選、大勝後も、
「決して自民党が支持されたわけではない」として、
「本当の勝負は今夏の参議院選だ」と、首相就任以来、党内を引き締めてきた。
処が、その風向きが変わってきたのは、先月ごろからだろうか。
参議院選までは、
「国論の割れるような事案には慎重姿勢」だったはずが、
三月に「TPP参加」を決め、
最近は憲法問題にもしごく積極的に発言している。
憲法問題など、
「そんなことを言えば国中が大騒ぎになる」と云う周囲の心配をよそに、
やってみると、護憲派勢力が意外に静か。
民主党は党内が割れていて、強く出られないし、
社民党や共産党では、「ああ、また反対してる」ぐらいの国民の反応でしかない。
その上に、憲法と云えばエキサイトするはすの、
朝日や毎日と云った全国紙の論調が、以前ほど歯切れが良くない。
社説にも囲み記事にも、
「憲法改正を云う者は軍国主義者」と云わんばかりに決め付けていたころの切れ味がないのである。
何年か前、これと同じようなことがあった。
北朝鮮の金正日総書記が日本人拉致を認めた時、
日本のマスコミや知識人は、それまでの親北姿勢を潜め、、
一斉に反北朝鮮のポーズをとるようになった。
五年前の第一次安部政権の時には、
真っ向から「安倍つぶし」を諮った朝日新聞も、
憲法改正に反対の基本姿勢とは云え、
今回は“奥歯にものの挟まったような”書きかたしかしていない。
これは、ひとえに尖閣列島の問題などで、
露骨な反米、親中の記事ばかりでは、読者が承知しなくなったからであろう。
つまりは、最近の中国の姿勢を見て、
非武装中立的な平和主義では不安になった国民が多いのだろうと思う。
考えてみれば戦後六十年以上、
日本は軽軍備で国際紛争にはかかわらないスタイルで押し通してきた。
つまり、「軍事的には鎖国」の姿勢をつらぬいてきたのである。
その点で、
“アメリカから押し付けられた”「平和憲法」は都合が良かった。
経済大国として、国際貢献をせまるアメリカに、
「あなた方の作った平和憲法」を盾に逡巡していればよかったからである。
しかし今、中国や北朝鮮、韓国とも軋轢が高まるにつれて、
国民の多くが「このままではだめだろうナ」と思い始めているように見える。
そう考えると、尖閣をうろつく中国船が黒船のようにも見えぬでもない。
幕末の騒乱、日露戦争、太平洋戦争、バブル崩壊、
時代は半世紀ごとに動くと誰かが言ったが、
いまようやく、
「日本が一ばん幸せだった世紀」が終わろうとしているのかもしれない。