二月の大阪・松竹座は、若手の人気役者をそろえて「花形歌舞伎」、
東京から来演の中村獅童が丸橋忠弥、
同じく市川染五郎が、研ぎ辰こと守山辰次を、
そして関西在住の片岡愛之助は、
大阪らしく、もとは人形浄瑠璃だった「義経千本桜」から、
「いがみの権太」を演じると云うぐあいに、なかなか魅力的な演し物が並ぶ。
「いがみ」は「歪み」、そこから心の歪んだ嫌われ者を云う。
関西では昔から、悪ガキのことを「ゴンタ」と云い、
あるいはワルサをすることを「ゴンタをする」と云うが、それはこの狂言からきている。
愛之助には「ラブリン」の愛称があるが、それは名前の「愛」の字から。
尚、大河ドラマでも有名な戦国武将「直江兼続」の兜の前立て、
「愛」の字は、love ではなく、
武神でもある愛宕権現や愛染明王の愛をいただいたものであろうと云われている。
「かなしい」は今では「悲しい」や「哀しい」ばかりで、
「愛しい」などとはめったに使われぬが、
いずれも、
いとしさから「胸に迫ってせつなくなる意」からの言葉で、
平安時代には、まだ男女の恋愛に、この字を当てはめることはなかったようだ。
尚、試みに「字解」で「愛」を引いてみた処、
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【愛】あい、 いつくしむ、 したしむ
後をかえり見て、
たたずむ「人の形」の、胸のあたりに、心臓の形である「心」を加えた形。
立ち去ろうとして後ろに心がひかれる人の姿であり、
その心情を「愛」といい、「いつくしむ」の意味となる。
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未練気に振り向いた美人の心がときめいている。
そう思えば、
なかなか色っぽくて、味わい深いものがありまするぞ、愛之助さんの名は。