漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

命をつなぐ

2013年12月10日 | 

だいぶ以前に読んだ推理小説で、
題はもう忘れてしまったのですが、

趣味が多彩で海外旅行もたびたびと云う
とても元気なおばあちゃんが突然消息を絶って、

中年の娘さんがあちこちと心当たりをさがすうち、
馴染みの本屋さんで、やっと手がかりをつかんだ処へ、

おばあちゃんがひょっこり帰ってくる。

このおばあちゃんはかって、
光源氏あだ名されたほどハンサムで、
頭が良くてスポーツ万能と云う息子がいたのだが、

高校三年生になったある日、
突然の交通事故、それも轢き逃げで失うと云う過去があった。

それから20年近くが過ぎたある日、

息子の遺品の中から、
当時の女教師と恋愛愛していたのではないかと思えるメモが出てくる。

そこでその女性を訪ねて東北まで行くのですが、

やっと探し当てた家の近くで、
嘗ての息子とそっくりの男子高校生とすれ違う。

それが実は息子の遺児、
つまり、おばあさんにとっては孫と分かるわけですが、

私は、この場面を読んでいて

もう自分の血を引く者は居ないと思っていたのに、
突然あらわれた確かな生命体である孫と云う奇跡・・・、

人間と云うものはいつかは死ぬわけですが、

子から孫、孫からひ孫とつながる命こそが、
この世に生きる人にとっての永遠の生命なのかもしれないな、と思った分けです。

昔、子供が出来なくて悩んでいる友人に、
「子育てだけが人生じゃなし、
 出来ないなら出来ないなりの人生もあるさ」などと言ったりした記憶があるのですが、

今から思えば無責任、
当人にとっては、そんな簡単なもんじゃなかったんだ、と大いに反省しました。

この短編を読んで、

いろいろ大変なことも多いのに、
それに耐えて、

ひたすら不妊治療に励む人の気持ちが、少しは分かったような気がしました。






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