漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

残暑の候に万葉集で遊ぶ 「さし焼かむ」

2015年08月30日 | ものがたり

ああ、腹が立つ、むかむかする、
なんでウチがこんな思いせなアカンねん。

だいたい、きのう、
「二泊三日の出張や」言うて家出る時からおかしいなと思ててん。

出て行くとき、
自分では普通の顔しとったつもりやろけど、

なんや、イソイソしとるナ、
ちょっとオカシイな、とワカルねん。

私はあの人の嫁やで、
しかも年上やで、

何年一緒に暮らしてると思とるねン。

そこへ今日、会社から、
「きょうは安富君休みやから悪いネンけど、
急ぎの連絡やねん、ちょっと返事くれるだけでええから」と、電話が来たモンナ。

なんで出張先の支社に電話せんと、家にかかってくるネン。

うそが ちょんバレやん。

だいたい、
本気でウソつくねんやったら、携帯切っとくなよ。

ウチも前から思ててン、
あのオンナやろ、会社の元部下やとか云う。

あれやったら、
若いかも知らんけど、ウチのほうがよっぽど綺麗やん。

この「惠子サマ」の方が、ずっと「ええオンナ」やん。

あ~ぁ、
洋子に「風邪や」とでもメールして店休もかな。

夕べはきっと、どこかのラブホテルで、

あの生っ白い、
ぶよぶよで阿保でデカパイの、

アノ女と乳繰りおうてたんやろな、と思たらイライラする。

いっそホテルへ乗り込んで、
いやらしいことしてる二人にピストル突きつけて、

裸のままロープでくくって、
殴りたおして、蹴りたおして、

ほんでから、ほんでから、

ブルーシートにくるんで、
四つに畳んで背骨へし折って、

それから、
・・・淀川にでもほかしたらチョッとはスッとするかしらン。

あ~ぁ、今夜は寝られへんやろな。

洋子ゴメン、
ウチこんなんでは、店出ても客の相手できひんわ。


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☆万葉集・作者不詳

さし焼かむ 小屋の醜屋に かき棄てむ 
破れ薦を敷きて 打ち折らむ 

醜の醜手を さし交へて 寝らむ君故 

あかねさす 昼はしみらに 
ぬばたまの 夜はすがらに 
この床の ひしと鳴るまで 嘆きつるかも

★意

汚らわしいボロ屋の部屋ごと焼き捨ててやれ、

それとも、
その寝てる破れ布団ごと打ち折ってやろうか。

あんな女の汚らわしい腕の中で、
だらしなく寝ているあなた。

そう思うと、

まだ明るい昼は昼間で一日中、
暗い夜は夜通し、
この部屋で、

あの人も寝たこの部屋で、
私は、床も鳴るほど、のた打ち回るのか。



                 




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